劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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intermisson18 大切なことは表に現れない ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」

 年末、HDDビデオの空きを増やすため録画したまま放っていた「ゴーイング マイ ホーム」を観てから消そうとしたら、ハマってしまいました。

 「ゴーイング マイ ホーム」は2012年10月から放送されたTVドラマ。
詳細はウキペディア番組HPに譲るとして、簡単にあらすじを説明しますと、

 坪井 良多(阿部寛)はCMディレクターとして日々顧客の御機嫌を取りながら忙しく過ごすサラリーマン。 妻沙江(山口智子)は有名な人気フードスタイリストで、小学生の一人娘萌江(蒔田彩珠)がいる。
 ある日萌江がうちには小人のフロドがいると作文に書き、沙江が学校に呼び出しを受ける。 一方、良多は東京で暮らしているはずの父栄輔(夏八木勲)が長野で意識不明となったと知らせを受け、長野の病院に駆けつける。病院で良多は父を見舞う下島 菜穂(宮﨑あおい)に出会い、父は故郷の長野で"クーナ"という伝説の小人を探していたことを知る。 森に住むクーナは死者と生者を繋ぐ能力があるという。 最初は笑っていた良多も森でクーナの帽子を見つけ、萌江とともに菜穂のクーナ探しに惹かれていく。。。

 このドラマは「誰も知らない」「歩いても歩いても」の是枝裕和監督が初めてTVドラマを手掛けたこと、
長い間引退同然だった山口智子さんが連ドラに復帰したことで話題になりましたが、
視聴率的には振るいませんでした。
 私も是枝監督ということで放送時1,2話観たのですが、TVドラマとしてはテンポがゆっくりで、何が本筋かよく分からない展開に観なくなり放ったらかしになっていました。 視聴率が悪かったのも、その辺りに原因があったようです。
いつまで経ってもドラマチックなことが起こらないのんびりした雰囲気、
重要な事をあえて強調せず視聴者に集中力を要する構成が、
2時間の映画ならともかく週1回放送される連続ドラマでは視聴者の関心を繋ぎとめられなかったのでしょう。
 でも全編を通して観ると、その点こそがこのドラマの面白いところでした。

 このドラマでキーとなるテーマは登場人物たちが何度も口にする
「この世界は目に見える物だけできているわけではない」
ということ。
 その言葉のようにドラマでは疑問が出てきても最初から真実は提示されず、観ているうちに次第に事実関係が分かってきます。
 なぜ萌江は学校でいろいろ問題を起こすのか、
 なぜ栄輔や萌江はクーナを探すのか、
 菜穂、治(西田敏行)親子はなぜ不仲なのか、
 幼なじみの栄輔、久実、治の間に昔何があったのか、、、
随所に伏線があって、何話か後にそれが分かったりします。
しかし全てが最後に明らかになるわけでもありません。
大切なものは表に現れず、真実は隠れてしまうもの、なんです。

 目に見えない大切なものというと"愛"とか"夢"とか"希望"を連想しますが、
劇中のある登場人物が目に見えないものとして"悪意"とか"失望"とかを上げて、はっとさせられます。
確かに世界は”敵意"とか"憎悪"とか目に見えない悲しいものにも動かされている。。。

 映画にはない連続ドラマの強みを活かし、登場人物それぞれのキャラクターが細かく描写され日常生活を丹念に追っているのも面白いところ。
 またドラマの根底に家族の繋がりがあるのが、以降の是枝監督作品「そして父になる」「海街diary」にも通じています。(「そして父になる」の撮影はこのドラマの前だったとか。 番組HPの第7話あらすじには家族について触れている部分があるのですが、本放送には出てきません。 おそらく何らかの理由でカットされたようです。 「そして父になる」にも出演している夏八木勲さんはゴーイング~撮影中にも体調がすぐれず、連ドラとしてはこれが遺作となりました。)
 一点残念なのは萌江が「ホビットの冒険」を読んで小人をフロドと呼ぶようになってますが、ホビットの冒険に出てくるのはビルボ。 是枝監督、「ホビットの冒険」読んでないな(笑)。

 ともあれ、ゴンチチの音楽をバックに、良多と家族が交わすゆるい会話にクスクス笑うのも良し、
ドラマの裏にある世界に想像を巡らすも良し、
沙江の作る美味しそうな料理を楽しむも良し、
「ゴーイング マイ ホーム」は幾重にも楽しめる良質なドラマ、もう少し評価されてもいい悲運のドラマなのでした。
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by am-bivalence | 2016-01-10 00:05 | 人間ドラマ | Comments(0)