劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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SCREEN112 あの夏の子供たち

 前半、親子の愛情あふれる触れ合いが微笑ましく、痛ましい 公式サイト

 2005年に自殺したフランスの映画プロデューサー、アンベール・バルザンをモデルに、
父親と娘たちとの交流、残された家族の立ち直る姿を描いた作品。
 映画の前半はプロデューサーの仕事に忙殺されながらも、
家族との時間を大切にしている父親グレゴワールを中心に展開します。
下の娘2人が「劇」として見せるニュースキャスターごっこを家族みんなで楽しんだり、
旅行先で訪れた教会の天井画を娘達にやさしく説明したり、
何気ない親子の触れ合いが愛情込めて描かれていて微笑ましく、
後半の展開を知っているだけにちょっと痛ましい気持ちになります。
 こういった描写があるから後半が生きてくるんですが。

 苦しい財政事情をなんとかやりくりして自転車操業していた映画プロダクションが、
金銭感覚に疎い映画監督が小切手を現金化してしまったことをきっかけに、
資金繰りが急速に悪化します。
スタッフとも険悪な雰囲気になったりし孤立していったグレゴワールは、
ついに自ら命を絶ちます。
 このあたり、ちょっと唐突で違和感を感じました。
自ら死を選ぶ人というのは、もっと前から「死」という選択肢のカードを胸の奥に隠し持っていて、いつ切ろうか逡巡しているような気がするからです。人には決して明かさずに。
もっとも、資金繰りが悪化するずっと前に冗談めかして
「資金難になったら自殺でもするか」というシーンはありましたけど。
 モデルになったアンベール・バルザン氏は普段は話し好きで社交的でしたが、
亡くなる5カ月ほど前から鬱を患っていたそうです。

 残された妻シルヴィアと3人の娘は嘆き悲しみますが、
プロダクションには何百万ユーロの負債と未完成の映画が残されていました。
悲しむ間もなくシルヴィアは借金を何とかして着手中の映画を完成させようと奔走します。
それがグレゴワールの遺志だと信じての行動です。
 気丈にもシルヴィアは残された遺族が一度は口にするであろう疑問を言いません。
それを率直に問うのが子供たちです。
「なぜ?」「どうして私達を残して?」

 お父さんは私達のこと思ってくれてなかったの?と言う幼い子に、
グレゴワールの友人はこう答えます。
「いつも君たちのことを考えていたよ。でも一瞬忘れてしまったんだ。」
ごまかさない率直な物言いは、彼女たちが事実をゆっくり受け入れていくしかないと思ってのことでしょうか。

 年長の長女は事情が分かるだけにもっと複雑で、
ふとしたことから父に隠し子がいた事を知りショックを受けます。
その事で父をなじる長女に対し、母は
「お父さんとの楽しかった日々を思い出して。父親の愛の深さを忘れないで。」
と毅然と言います。
 う~ん、確かにいい父親ではありましたが、
済んだ事とは言え浮気していた夫をそう擁護できるなんて、
父よりも母の愛の深さ、度量の大きさを感じてしまいます。
続けて母は
「死は人生の否定ではない。死は人生の数ある出来事のひとつ。」
とも言うのです。
 考えさせられる言葉ですが、この強さはどこから来るんでしょう。
気が強いと噂に聞くパリジェンヌの持つ強さなのか、
まだ20代の女性監督の理想像なのか。。。
                    (☆☆
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by am-bivalence | 2010-07-07 00:07 | 人間ドラマ | Comments(0)