劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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カテゴリ:サスペンス・スリラー( 9 )

screen106 チェンジリング

 予想を上回る展開と、静かに胸を打つエンディングの佳作 公式サイト

 先日、村上春樹氏がエルサレム賞授賞式で行ったスピーチが話題になりました。
壁と卵の比喩、壁(システム)にぶつかって壊れる卵があれば
卵の立場に立ちたいという比喩を使ったスピーチです。
 この映画も言ってみれば、壁にぶつかってしまった卵の話です。

 「パーフェクト・ワールド」、「ミスティック・リバー」、
「ミリオンダラー・ベイビー」、硫黄島2部作と、これまでイーストウッド作品は
重くて、ある意味救いがなく、観るのにそれなりの"覚悟"がいるものばかりでした。
でも今回の「チェンジリング」はちょっと違いました。
最後に希望があるのです。それを信じる者に生きる力を与える希望が。
たとえそれが幻のような不確かで儚いものだとしても。

 プロットがよくできていて、本当にこれが実話?と思ってしまうほどです。
途中ホラーチックな演出もありますが、全編を通じて行方不明の息子がどうなったのか
を追うサスペンスになっています。
こんな結末なんだろうという予想を超えて展開し続いていく話は
144分の長さを感じさせませんでした。

 changelingとは"入れ替わり"とかいった意味かと思っていたら、
神隠しにあった子供とすり替わって現れる子供のことだそうで、
一般的な辞書にも載っています。
まさにこの事件そのもので、よくこんな単語があったなあ、と感心します。

 行方不明になった息子を取り戻したい一心で行動する母親というと、
ハリウッド映画なら「フライトプラン」のジョディー・フォスターのような
逞しいアメリカ女性が出てくるのだろうと思っていましたが、
「チェンジリング」の母親は警察の詭弁や嘘にも反論できないおとなしい女性です。
それが後半に変わっていくのも見所。
 本作のアンジェリーナ・ジョリーはこれまでの地でやっていたような
自信たっぷりの女性とは全く違って、気弱な感じの母親を好演しています。
この役でジョリーは今年のアカデミー主演女優賞にノミネートされていました。
                                (☆☆☆
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by am-bivalence | 2009-03-13 23:23 | サスペンス・スリラー | Comments(0)

screen63 ノーカントリー

いつ襲ってくるかわからない死をめぐる秀作スリラー 公式サイト

 かつて映画には、ピカレスク物とか、
バイオレンス映画とかいったジャンルが一定の人気を保っていました。
「俺たちに明日はない」とか、
サム・ペキンパー+スティーブ・マックイーンの「ゲッタウェイ」、
ギャング物ではチャールズ・ブロンソン「バラキ」などなど。
日本でいえば深作欣二の任侠物とか、
松田優作「蘇る金狼」なんていったところでしょうか。
 しかし、「スターウォーズ」の大ヒットで、
映画は見たことのない映像をSFXを駆使して
ティーン・エイジャー達に見せる健全な娯楽になり、
バイオレンス映画は衰退していきます。

 それでもバイオレンス映画は途絶えたわけではなく、
このコーエン兄弟の「ノーカントリー」も、
そんなバイオレンス映画の脈流が生きています。
 ただ「ノーカントリー」が違うのは、
マックイーンのようなヒーローがいないこと。
そして、暴力よりも知性を感じさせることではないでしょうか。
 例えば、主人公モスが麻薬組織に追われて川に飛び込み、
下流に泳ぎ着いた後、追ってきた猟犬を拳銃で迎え撃とうとするシーン、
濡らしてしまった拳銃の扱い方には、なるほどと感心させられます。
夜の街で、殺し屋シガーとの銃撃戦の仕方なども、
ベトナム戦争を生き抜いてきたモスらしい、
考えた戦い方をしています。

 しかし何と言ってもこの映画の一番の見所は、
最悪の殺し屋、シガーの恐ろしさ、不気味さでしょう。
無感情に、どんな相手も平然と殺してしまう殺し屋。
コーエン兄弟の演出は冴えわたっています。
いつ殺人者の牙を剥くか分からないシガーと店主の会話の緊張感、
容赦なく撃ってくる、姿の見えない殺し屋相手に応戦する恐怖など、
シガーの絡む場面はどれも、緊迫感がみなぎっています。
 シガー演じるハビエル・バルデムは
「海を飛ぶ夢」の全身不随の主人公を演じた俳優で、
とても同じ人が演じているとは思えない変貌ぶりです。

