劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

screen26 アモーレス・ペロス

 「バベル」「21グラム」の原点であり、原型

 私の生活圏内のシネコン、CINEMACITYでは、
定期的に過去の作品のアンコール上映を企画します。
 今回、気鋭のメキシコ監督選として、イニャリトゥ監督の
「アモーレス・ペロス」が上映されたので、これを逃さず観に行きました。
(私としてはアルフォンソ・キュアロン監督の
「天国の口、終りの楽園。」を観たかったのですが。。。)
                         (映画館サイト参照)
 アンコール上映なので公式サイトがありません。
概要を書いておきます。

「アモーレス・ペロス」(2000年・メキシコ・153分)
 監督、制作:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
 脚本:ギレルモ・アリアガ

ストーリー:
 映画は白昼、街中を車が猛スピードで逃走していくシーンで始まります。
車には若者二人が乗っていて、後部シートには血だらけの黒犬が横たわっています。
追いかけてくるトラックを振り切ろうとして、車は赤信号を無視し、
事故を起こします。

 映画はこの事故に関わった男女3組のオムニバス形式となっています。
1話目は事故を起こした無職の若者の物語。
暴力的な兄のDVに悩む兄嫁に思いを寄せる彼は、
闘犬で稼いだ賞金で一緒に街を出て行こうと働きかけます。
遂に兄嫁と関係を持って、計画はうまく行くように見えましたが。。。
 2話目は不倫相手との生活を手に入れ、仕事も好調だったモデルが、
事故に巻き込まれて大怪我を負い、凋落していく顛末。
 3話目は事故現場にい合わせた浮浪者風の初老の男。
瀕死の黒犬を拾っていくことが、彼の人生を変えるきっかけを作ります。
この男は昔、大学教授から革命家を志しましたが挫折し、
今は浮浪者のような生活をしながら、影で殺し屋もやるという、ちょっと突飛な人物。
(依頼されたターゲットを尾行する顔つきがいかにも殺し屋風で、笑ってしまいます。)
革命のために捨てた妻娘が忘れられず、娘への愛を募らせていきます。


 「アモーレス・ぺロス」とはスペイン語で「犬のような愛」という意味だそうです。
各話とも犬が重要な要素、象徴として出てきます。
 映画は3組の愛の物語なんですが、不倫だったり、一方的想いだったり、
どれも報われない利己的、衝動的なもので、必然的に悲劇的結末になります。
(「ぺロス」は俗語で「最低な」という意味もあるらしい)*後注

 前半の若者のエピソードは、切れやすく刹那的で傲慢な
チンピラ風若者達に全く共感できず、
正直、観て失敗かと思っていましたが、後半は引き込まれました。

 処女作にはその作家のすべてがあると言われますが、
イニャリトゥ監督のこの映画はまさにそんな典型的例のように見えます。
貧富も含め様々な階層の人物を描くオムニバス形式、
時間軸を縦横に動かす語り口、混沌とした中の荒々しさ、
人を突き動かす情念を描き、切ない後味を残すスタイルは、
イニャリトゥ監督のその後の2作に共通するものです。

 特に本作では各エピソードで、別のエピソードの登場人物が
一瞬現れるような演出がされており、
このエピソードは、あのエピソードではこの時の話だったのかと
解る構造になっています。
 それが、年齢も生きる社会も異なる様々な人物が
実は同じ時間、空間を生きて、共有していることを感じさせるのです。
 本作は脚本を36回も書き直したというのも、うなずけます。

 イニャリトゥ監督は「バベル」でもこんなことがやりたかったのかと、
ちょっと納得しました。
                                  (☆☆


参照映画:「灰とダイヤモンド」 アンジェイ・ワイダ監督 1959年 ポーランド
 時間と空間の共有を感じさせる演出と言えば、
この古典的映画を思い出します。(古すぎ?)
 政情不安定な終戦直後のポーランドで、
テロリストの若者が政府要人を暗殺するという物語(だったと思います)。

 若者が要人を街角で射殺したとき、要人が若者に倒れかかります。
思わず抱きとめた若者の背後で、祭りの花火が上がるのです。
その花火を、様々な人が、いろいろな場所で、
それぞれの想いを胸に見つめているという有名なシーンです。

 確か、大林宣彦監督の「転校生」(1982)でも、
会うのを禁じられた主人公達が、
同じ花火を別々の場所で見上げている、情感あるシーンがありました。

*注)気になったのでちゃんと調べてみました。確かにそういう意味がありますが、
  辞書によって、かなり表現がまちまちです。俗語、口語表現だからでしょう。
   ~de perros:形)最低な、最悪な、悲惨な、みじめな、不幸な
[PR]
Commented by mellowww at 2007-05-13 03:16
TSUTAYAで借りようと思います。
amさんの文章を読んでいたら、「これは借りるべき!」と私は解釈しました(勝手に)
きっとわたしこの映画スキになると思います。
久々に全く知らない映画を、強烈に観たいと思いました!

