劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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screen92 歩いても歩いても

いかにもありそうな家族の形に、自身を投影してしまう小品  公式サイト

 「人生は、いつもちょっとだけ間にあわない」
まずこのコピーに、グッときました(笑)。

 兄の命日に集まった家族の2日間を淡々と描いたこの映画、
ドラマチックな展開があるわけでもなく、ごく日常的風景を追っているんですが、
会話の面白さもあって、2時間飽きさせませんでした。
 派手なアクションがあっても途中で眠くなるような映画があるなか、
これはちょっとすごいことかも知れません。

 出演者が樹木希林、原田芳雄、阿部寛、YOUと、個性の強い役者ぞろいで、
劇中の人物を見るというより、
演じている樹木希林、YOUを見ているように思えてしまうんですが、
とてもありがちな家族関係には、つい自分の家族を重ね合わせて観てしまいます。

 誰もが胸に何かしら隠しているのですが、
たまに本音を吐露しても、誰も聞いていなかったり、
途中で遮られたりして中途半端に終わってしまう可笑しさ、哀しさ。
このすれ違いが妙にリアリティーを感じさせます。

 この家族に影を落としているのが、事故で亡くなった兄。
できの良かった兄といつも比較されて鬱屈した弟、
そのせいもあって反発し合う父子。
普段は闊達で普通に振舞っている母も、
実は心の奥底で息子を亡くした喪失感を一番重く抱えていることが
次第に明らかになってきます。
残酷なことを笑みを浮かべながら冷静に語る母親がちょっと恐ろしく、
心の闇の深さを感じさせます。
 既にないもの、過ぎ去ったものに縛られているのは、
人間、案外多いんじゃないでしょうか。
それを"家族の歴史"、"人の歴史"というのでしょうけど。

 過去の延長上に生きているのは、この親子だけではありません。
弟の結婚した相手は子持ちの再婚者で、亡くなった前夫との息子の間には
前夫を含めた関係がまだ息づいているのです。
この関係の中にいずれ現夫である弟が溶け込んでくるであろうことが語られます。
 そうか、家族って"あるもの"じゃなくて、
"築いていくもの"だったんだと、改めて気付かされました。

わっと感動したり、ジーンと胸が熱くなって涙するような映画ではないんですが、
後からじわじわと効いてくる、ボディブローのような映画でした。
                            (☆☆☆)
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by am-bivalence | 2008-11-23 00:24 | 人間ドラマ | Comments(0)