劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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カテゴリ:伝記( 5 )

 事実の再現のみで構成しようとしたゲバラの失敗  公式サイト

 原題は「CHE PART TWO」と、いたってシンプル。
妙に凝った長い邦題を付けられると、窓口で券を買うとき言いづらくて困ります(笑)。

 それはともかく、この映画、前編に引き続き、
ゲバラのことをよく知らない者にとって、やっぱり分かりづらいです。
ボリビアでのゲバラの悲劇的最後を描いているのですが、
記録として残っているゲバラの行動を極力忠実に再現しようとしているようで、
このとっつき難さは、歴史を学ぶのに直接文献にあたっているようです。
それでもゲバラのボリビアでの苦難と失敗は伝わってきました。

 共闘するはずだったボリビア共産党が協力を止めたことで
ゲバラの革命はのっけから躓きます。
 ゲバラはキューバ革命と同じように、農村部にゲリラの拠点を築き、
勢力を拡大していこうとしますが、
肝心の農民は政府側の情報操作でゲリラを恐れ、協力しません。
次第に追い詰められていくゲバラ達。

 ゲバラは厳格な人だったそうです。
前編のラストでは、革命成ってハバナに向かう途中で
浮かれてオープンカーを乗り回す兵を叱責するエピソードがありました。
 そんなゲバラの姿に私は「ワイルド・スワン」に描かれた
著者ユン・チアンの父親を思い出しました。
ユン・チアンの父は中国共産党の初期からの筋金入りの党員で、
共産主義に根ざした理想家でした。
権力を持つと親族で利権を抱え込むのが当たり前だった中国で、
彼は一切、親族をえこひいきするような事をしませんでした。
党幹部だから送迎車が使えるといった、
特別待遇を与えられるのを嫌っていました。
その厳格さゆえに身内からは恨まれるところもありましたが。。。
 搾取のない、真に公平で平等な社会を作る、
ゲバラもそんな理想主義を抱いて行動した人だったようです。
高い理想を革命というラジカルな手法で実現しようとしたゲバラが、
悲劇的最後を遂げるのは必然だったのかもしれませんが、
その理念がとても高潔なものだっただけに、より悲劇的に見えるのでしょう。
                                 (☆☆)
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by am-bivalence | 2009-02-24 22:27 | 伝記 | Comments(0)
 後編のための長~い前説?  公式サイト

 原題は「CHE PART ONE」と、いたってシンプル。
"チェ"・ゲバラ、ある世代には熱狂的信奉者がいて、時代のイコンである人物ですが、
私はゲバラのことをあまりよく知りません。
高校の頃、彼の自伝を読んだことはありますが、
キューバ革命や彼の思想、人物像がもう一つよく分からなかった覚えがあります(^_^;)。

 この映画の事を聞いたとき、幾つか腑に落ちない点がありました。
 なぜ今頃、ソダーバーグが取り上げたのか。
革命家ゲバラを信奉する人はラジカルでアナーキーなイメージがあるので、
ソダーバーグが興味を持つのはちょっと意外な感じがしたのです。
ソダーバーグはゲバラの何処に惹かれ、何を描きたかったのでしょう。
 なぜ、ゲバラ役にスペイン語を話すという以外、
共通点の無さそうなベニチオ・デル・トロを起用したのか。
(ゲバラに容姿が似ているという点では、まだ「モーターサイクル・ダイアリー」の
ガエル・ガルシア・ベルナルのほうがよかったと思います。)
 なにより、ゲバラはどんな人物だったのかにも興味がありました。

 で、実際映画を観てみたんですが、
これが映画を観ても、事前の疑問はほとんど解けません。
 この映画、革命の勝利、戦場での恋などドラマティックな要素には事欠かないのに、
ドラマ的演出はしません。
革命後、国連演説のためニューヨークに滞在したゲバラをカットバックしながら、
キューバ革命時のゲバラの行動を淡々と見せるドキュメンタリーのような映画です。
キューバ革命が全体としてどう進み、どうやって成功したのか、
説明的描写はほとんどありません。
昔読んだゲバラの自伝のようです(笑)。

