SCREEN113 アイガー北壁
2010年 07月 27日
極限状況でのクライマーの執念と無念を見せるサスペンス佳作 公式サイト
アイガー北壁と言うと思い浮かぶ映画が、
クリント・イーストウッドが主演・監督した「アイガー・サンクション」。
その「アイガー・サンクション」でも描かれているように、
アイガー北壁というのはちょっと変わった山です。
ヨーロッパ・アルプスの最難所と言われながら、観光のアクセスもよいのです。
アイガー北壁内にはユングフラウ鉄道のトンネルが通っており、
中腹のアイガーヴァント駅からは、一般観光客でも北壁からの眺望を楽しめます。
また、山麓にはアイガー北壁全体を一望できるリゾートホテルがあって、
天気が良ければ、望遠鏡で北壁を登るクライマーを逐一観察できるのです。
「アイガー北壁」劇中のセリフにあったように、まさに”垂直の闘技場”。
そんな環境がまだ北壁が未登攀だった時代に既に整っていたのを
この映画で知って ちょっと驚きました。
「アイガー北壁」はヨーロッパ・アルプス最大の難ルート、
アイガー北壁の初登攀を目指す登山家達に起こった悲劇の実話を元にした物語です。
この事件はヨーロッパ・アルプスの登山者なら誰でも聞いたことのある有名な逸話だそうで、映画を観れば、確かにその劇的な物語が今だに語り継がれるだけあることが分かります。
「アイガー北壁」は山岳映画というジャンルにとどまらず、
登山を知らない人でも十分見ごたえのあるサスペンス映画の佳作にもなっています。
1936年、ナチス・ドイツが勢力を拡大していた時代。
ナチスはヨーロッパ・アルプス最後の難ルート、アイガー北壁を初登攀した者に
ベルリン五輪(レニ・リーフェンシュタールがオリンピック映画の名作と言われる
「民族の祭典」「美の祭典」を撮った大会)で金メダルを授与することを決定、
この年、多くの登山隊がアイガー北壁に集まります。
ドイツ人トニー・クルツとアンディ・ヒンターシュトイサー組もその一つでした。
彼らはドイツ代表のように注目されますが、
意外だったのは、彼らは誰の援助も受けていないことです。
彼らはハーケンを手作りし、少ない自己資金で登山するため、
交通費を節約して、アイガーまでの道のり600kmを自転車でやってきます。
なぜ、「実話の映画化」でなく「実話を元にした映画」なのかというと、
映画の骨子に大きなフィクションが加えられているから。
どこがフィクションかは後述するとして、
事件の概要には、史実として伝わっているものに忠実で、
出来る限り再現しているようです。
ただどうしても事件の細部に不明な部分があり、推測で構成されたものがあって、
映画の中心部分にフィクションを入れたのは、どうせ虚構が避けられないなら、
いっそ映画向きにフィクションを加えて面白くしようということでしょうか。
それにしても、死地に立ったクライマーの見せる生命力、
生還への執念は驚かされます。
同じく実話を映画化した「運命を分けたザイル」や、
沢木耕太郎のノンフィクション「凍」もそうでしたが、
もう体力、気力を使い果たしたと思われてもなお、
彼らが死力を尽くす姿は心揺すぶられました。(☆☆☆)
*史実とフィクションに関すること(ネタバレ注意!)
