劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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screen7 ヨコハマメリー

 戦後日本の混沌の中で、
   泥まみれでも凛と生きた女性の伝説  
  公式ホームページ

 私は社会人になるまで横浜市民でした。
学生の頃までは時々関内で映画を観て、
伊勢佐木町の有隣堂に立ち寄ったものでした。
その頃メリーさんはいた筈ですが、
一度も見たことはありません。
見たとしても正直、あの化粧では引いてしまい、
近づくことはなかったでしょう。
この監督は学生の頃メリーさんを見たそうですが、
その容貌に畏怖を感じたそうです。
 でも、人は外見や評判で判断すると、見誤ることがあります。

 この映画は'95年にメリーさんが姿を消した後、
都市伝説のようなその人物像を関係者の証言で追っていきます。
そこには戦後日本の裏社会の息吹がありました。

 貴婦人のような装束で街角に立つ娼婦は、
プライドが高く、将校しか相手にしない。。。
フィクションなら陳腐ですが、
そんな人物が真偽はどうあれ実在したということが、
ドキュメンタリーならではの説得力をもたせます。

 メリーさんが人を惹きつけるのは
その奇天烈な外見だけでなく、
その境遇にもかかわらず、卑しさを感じさせずに、
凛としていたからではないでしょうか。
 住所不定で、年老いてもなお
毅然と女独り暮らしていくのは
並大抵の困難さではないはずです。
彼女に社会福祉を受けさせたくても住所不定のために
出来なかったことを、友人だった元次郎氏が語っています。

 映画の中で彼女の手紙が2通紹介されていますが、
いずれも品があり、教養を垣間見させる文面でした。
80歳を過ぎても手紙の中で夢を語っていることに
はっとさせられました。
 白塗りの化粧は素顔を隠すことで
過去を切り離すめの仮面だったように思われてなりません。

(以下ネタバレ)
 最後にメリーさんは、故郷で元気な姿を見せます。
結局、彼女の素性は伏せられたままでした。
都市伝説は都市伝説のままがいいということでしょうか。
ただ、故郷の彼女は白塗りの化粧を取って、
素顔を見せていました。
 その表情が生き生きと幸せそうで、
ほっと暖かい気持ちにさせてくれました。
                    (☆☆)


 参照文献:東京ホームレス事情 森川 直樹 徳間文庫(絶版)
   ホームレス生活を都会のアウトドア生活のように気楽に言う人がいますが、
  現実はそんなものではなく、そこから抜け出すのは大きな困難があるようです。
  餌とりと呼ぶ残飯あさり、その時に感じる人間としての尊厳の喪失感、
  社会からの疎外感。
  当たり前ですが、自分がそうなったら感じるであろう苦痛を、彼らも感じているのです。
   地縁・血縁のコネ社会である日本は、一度接点を失った人間に冷たいのです。
 
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by am-bivalence | 2007-01-28 23:45 | ドキュメンタリー | Comments(0)