 原作のタイトルは「血と暴力の国」だそうで、
これがこの映画に含まれたテーマをよく表しています。
最後、追われる者と追う殺し屋、その二人を追う保安官の
三つ巴の戦いになるのかと思えば、
あっさり観客の期待を裏切る意外な結末が待っていて、
そこがなんとも文学的なように感じました。
 劇中語られる、簡単に人を殺す最近の犯罪の異常性や、
最後に保安官の語る夢の光景などで、
映画に社会批判的、哲学的な意味を含ませていて、
単なるスリラーに終わらなかったのが、
アカデミー作品賞を取った秘訣なんでしょう。

 まあ、難解な哲学的意味はよく解らなくても、
映画的面白さを十分楽しめる作品でした。
                       (☆☆☆☆)
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by am-bivalence | 2008-05-15 23:22 | サスペンス・スリラー | Comments(0)
 意外に斬新さを感じないが、良くできたエンターテインメント 公式サイト

 同じ出来事を何度も繰り返す複数視点の映画といえば、
私が思い出すのは「閉ざされた森」とか、「ラン・ローラ・ラン」とか。。。
最近では「アヒルと鴨のコインロッカー」もその部類でしょうか。
これらの映画は同じ事件を繰り返しても、
それを語る人物の主観や嘘が入っていて、
同じ事実が微妙に異なっていました。

 でも「バンテージ・ポイント」はちょっと違います。
映像で見せる事実は皆同じです。そこに主観や嘘はありません。
でも、人物によって知る事実が違ってくるので、
観客は最後に事件の全容が分かる構成になっています。
ちょっと変わった映画ではあります。

 ただ実際に映画を観ると、思ったほど斬新さを感じなかったのが残念です。
それは複数視点といっても、
完全に登場人物の視点になっていないからのように思います。
 たとえば大統領狙撃後、広場で起こる爆発は、
常に広場上空から爆発を捉えたカットが入ります。
それが、複数の人物それぞれからの視点というより、
同じ映像を繰り返し見せられているように感じてしまい、
途中ちょっと飽きてしまう原因となっています。

 それでも後半、大統領の視点でストーリーが進むと、
事件の舞台裏が明らかになってきて、物語が俄然面白くなってきました。
シークレット・サービスの主人公がモニターを見て
陰謀の真実に気付く場面も良く考えられています。

 また、「ボーン・アイデンティティー」のように小型車を使った
後半のカーチェイスは、なかなかスリリングでした。
 最近の映画はカーアクションを派手にしようとするあまり、
その程度の目的のために、そこまで命懸けでやるか?と思う事が多いのですが、
この映画のシチュエーションは、捨て身で追いかけるのに無理がないので、
カーチェイスに入り込めました。

 とにかく細部までかなり練られた脚本で
楽しませてくれる娯楽作品でした。
               (☆☆☆)
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by am-bivalence | 2008-03-27 22:55 | サスペンス・スリラー | Comments(2)

screen55 L change the WorLd

 久しぶりに観てしまった、もう笑うしかない映画 公式サイト 

 これまで映画を観てきて、時々
「なぜ、こんなつまらない映画ができたんだろう」
 と、不思議に思うことがあります。

 映画関係者が聞けば、"そんなこと判れば苦労しない"
と言うかもしれませんが、
素人目でも、これは脚本段階から変なのが判るだろう、
と思うような映画に時々出会います。
 「良い脚本から駄作ができる事はあっても、
悪い脚本から名作が生まれる事はない」
というのは、映画の鉄則のはず。
 なのに、よくこんな脚本で撮影に臨んだなと思うような、
映画がなくならないのは、なぜでしょう。(特に邦画)

 「デスノート」、「デスノート the Last name」のヒットで作られたスピンオフ「L」、
監督が変わっていたので、いやな予感がしました。
「デスノート」では、夜神月と智略を尽くして闘ったLですが、
今回のLにその面影はありません。

 ハイテクを駆使して高度なセキュリティを備えたはずの本部は、
あっさり敵に踏み込まれ、
保護を求めてきたはずの子供が、無謀にも敵と対峙するのを
Lは全く止めなかったばかりか、
子供自らウィルス感染してしまうのを傍観して、重大な事態を招きます。
挙句は感染した子供を街中の雑踏に連れ出す。
 信じられない軽率さです。
(Lは他人に感染しないと確信していたようですが、
その根拠は曖昧のように見えます)

 殺人兵器のウィルス感染で血まみれになる描写など、
「リング」の中田監督、自分のお得意なホラー的表現法を使いたかったのでしょうが、
私はスプラッタームービーを観たくて来たのではないのです。
 原作コミック「デスノート」からのファンで、Lの活躍を観たくて来たはずの子供達も
そんなものは期待していないでしょう。
 鶴見辰吾演じる教授が長々とセリフをしゃべりながら、
ホラー映画さながらの壮絶な最後をとげますが、
壮絶すぎて何を言っているのか解りません。
 そもそも、残虐で猟奇的な殺人シーンや、
ウィルスで体中から血を流して苦しむ人々が出てきたりするのに、
なぜPG-12指定にならなかったのか、理解に苦しみます。