 でも観賞前の疑問は、プログラムの監督インタビューを読んであっさり解けました。
しかも、知ってしまうとなぁんだって事ばかり。
 ゲバラの企画を持ち込んだのは、デル・トロだったこと。
(全然似ていないのにゲバラ役にしたわけです(笑))。
ソダーバーグ自身はそれまでほとんどゲバラを知らなかったこと。
ソダーバーグが惹かれたのはゲバラの人間性、特にボリビアでの活動で、
それを描く補足として、キューバ革命でのゲバラを追加したこと。
映画のエピソードは全て事実に基づき、可能な限り忠実に再現しようとしたこと。

 どうもソダーバーグはゲバラのキューバでの成功よりも、ボリビアでの失敗に、
革命家としての思想や信念よりも、成功を投げ打っても次の革命へ乗り出した
ゲバラの人間性に興味があったようです。
 結局、この映画の本質は後編にこそあるわけで、
パート・ツーを観てみなければこの映画の評価はできません。
後編に期待しましょう。
      (☆☆)
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by am-bivalence | 2009-01-23 21:22 | 伝記 | Comments(0)

screen42 ミス・ポター

 子供でも楽しめるミス・ポターの恋愛秘話 公式サイト

 実は私、ピーターラビットの絵本は一冊もちゃんと読んだことがありません。
ただ、以前TVのドキュメンタリー番組で見た、
作者ポター女史のナチュラリストとしての面が印象に残っていて、
この映画に興味を持っていました。
 彼女の描く動物達は写実的です。背景に描かれる植物も、
実在のものを正確に描いているそうです。
ナショナル・トラスト運動の創成期に大きく貢献したことなども
ポター女史に興味を引かれた点でした。

 実在のポター女史が、どんな人だったかは知りませんが、
絵本を出す時にコストのかかる色刷りはやめようと考えていたり、
ピーターラビットのぬいぐるみの製造を初めてライセンス供与したり、
意外に、現実的なビジネス感覚を持った"かしこい"人だったように思えます。

 でも映画でのポターは、上流階級の箱入り娘で、
自分の描いたキャラクターを友達と呼び、話し掛ける、
夢見がちの人物のように描かれています。
 ポターのキャラクター達をアニメで動かして見せるなど、
ピーターラビットファンの子供達が観ることを配慮したんでしょうか。

 自分の空想世界に入り込むという点では、
「パンズ・ラビリンス」のオフェイリアに重なる部分がありますが、
この物語が「パンズ・ラビリンス」と違って明るいのは、
ポターがあくまでポジティブだからというのもあるのでしょう。
 「パンズ・ラビリンス」がファンタジーと言いながら、
ダーク過ぎて低年齢層に観せるには問題があるのと対照的に、
「ミス・ポター」は実話でありながら子供でも楽しめる内容です。
この安心感は小学生向けの伝記物語のようです。

(以下、ネタバレ)

 映画は、編集者との恋が中心となっていくのですが、
この恋愛は唐突に意外な結末を迎えます。
 この突然な恋愛の終焉が会話だけで示され、決定的映像が出てこないので、
ミステリ映画を観過ぎてひねくれていた私は、
てっきり結婚に反対されていた二人を別れさせるための策略かと
疑って観ていました。
 おかげでポターの悲しみにシンクロするタイミングを外され、
悲しみを共有できぬまま後半に移ってしまったのが残念でした。
 それに、後半ポターが立ち直る部分が時間の経過としか描かれておらず、
もっと丹念に過程を描写してくれたら、より感動できたような気がします。

 それにしても、後半ポターが移り住み、土地を買い上げても開発から守ろうとした、
イギリス湖水地方の風景は美しいものでした。
 ポターの半生を描いたドラマよりも、
この光景が今も観れるのは、ピーターラビットあってこそであることに、
感慨を憶えてしまうのでした。
                    (☆☆)
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by am-bivalence | 2007-10-30 22:26 | 伝記 | Comments(6)
 暴君を造ったのは誰か  公式サイト