事件のあらましは、ほぼ伝わっている事実通りです。
登山家達の声を聞いてすぐ到着すると思った駅員がお茶を用意して待っていたとか、
トニーの辿る劇的な顛末は、実話です。
ただ、オーストラリア隊とドイツ隊がなぜ途中で合流し一緒に登り始めたのか、
なぜ登頂を中止して途中で引き返したのかは、分かっていないようです。
また、トニー以外のクライマーがどうなったのかも、
トニーと駅員の会話で大まかななことが伝わっているだけで、
詳細なところは不明なようです。
そしてこの映画で最も大きいフィクションの部分は、
劇中で語り部となっているトニー達の幼なじみのルイーゼが架空の人物であるということ。
それを知って私は少しほっとしました。
映画の中で彼女の体験することが、あまりにも残酷なものだったからです。
実際にはそんな体験をした女性がいなかったことが救いでした。
アイガー北壁と言うと思い浮かぶ映画が、
クリント・イーストウッドが主演・監督した「アイガー・サンクション」。
その「アイガー・サンクション」でも描かれているように、
アイガー北壁というのはちょっと変わった山です。
ヨーロッパ・アルプスの最難所と言われながら、観光のアクセスもよいのです。
アイガー北壁内にはユングフラウ鉄道のトンネルが通っており、
中腹のアイガーヴァント駅からは、一般観光客でも北壁からの眺望を楽しめます。
また、山麓にはアイガー北壁全体を一望できるリゾートホテルがあって、
天気が良ければ、望遠鏡で北壁を登るクライマーを逐一観察できるのです。
「アイガー北壁」劇中のセリフにあったように、まさに”垂直の闘技場”。
そんな環境がまだ北壁が未登攀だった時代に既に整っていたのを
この映画で知って ちょっと驚きました。
「アイガー北壁」はヨーロッパ・アルプス最大の難ルート、
アイガー北壁の初登攀を目指す登山家達に起こった悲劇の実話を元にした物語です。
この事件はヨーロッパ・アルプスの登山者なら誰でも聞いたことのある有名な逸話だそうで、映画を観れば、確かにその劇的な物語が今だに語り継がれるだけあることが分かります。
「アイガー北壁」は山岳映画というジャンルにとどまらず、
登山を知らない人でも十分見ごたえのあるサスペンス映画の佳作にもなっています。
1936年、ナチス・ドイツが勢力を拡大していた時代。
ナチスはヨーロッパ・アルプス最後の難ルート、アイガー北壁を初登攀した者に
ベルリン五輪(レニ・リーフェンシュタールがオリンピック映画の名作と言われる
「民族の祭典」「美の祭典」を撮った大会)で金メダルを授与することを決定、
この年、多くの登山隊がアイガー北壁に集まります。
ドイツ人トニー・クルツとアンディ・ヒンターシュトイサー組もその一つでした。
彼らはドイツ代表のように注目されますが、
意外だったのは、彼らは誰の援助も受けていないことです。
彼らはハーケンを手作りし、少ない自己資金で登山するため、
交通費を節約して、アイガーまでの道のり600kmを自転車でやってきます。
なぜ、「実話の映画化」でなく「実話を元にした映画」なのかというと、
映画の骨子に大きなフィクションが加えられているから。
どこがフィクションかは後述するとして、
事件の概要には、史実として伝わっているものに忠実で、
出来る限り再現しているようです。
ただどうしても事件の細部に不明な部分があり、推測で構成されたものがあって、
映画の中心部分にフィクションを入れたのは、どうせ虚構が避けられないなら、
いっそ映画向きにフィクションを加えて面白くしようということでしょうか。
それにしても、死地に立ったクライマーの見せる生命力、
生還への執念は驚かされます。
同じく実話を映画化した「運命を分けたザイル」や、
沢木耕太郎のノンフィクション「凍」もそうでしたが、
もう体力、気力を使い果たしたと思われてもなお、
彼らが死力を尽くす姿は心揺すぶられました。(☆☆☆)
*史実とフィクションに関すること(ネタバレ注意!)
事件のあらましは、ほぼ伝わっている事実通りです。
登山家達の声を聞いてすぐ到着すると思った駅員がお茶を用意して待っていたとか、
トニーの辿る劇的な顛末は、実話です。
ただ、オーストラリア隊とドイツ隊がなぜ途中で合流し一緒に登り始めたのか、
なぜ登頂を中止して途中で引き返したのかは、分かっていないようです。
また、トニー以外のクライマーがどうなったのかも、
トニーと駅員の会話で大まかななことが伝わっているだけで、
詳細なところは不明なようです。
そしてこの映画で最も大きいフィクションの部分は、
劇中で語り部となっているトニー達の幼なじみのルイーゼが架空の人物であるということ。
それを知って私は少しほっとしました。
映画の中で彼女の体験することが、あまりにも残酷なものだったからです。
実際にはそんな体験をした女性がいなかったことが救いでした。
by am-bivalence
| 2010-07-27 23:37
| 人間ドラマ
|
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