 数え上げたらきりがないツッコミどころ満載の映画です。
最後は、狂信的テロリスト?集団の計画のむちゃくちゃさや、
ありえないようなスピードのウィルス感染によるスプラッターな場面で
クライマックスを盛り上げようとするなど、
呆れるのを通り越して、笑うしかありません。
 「L」を観た子供たちが、夜うなされなければ良いんですがね。
                              (_)

 (唯一、感心したのが、工藤夕貴の声。
かなり発声訓練をしたのか、アイドル時代とは別人のようです。
CMのセリフ、
 「ここで解決しないことはとっても苦手」
を言っているのが、彼女とは気が付きませんでした。)
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by am-bivalence | 2008-02-26 21:49 | サスペンス・スリラー | Comments(2)
 こじんまりとまとまってしまう、サスペンス映画 公式サイト

 私はボーン・シリーズを今まで劇場で観たことがありませんでした。
マット・デイモンという俳優が、あまり好みでないからです。
名作「太陽がいっぱい」のリメイク「リプリー」でのマット・デイモンが、
私にはどうしてもジミー大西に見えてしまうのでした。
マット・デイモン自身はハーバード大に入学した秀才だそうですが。
 今回、前2作がテレビで放送されていたこともあり、
予習してから観てきました。

 ジェイソン・ボーンって名前、どう見てもジェームズ・ボンドのもじりですよね?
イアン・フレミングはジェームズ・ボンドを
スパイらしく目立たない平凡な名前として名付けたらしいですが、
今や世界中に知れ渡ってしまいました。
 平凡で目立たないという意味では、
マット・デイモンの容姿はスパイ、暗殺者向きなんでしょう。
(決して今回、マット・デイモンファンに喧嘩を売ろうとしている訳ではありません)
ボーンシリーズが007と大きく違うのは、リアルでシリアスな点です。

 ジェイソン・ボーン、今回もCIAの元上司に追われる羽目になります。
抹殺されそうになるたび、上司を倒してきたのに、
いったい何人上司がいたんだ?といった展開です。
ストーリーのパターンが3作とも同じというのも芸がない。。。

 ボーンの頭脳的な行動、アクションは確かに良く出来ていて、
観ていて引き込まれます。
しかしパリの駅や、モロッコでのクライマックスを盛り上げているのは、
アクションというより、暗殺者に追われるサスペンスであって、
この面白さはサスペンス映画そのものです。

 ボーン・シリーズはどれもそんな感じがするのですが、
結末の収束させ方が想定内で大きなひねりもなく、無難にまとまってしまうので、
観終わった後、大きな印象が残らないのでした。
                               (☆☆)
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by am-bivalence | 2007-11-23 09:31 | サスペンス・スリラー | Comments(0)
 社会派っぽいアイテムを散りばめた、四つ巴ダイヤ争奪アクション  公式サイト

 前回観た「ブラックブック」では物語の始めに、
資産家の娘だったヒロインが国外脱出のため、
預けていた資産を受け取りに行くシーンがあります。
 そこでドル紙幣と供に受け取るのが、
一袋のダイヤの原石でした。

 ユダヤ人とダイヤには大きな関連があります。
各地で迫害を受けていたユダヤ民族は
組合のある産業に就くことができず、
働き口は組合の無い職業に限られていました。
その一つがダイヤ加工業だったそうです。
(以上、「ブラックブック」パンフレット受け売り)

 やがてダイヤ流通は20世紀初頭、
ユダヤ系資本を後ろ盾にしたデビアス(De Beers)社に独占されていきます。
 といっても、その体制は磐石ではなく、
1980年頃には、イスラエルのダイヤ産業との競合で価格が暴落したりしています。
(ユダヤ系資本も、決して一枚岩ではなかったわけです。)
 それでも、今もデビアス社の独占体制は続いていて、
それがダイヤの高値安定を維持させる状況を作っています。
 デビアス社が生産調整しなければ、世界のダイヤ生産量は今の何倍もあるそうです。
ダイヤは日本で思われているほど、宝石として希少価値はないらしいのです。
(以上、ネットでちょっと検索した結果。
今の時代はネットで簡単に調べられていいですね。)

