劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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SCREEN128 おおかみこどもの雨と雪

 キャラクターの成長とともに主題が変化していく映画には、さらに裏テーマが?  公式サイト

 この夏は映画の大作、話題作が豊富な年でした。
続編、リメイク的なものが多いのも特徴。

 傑作と言われる前作のプレッシャーをものともせず、
3部作を手堅く締めくくった「ダークナイト・ライジング」、

 「エイリアン」の皮を被った"ムー"だった「プロメテウス」、

 オリジナルだけでなく「ブレードランナー」、「フィフス・エレメント」といった
SF映画の雰囲気を盛り込んだ正統派SFアクション「トータル・リコール」、

 公開館が少ないので名作のリメイクで話題を狙っただけのキワモノかと思っていたら、
意外によく出来ていた「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」、

"これが映画だ"と大見得を切ってるけど。。。の「アベンジャーズ」など、など。

 さてこの夏の話題作で気になったのが、
「時をかける少女」で一躍有名になった細田守監督最新作、
「おおかみこどもの雨と雪」。
ちょっと変わった映画でした。
なにしろ映画の進行とともに主題(テーマ)が変わっていくんです。

 冒頭は花と彼(おおかみおとこ)のラブストーリーと家庭の形成物語。
中盤はシングル・マザーとなってしまった花の子育て奮闘記。
終盤は二人の子供、雨と雪のアイデンティティーの確立と自立の物語。
 3つの主題が一本の映画となっているのは、お得といえばお得(笑)ですが、
観終わると、母親の物語だったのか、子供たちの物語だったのか、
印象が散漫になってしまうのが難点です。

 もうひとつ引っかかったのが、なぜ「おおかみこども」なのかということ。
細田守監督、子育てする女性のかっこ良さを描きたかったと語っていますが、
それだけなら「おおかみこども」である必然性は無いはずです。
 では、田舎暮らしを描くうちに「もののけ姫」のように自然対人間のテーマも盛り込むため、
自然の象徴として「おおかみこども」にしたのでしょうか。
でもここで描かれる「おおかみこども」は自然側の象徴としては少し違和感があります。
「おおかみこども」は人間に比べれば野性的かもしれませんが、
彼ら自身、野生動物からも畏れられる(疎まれる)存在ですし、
野生生活に入るにはそれなりの"訓練"が必要でした。
 また、「おおかみこども」はティム・バートンが好んで描くような
異形(変人、おたく)の象徴という意見もあります。
でもそれは個性であって"血統"とはちょっと違う気がします。

 では「おおかみこども」とは何なのか。
誤解を恐れずに深読みすれば、「おおかみこども」、「おおかみおとこ」は
混血や在住外国人の暗喩として、裏テーマ的に設定されたのではないのでしょうか。
ちょうど「千と千尋の神隠し」が"風俗で子供を働かせる親"という裏設定があったように。
 そう考えると終盤子供たちが"人間社会"の中で自分たちの属性に悩み、
それぞれ別の道を歩み始めるのが、すんなり受け入れられるのです。
社会の偏見に悩まされながら子育てする混血児のシングルマザーと、
成長するに従い、自身のアイデンティティーに揺らぐ在住外国人の子供達、
そんな比喩に思えてきます。
 おおかみこども達の父である彼(おおかみおとこ)の名前が出てこないのも意味深です。
名前は国籍を端的に表しますから。。。と、これも深読みしすぎでしょうか。
                            (☆☆☆)
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by am-bivalence | 2012-08-31 00:58 | アニメ | Comments(0)