劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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SCREEN114 借りぐらしのアリエッティ

 我々は皆「借りぐらし」している?  公式サイト

 以前、仕事がやたら忙しかった頃、いくらこなしても尽きない仕事量に、
同僚が休憩室でこんなふうにぼやいていたことがありました。
「俺たちが帰った夜中にさ~、小人さんが現れてさ~、
代わりに仕事やってくれないかなあ~、
朝来たら仕事が片付いてた。。。な~んて、ないかなあ。」
 妄想です。

 「借りぐらしのアリエッティ」では、小人が人間を手伝ってくれることはありません(笑)。
というより彼らは人間との接触を完全に避け、
見つからないことを掟にして暮らしています。
床下に隠れ住むアリエッティの暮らしは、
屋根裏に隠れて暮らしたアンネ・フランクをちょっと連想させます。
アンネと違って恐怖と不安が付きまとうわけではないんですが。。。
むしろアリエッティは隠れながらの「借りぐらし」のスリルを楽しむような子です。

 人間の持ち物から生活に必要なものを調達していくアリエッティ達の行動を
「借りぐらし」と呼ぶのに、ちょっと違和感を感じるかもしれません。
ただの泥棒じゃないかと思う人もいるでしょう。
でもそんな批判は、脚本の宮崎駿も百も承知、
だからお手伝いのハルさんに"泥棒小人"と言わせているのですよ。

 そもそも、プリミティブな人間(生き物)の暮らしというのは、
周囲の環境(自然)から生活の糧を“拝借”してくるものでしょう。
だから「借りぐらし」は「狩りぐらし」と同義。
 狩猟生活をしている民族は所有という概念があまりなく、
暮らしの糧を与えてくれる自然に謙虚に感謝していました。
農耕を始めたことで土地を"所有"し、他生物を締め出して、
備蓄可能な食糧を手に入れたことから自分の周りに財産を築き、
万物の霊長と慢心してきたのが人間。
 でもね、およそ全ての生物は、この世界では「借りもの」でしかなく、
「自分の物」なんてないんです。
だって自分自身だと思っている肉体でさえ、死んでしまえば分解され、
土に帰り、他の物の一部に"リサイクル"されていくじゃないですか。
そういう意味では、私達は皆「借りぐらし」しているんです。

 翔に「君たちは滅びゆく種族」と言われたアリエッティが
生き生きと生命力に溢れているのに対し、
67億人いる人間代表の翔は胸を患っていて覇気がないという皮肉。
 いや、これはアイロニーではないのかもしれません。
人口減少が始まり活力を失ってきている日本と、
生き抜くスキルを持っているアリエッティ達と、
滅びゆくのはどちらなのでしょうか。

 映画にかこつけて、ちょっと厭世的に聞こえる話になってしまいました。
素直に観ればアリエッティから元気がもらえる映画です。
お父さんが頼りがいがあるのもジブリ映画としては異色?
(ポッドのように周りの物から何でも作りだす才能を持つお父さんは
めったにいないんじゃないでしょうか。)
後継者難に悩むスタジオ・ジブリ、初監督とはいえ米林監督、
風に揺れる蔦や花々など丁寧に動かして、肌理細かな演出をしてます。
でもなんか地味か(笑)。。。
                   (☆☆☆)
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by am-bivalence | 2010-09-03 23:50 | ファンタジー | Comments(0)