 「婚約指輪は給料の三か月分」って、
世界共通のキャッチ・コピーだったんですね。
(もちろん、これもデビアス社製)
 映画の中で、ディカプリオがこのコピーを口にします。

 本作でディカプリオは、過酷なアフリカ社会をサバイバルしてきた、
元傭兵のダイヤ密売人を好演しています。
前半のやり手ぶりと、後半に見せる人間味が
結構、ディカプリオの雰囲気にマッチしていて、
これまでで一番魅力的ではないでしょうか。

 ジェニファー・コネリーは、危険地帯を渡り歩くジャーナリストにしては
綺麗すぎるように思いますが、やっぱり魅力的です。

 ジャイモン・フンスーは、家族を取り戻そうと奔走しますが、
自分の命さえ危ういのに、そこまで家族を探そうとするか?
と、ちょっと引いてしまいます。
 アメリカ映画では、それほど命懸けで家族を守るキャラクターが好まれるんでしょうか。

 紛争ダイヤが生まれる状況を広く知らしめたこの映画、
まずは知ることが大切なのでしょう。

 ダイヤ業界は紛争ダイヤをめぐる非難を恐れたのか、
03年からダイヤの出所を明確にするキンバリー・プロセスを導入します。
ただそれもまだ完全に機能しているとは言えないようです。
アムネスティHP参照)
キンバリー・プロセスが形骸化した免罪符にならないことを。
単純な不買運動では問題は解決しないのです。


(以下、ネタバレ)
 ジャーナリストのジェニファーと密売人のディカプリオが
互いに惹かれあいながらも、結局ラブシーン無しなのがよかったです。
そうしたことで、より精神的結びつきが強調されたように思います。

 最後で使う脱出手段、往路でも使えば
簡単にダイヤを取りに行けたのでは?と思うのは私だけでしょうか。
                                  (☆☆
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by am-bivalence | 2007-04-15 00:07 | サスペンス・スリラー | Comments(8)
 敵味方混濁する娯楽サスペンス佳作  公式サイト

 オランダ出身のポール・バーホーベン監督を有名にしたのは、「ロボコップ」でした。
得意のバイオレンス描写が、B級SFアクションにマッチしていただけでなく、
娯楽映画にアイデンティティ探しを盛り込んで、作品に深みを持たせました。
超人的能力を持った(持たされた)ヒーローの孤独を描いた点では、
後の「スパイダーマン」シリーズに通じるものもあります。

 その後も「トータル・リコール」、「氷の微笑」といったヒット作を造りますが、
「ショーガール」ではラジー賞を貰ってしまったりもしています。
ラジー賞では実際に授賞式で賞を受け取ってみせるという、
独特のユーモアと気骨のあるところを見せました。
(ハリウッドでは、ラジー賞を取ると本当にギャラが下がるそうです。)

 そんなポール・バーホーベン監督が、
ハリウッドから引き揚げていたのをこの映画で知り、驚きました。
監督は、ハリウッド映画の制約を疎ましく思っていたようです。
ハリウッドではSFばかり撮っていましたが、
実は、もともとSF映画は好きでなかったらしいのも一因なのでしょうか。

 さておき、バーホーベン監督オランダ復帰作は、初心に戻り、
オランダ・レジスタンスの暗部を扱ったサスペンスでした。
 得意のバイオレンス、エロティックシーンは少ないものの、
生理的嫌悪感を刺激するような描写は健在で、めりはりある効果を上げています。
ヒロインは創作ですが、出てくるエピソードは史実に基づいているそうです。
ユダヤ人迫害を扱っていても、人種問題には深入りせず、
あくまで、サスペンス娯楽作品として仕上げているのが、
バーホーベンらしいところでしょうか。

 レジスタンスの中にいる裏切り者は誰か、というのがプロットの軸になるんですが、
味方の中に敵がいるだけではありません。
ナチ側にもレジスタンスに理解を示す人物がいたり、
終戦後もナチ残党やナチ協力者が解放軍に取り入っていたり、
戦犯収容所で虐待行為が行われたりなど、
二元論的に善悪を分けていないところにリアリティを感じさせます。
 ただ、正体が明らかになった裏切り者が、
結局、悪人ぶりをみせているのは、ちょっと残念ですが。

