劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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screen33 河童のクゥと夏休み

 人間に対する冷徹な目が子供向けを越えているが。。。  公式サイト

 隠れた傑作と評判の高い、
「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」
の原恵一監督が5年かけて製作したこの映画、
やはり評判が良さそうので、子供だらけで保育園状態の映画館で観てみました。

 この映画、ジブリ作品のように映像が美しいとか、
「アキラ」や「メモリーズ」のように、リアルに動く絵で
高いアニメーション技術を見せるとか、いう訳ではありません。
 プロットも子供が異生物と出会って交流するという構図は
「E.T.」以来、いくらでもあります。
20年以上前の「遠い海から来たCOO」などは、
なぜか主役の名前も同じです。
 それでもこの映画が他と違っている点を挙げるなら、
人間の現実を包み隠さない、ペシミスティックなまでの描写でしょう。

 物語中、子供の間では、いじめや仲間外れのような嫌がらせが
日常茶飯事のように行われています。
主人公 康一も、最初はいじめの仲間に加わっていたりします。
 一方でいじめをただ描くだけでなく、いじめられっ子にも
暗い雰囲気とか、いじめられても反撃しないとか
いじめられ易い理由までも描写したりしています。

 人間の嫌な面は子供社会だけではありません。
クゥは康一の家で隠れて生活していますが、マスコミに嗅ぎつけられ報道されると、
多くの人間が本人や周囲の迷惑を考えずに
クゥちゃんと呼びながら追い掛け回します。
 それはまるで多摩川のタマちゃん以降、
数々の○○ちゃんを追い掛け回す人々を見るようです。
 そんな身勝手な人間を描く一方、
上原一家がクゥを守ろうとするのも、友情を交わすのも
また、人間の一面であるのが救いです。
(ただ、いざという時に最も頼りになったのは犬の"オッサン"だけでしたが。)

 クゥは名前を聞かれても、人間に名前を教えようとしないことから、
クゥのモデルとして、"最後の純粋なアメリカ先住民"イシも取り入れているようです。
自然の中で育ったクゥが、仲間が全ていなくなり、異文化の中で暮らすのは
イシと共通な点が多くあるからでしょう。
イシも礼儀正しく、紳士的な人柄だったようです。
 クゥははっきり「ウソをつくのは人間だけだ」と当然のように言います。
クゥの「河童はウソはつかねぇ」というセリフは、
昔良く知られた、アメリカ先住民のセリフと重なります。

 シリアスな面ばかり取り上げてしまいましたが、
康一とクゥの過ごす夏休みは、楽しく、いい思い出となるもので、
夏休みに子供達が観るにはふさわしいアニメでしょう。
 ただ最後、クゥが行きたがっているからといって、
誰ともわからない相手にクゥを宅配便で送ってしまうのは
上原一家、ちょっと無神経すぎないでしょうか。

 冒頭から、クゥのお父さんが殺されるような残酷な場面や、
いじめを包み隠さず描写するなど、
子供向けアニメの枠を超えていてるようですが、
やっぱり対象は子供達であって、
大人ものめり込んで楽しめるかというと、ちょっと辛い気がします。
                               (☆☆)


参考文献:「イシ-北米最後の野生インディアン」
           シオドーラ・クローバー著 岩波現代文庫
   白人社会と接触を避けて暮らしていたアメリカ先住民
  ヤヒ族最後の生き残り、イシの実話。
  ヤヒ族は本当に親しい者にしか実名を明かさない風習があり、
  彼の呼び名、イシは名前でなく人間という意味だそうです。
   一族最後の一人となったイシが白人社会に現れて、
  亡くなるまでの数年間の記録ですが、
  前半のアメリカ西部での先住民迫害(というより虐殺)の歴史が凄まじく、
  その様はまさに人間狩りです。
   頭皮を剥いでいたのは先住民ではなく、白人であったことが判ります。
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Commented by mellowww at 2007-08-18 01:01
残酷な場面やいじめとか、意外ですね。。。
「クレヨンしんちゃん…」は、一応今レンタル業界に勤めているので、
ウワサは聞いていますし、リアルにあれ良かったよーって言うのも、
聞きます。でも見たことないっす。。。

この映画は申し訳ないですが、全く観る予定はありません。。。
けど、話題になっているのは確かなので、
内容がわかってうれしかったです。

アニメはもはや子供たちの為ではなく、大人たちの共感を得るのが当たり前という感じがしてきました。
「ドラえもん」や「ポケモン」、「クレヨンしんちゃん」など、
子供たちの為に作った映画が実は感動しまっせって方が、
心地良いですよね。
Commented by am-bivalence at 2007-08-18 16:26
残酷な場面といっても、「バイオハザード」のような
世の中に出回っているTVゲームの描写などに比べれば、
かわいいものです。
 ただそんなものでも、私の甥っ子などは小さい頃、
怖がっていましたので、幼い子供に見せるのは
ちょっと刺激が強いかなと思ったのです。
(映画館に来ている子は保育園~小学校低学年位が多かったので)

 いじめの描写などは小学生だったらありそうなもので、
その位の年齢の子が観て考えるにはいい、
良く出来た映画だと思います。
 親子で観に行って、両方とも満足できる映画というのは
なかなか無いですね。
by am-bivalence | 2007-08-16 21:30 | アニメ | Comments(2)