最近、映画をゆっくり観てないので、
観る映画ばかりが溜まっています。。。

今も「解夏」(観たかった)をしてますが、録画してます。
「セント・オブ・ウーマン」も録画してます。
あれもこれも、観たい時期って重なるもんですね・・・。しょぼぼん。
Commented by am-bivalence at 2007-05-13 22:24
 私も長期連休後などは、録画していたビデオを観るのに
1ヶ月以上かかったりします。
家にいると、やることがいろいろあって、
なかなか集中して観れませんよね。
 だから気になった映画は、劇場で観るようになったんですが。。。
これも、観たい映画が続くと大変です。

 イニャリトゥ監督の長編3作では「アモーレス・ペロス」が
一番面白い(一番解りやすい?)と思いました。
 ただ、「愛」をテーマにしてますが、ロマンチックなラブストーリーを
イメージすると、がっかりすると思います。
暴力シーンも結構ありますし。
第3話などは、「オペラ座の怪人」の怪人をストーカーにしか見えない様であれば、やはりストーカーのように思えてしまうでしょう。
イニャリトゥ監督に興味おありでしたら、「アモーレス・ペロス」は
お勧めで、観ておくべきと思いますよ。
Commented by mellowww at 2007-05-14 00:10
わたしも映画館に行くようにしてるんですけどね・・・。
おうちだと、なかなか集中して観れない・・・(涙)

「オペラ座の怪人」は好きな作品の一つです。
怪人をストーカーとは思わないですねー
中盤辺りから完全に怪人側の心になってましたからね。。。
あ、わたしがストーカー気質なのか???!!!

なので、これはやっぱり観ます!
Commented by am-bivalence at 2007-05-14 22:26
 mellowwwさんは怪人に共感できましたか。えらいです。
私は、叶わない想いを求め続ける怪人に同情、共感しながらも、
「これって冷静に観れば、
相手から、ストーカー扱いされても仕方ないよなぁ。。。」
と思ってしまいました。
 私も、潜在的ストーカーってところですか?
Commented by mellowww at 2007-05-17 00:54
観ました!
わたしのはまっているガエルが出ててびっくりしました(笑)
闘犬、まじでこわかったです。初めての世界でした。

好きだからって訳ないけど、ガエルの役は共感できましたよ!
あの兄嫁さんも中途半端な対応ですよね(苦笑)
ありゃ追っかけたくなりますよ、まったく。

床の下を覗くシーンは、何回もハラハラしました。怖がりなので。

ジワジワ後から、いろんなこと考えさせられる映画でした。
「21g」より、こっちの方がわかりやすい動きで観やすかったです。
英語じゃないので、若干感情がわかりにくいかな。。。

いつもステキな映画の紹介ありがとうございます☆
Commented by am-bivalence at 2007-05-17 21:49
 えっ、はやい!ずいぶん早く観たんですね。

ガエル・G・ベルナルのファンでしたか。
ではこの映画「必見」でしたね。確かに彼、イケメンだし、
役者としてもいいです。
「バベル」にも出ていますよね。

 床の下の犬の話は、そう言われれば、
ちょっとホラーっぽい演出でした。

 「愛」って言うと暖かいものを連想しますが、
周りを不幸にしてしまうものを見せられると考えさせられます。
Commented by mellowww at 2007-05-17 22:10
「善は急げ」です。
ガエルは「dot the i」でスキになりました。
単純にかっこいいです(笑)

「バベル」に出ていたのは知ってたんですが、
これに出てるってのがわかって、なるほどな、と思いました。

またしょうもない感想をブログにのっけてるので見てくださいねー

※最近残業が少なくなったので、映画を観る時間が増えました(^^)
Commented by am-bivalence at 2007-05-17 22:19
あれ、mellowwwさんブログにコメント入れてたら、
また、コメント貰っちゃいました。
こうなると、もうチャット感覚。(笑)
Commented by mellowww at 2007-05-17 22:29
また戻ってきましたよ(笑)
あ、「セント・オブ・ウーマン」も観ました。昨日のブログかな?書いてみました。
アル・パチーノの映画初めて観ましたよ。
結構かっこいいですね。
観る映画が広がった気がします☆
Commented by am-bivalence at 2007-05-17 23:20
「セント・オブ・ウーマン」って、またしても観てないんですよ(笑)。
ラブストーリーものはフォローし切れません。(^^;
「dot the i」も、さっき教えられるまで知りませんでした。

 でもアル・パチーノは、なんか懐かしいですね。
「ゴットファーザー」とか、「スカーフェース」とか、
「狼達の午後」とか思い出しちゃいます。
(年代が判る。。。)
 「ゴットファーザー」などはマフュア稼業を嫌いながら、
結局、組織を継いでいく複雑な役柄で、とても印象的でした。
Commented by mellowww at 2007-05-19 00:29
「セント・オブ・ウーマン」はラブストーリーじゃないですよー(^^)
恋愛全く絡みません(笑)

「dot the i」は最後びっくりなので、是非観て欲しいです!
「ゴッドファーザー」観たことないのでちょっと挑戦しよっかな。
音楽はめっちゃ有名ですもんね!
Commented by am-bivalence at 2007-05-21 22:10
ほんとだ、よく調べたら「セント・オブ・ウーマン」って、
恋愛物じゃないですね。
”ウーマン”ってつくから、女性が絡むと思い込んでました。(^^;
失礼しました。
 恋愛物どころか、傷ついたもの同士が立ち直る
ハートウォーミングムービーじゃないですか。
観てみたくなりました。

 ギャング、チンピラ映画は好きじゃないんですが、
(だから「アモーレス・ペロス」の前半は楽しめなかった)
「ゴッドファーザー」は別格です。
 マフィアというと、非情で特殊な世界に見えますが、
普通に家族への愛や、おもいやりがあり、
アメリカ社会の矛盾まで描いています。
 無闇に人殺しするわけではなく、殺しの一つ一つが
登場人物達のその後に影響するのがリアルでした。
 名作ですよ。
by am-bivalence | 2007-05-12 00:23 | 人間ドラマ | Comments(12)