 大戦では被害者だったユダヤ人が、中東では紛争を起こし加害者となっているのを
ラストカットが暗示しているようで、善悪混沌とした、この映画らしい終わりかたでした。
                                      (☆☆
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by am-bivalence | 2007-04-09 22:42 | サスペンス・スリラー | Comments(2)

screen 20 デジャヴ

 タイトルを誤った佳作  公式サイト

 このブログで最初に取り上げた「トゥモロー・ワールド」は、
宣伝で損をしていたと思います。
SFであるのを強調し、人類の明日は?という点に興味がいくよう仕向けたからです。
しかし実際の映画は、SFの自由さを使って現代を比喩したものであり、
SF的人類存亡の危機を解明していくものではありませんでした。
だから宣伝に惹かれて観た観客は、肩透かしされたように思ってしまったのです。
 「デジャヴ」も内容とは関連無いタイトルが、観客にあらぬ方向へ期待を持たせ、
結果、ストーリー展開に戸惑いを感じてさせてしまっています。

 「デジャヴ」は、主人公が既視感を感じたわけでもないし、
(劇中そんな描写は無かったように思うんですが。。。)
自分の既視感を解明するために動いていたわけでもありません。
 本作のテーマは"運命は変えられないのか"にあると思います。

 この映画、リアルな現在を舞台設定にしているにもかかわらず、
一点、突飛な設定がされています。
同じトニー・スコット監督の「エネミー・オブ・アメリカ」のテクノロジーを、
大きく飛躍させたような装置です。
それが受け入れられれば、この映画は楽しめます。

(以下、完全にネタバレ)
 私、タイムトラベル映画って、好きなんです。
伏線が幾つもあって、それが後から「ああ、そうだったのか」と、
パズルのように埋まっていく面白さ、
何度も見直して、伏線を検証したり、別な伏線を発見する楽しさがいいです。
 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、「バタフライ・エフェクト」、
「サマータイムマシーン・ブルース」、「時をかける少女(06年アニメ版)」、
いずれも傑作ぞろいだと思います。

 「デジャヴ」は、テロで失われた人命を何とか救おうと過去に干渉するんですが、
過去を変えたつもりが、実は変わっていなかったりします。
やはり運命は変えられないのかと思わせる演出がスリリングで、最後まで飽きさせません。
観終わってからも、この後どうなるのだろうと考えさせられました。
あのままでは、デンゼル・ワシントンは結局死ぬ運命にあるのですから。
ん?何か変だな?
 流れは変わったから、これ以上干渉はいらないってことですか。
                          (☆☆☆)

参照映画:「サマータイムマシーン・ブルース」 本広克行監督 2005年
  真夏のある日、エアコンのリモコンが壊れた大学のSF研部室に、
 タイムマシーンが現れることで起こる騒動を描く、傑作コメディ。
  タイムトラベル物というと、過去に戻って信長を倒し日本を変えようとか、
 話が大仰になり易いんですが、
 この映画は、そんなことを全く考えないところがいいです。
  脚本が秀逸で、SF的考証をきっちりやっており、
 タイムパラドックスを分かりやすく解説してくれます。
 過去を簡単に変えてしまう「バック・トゥ・ザ・フューチャー」等とは違った
 独自の世界観を見せています。
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by am-bivalence | 2007-03-25 11:55 | サスペンス・スリラー | Comments(4)
  しゃれたセリフと、プロットをパズル感覚で追うのは楽しいが、
 それって必要?
  公式ホームページ

 まずこの映画、映画を見る前にパンフレットを読んではいけません。
ストーリーが結末まで全部書いてあります。
懇切丁寧にも、人物相関図がネタバレ含めて載っています。
上映前にパンフレットに目を通す人もいるでしょうに、
ツイスト(どんでん返し)映画でここまでする必要があったのでしょうか。

 それはさておき、最近の映画としては珍しく、
やたらセリフや会話に凝っている映画です。
ジョシュとルーシーの会話だけでも楽しませてくれます。
ただ、スタイリッシュなのは"映像"というより、"セット"じゃないでしょうか。
基本はギャングのお話なので、バイオレンスシーンも目につきます。

 冒頭から複線だらけで、パズルとしては凝った造りです。
しかし後からストーリーをよくよく追ってみると
ここまで手の込んだ計略をする必要が見当たらないのです。
あえて言ってしまえば、どんでん返しのため、でしょうか。
計画に20年掛かった理由もはっきりしません。
ラストもハッピーエンドにして見せる取って付けたやり方に思えました。

 結局、パンフレットからプロットまで、
ここまでやる必要があったのか疑問の残った映画なのでした。
                                   (☆☆)

参照映画:「オールドボーイ」 パク・チャヌク監督 2004年
   裏社会を舞台にしている、タランティーノ好みのバイオレンス描写、
  長期に渡る陰謀計画、ラストのどんでん返しなど、共通項が幾つかあります。
  おしゃれさは「ラッキーナンバー7」が上ですが、
  こちらは計画に時間が掛かるのに必然性がありました。
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by am-bivalence | 2007-01-20 10:45 | サスペンス・スリラー | Comments(0)