劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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screen41 パンズ・ラビリンス

 悲劇か、ハッピーエンドか、
   ファンタジーを信じられるかで解釈が全く違う
  公式サイト

 スペイン内戦と聞くと、私はある種の感慨を持ってしまいます。
高校の頃、ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」や、
写真家ロバート・キャパの「ちょっとピンボケ」を読んで興味を持ち、
スペイン内戦とは何だったのか、歴史を調べてみたことがあったからです。

 スペインは昔から政情が不安定で、内戦を繰り返しているんですが、
フランコ反乱による内戦は、いわばファシズムと反ファシズムの
第二次大戦前哨戦でした。
世界中から集まった義勇兵の善戦も空しく、
内戦はファシズムの勝利で終わります。
 それは、世界には不条理なことがたくさんあって、
正しい者が必ずしも報われるわけではないことを示した、一つの例でした。

 第二次大戦中のスペインという、
死が身近にありふれていた時代を背景にしたこの映画ほど、
現実と空想の世界の関連を描いたものは、珍しいのではないのでしょうか。
現実からの逃避と見られがちなファンタジーの側面を、
直接的に問いかけているのです。

(以下、ネタバレアリ)

 過酷な現実の中で、夢の世界へ入り込むオフェイリア。
嘘と苦痛の無い魔法の国に行くというのは、
本当に現実逃避として生み出されたものだったんでしょうか。
 着たくないドレスを汚したり、食事を抜かれた後に
迷宮内で御馳走に出会うのは、現実の意趣返しのように見えますが、
迷宮での体験は決して現実より心地良いものではありません。
最後の試練でも、オフェイリアが本当に逃げ出したいと思っていたなら、
弟を犠牲にしたのではないでしょうか。

 またオフェイリアは、マンドラゴラの根で母親を助けようとします。
それは成功したように見えましたが、
空想を受け入れるゆとりのない母親達によって
彼女の願いは砕かれてしまいます。
オフェイリアのファンタジーは現実を救いたかったとも思えるのです。
無力な幼い少女にとって、現実を変えるには
空想しかなかったのではないでしょうか。

 ラスト、オフェイリアの死は、他人には悲劇にしか見えませんが、
オフェイリア自身は幸福感に包まれて死んでいくのが救いでした。
それこそがファンタジーの力なんでしょうか。
 彼女の死を悲劇と見るか、ハッピーエンドと見るかは、
彼女の見た魔法世界の存在を信じるかどうかで分かれると思います。

 フランコのファシスト政権は、ドイツ、イタリア、日本が敗れ
大戦が終了した後も30年以上続きます。
映画では市民兵側が一旦勝利したように描かれていますが、
実際の彼らの運命は、その後も過酷だったはずです。
                          (☆☆☆)
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Commented by mellowww at 2007-10-16 00:56
観ましたか!!!!
ほんとにamさんの感想は、ゾクゾクしますね。
知識があるからこそ、深い感想になるんでしょうね~(しみじみ)

わたしは、ハッピーエンドとは思っていませんが、
彼女の中ではきっとハッピーで終わっているから、
きっと良かったんだろうな、と感じました。

わたしの中では最後まで彼女に厳しい現実だったと思います。
現実逃避の場をファンタジーにしたというのは、
スバラシイ設定だと思います。

途中寝ていたのもありますし、ちゃんと劇場で観たいと思っています。
Commented by am-bivalence at 2007-10-16 21:18
観ましたよ!!!!!なかなか良かったですよ。
これ、明るい話じゃないですが、世間でも評判良いようですね。

私の知識は結構偏っているもので。。。恐れ入ります。
あっ、私も褒められて伸びるタイプなので、じゃんじゃんお願いします。(笑)
異論、反論も大歓迎です。映画の観方が広がります。

 私も観終わった時は悲しい想いが強い反面、
ハッピーエンドの映画を観たような感覚もあって、
何でだろうと、ずっと考えてました。
 結局、彼女の見たファンタジーも 事実だったと受け入れられれば、
ハッピーエンドと言えるんじゃないかと思ったんです。
映画もどちらとも取れる造りになっていたように思います。
最後に花が咲いているカットを入れているところなど、
そんな意図を感じます。

 もう一度観直してみたい映画ですね。
by am-bivalence | 2007-10-14 13:58 | ファンタジー | Comments(2)