 かつて、フィリピンのマルコスを後ろ盾していたのはアメリカでした。
オサマ・ビンラディンをアメリカが援助していたのは、
アフガニスタンに侵攻したソ連に対抗するためでした。
 イディ・アミンはイギリス、イスラエルに支援されて
クーデターによりウガンダ政権に就きます。
国民に広く支持されて始まったアミン政権も
影で行われていた敵の粛清がエスカレートしていき。。。

 本作品が注目されたのは、なんといってもアカデミー主演男優賞をとった
フォレスト・ウィテガーの演技でした。
 「人食い大統領」アミン(本当はアミンは菜食主義で、
鶏肉ぐらいしか食べなかったと言います)を、
人間的魅力も持った人物として、存在感たっぷりに演じています。
ただ、好人物に見えたアミンが、権力を得て暴君になっていく過程が
もう一歩踏み込んで描けなかったように思います。
(これは俳優のせいではないのですが)
 全編、粒子の粗いフィルム(16mm?)で撮影されていて、
低予算映画であるのが分かるのですが、
こんなマイナーな映画でも主要アカデミー賞を得られたのが
ちょっと新鮮ではあります。

 この映画、本当の主演はアミンの主治医となる
スコットランド出身の青年医師なんですが、
この男がどうしようもない愚かな若者にしか見えず、
私には感情移入できませんでした。
 彼は最初、農村での医療活動に来て、この国の貧しさは知っているはずですが、
アミンの演説に心酔して、プールサイドでパーティを繰り返すアミン一派に
違和感を抱きません。
裏切り者とみなされた人物が次々と粛清されていくのに恐怖しても、
下半身のだらしなさで背信行為に及びます。
そして、そのことで自分が抜き差しならぬ事態になっているという自覚が無い。
 最後に残酷な報いを受けても、私が同情できたのは、
彼を助けるために巻き込まれた同僚の医師の方でした。

 最後の空港売店の場面で、アミンと青年医師の交わす会話は
互いを的確に批判しています。
稚拙な能力しかないまま権力を握った人間の愚行、
それをパワーゲームとして安直に利用し、うまく行かないと切り捨てようとする先進国。
この構図は今も変わらないように見えます。
 「スコットランド最後の王」が、本当に最後であることを祈ります。
                                  (☆☆)
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by am-bivalence | 2007-03-21 21:49 | 伝記 | Comments(6)
「カッコイイ」とは、こういうことか  公式ホームページ

 1920年製バイク「インディアン・スカウト」の改造を重ね、1962年に60才以上の高齢で
バイクの世界最高速度記録を打ち立てたバート・マンローの実話を基にした物語です。
映画のエピソードはほとんど本人の体験談だそうです。
 この映画の魅力はマンローという人物の魅力につきます。

 この人、自分の愛車をチューンアップすることに持てる全てを注ぐため、
自宅は倉庫みたいな小屋、庭は全く手入れしないので草ボウボウ、
朝だろうが夜中だろうが夢中になるとエンジンをかけて爆音を轟かせ、
御近所から怒鳴られる、エキセントリックな人です。
よる年波には勝てず、心臓に持病を抱えてたりします。

 でも彼は、田舎育ちの実直さに少年の情熱を併せ持ち、
触れ合う人はみな彼に好意を抱いてしまうのです。
(そして、女性にモテル)
それが彼の窮地を救ったりします。

 さらに彼のすごいのは、速く走ることに関する技術と創造性はピカ一で、
お金がなくても、何でも廃品の中から造り出してしまうところです。
 ジャンクパーツを熔かしてピストンを手造りし、
中古車のエンジンを調整することなど、造作もなくやってのけます。
テストランでは、高齢の彼と骨董品のようなバイクを見てばかにしていた人達を
その技術の結晶である愛車でブッチギって見せ、唖然とさせてしまうのです。
 「カッコイイ」とは、こういうことです。

「紅の豚」のポルコとピッコロを足したようなキャラクターは
宮崎駿監督もきっと好きなはずです。
                    (☆☆)
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by am-bivalence | 2007-02-10 01:37 | 伝記 | Comments(0)