劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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 限りある命の意義を問う、ハードボイルドSFの名品 公式サイト

 1982年に公開された「ブレードランナー」、リドリー・スコットの手で
再編集、デジタル処理された”最終バージョン”が
DVD発売前にニューヨーク、ロサンゼルス、日本限定で
劇場上映されているので観てきました。

 「ブレードランナー」は5バージョンあるそうですが、ファイナル・カット版はどう違うのか、
詳しくはeiga.comの特集記事で御覧戴くとして、
簡単に言ってしまうとディレクターズ・カット版の
修正、デジタル・リマスター版といったところでしょうか。
 目立った変更は、ゾーラの潜伏しているダンスホールで
ダンサーのカットが追加されている点、
ゾーラが撃たれてガラスのショーウインドウに突っ込むシーンが
撮り直されている(!?)点だそうで、
ディレクターズ・カット版と全体の印象はほとんど同じです。
 ただ、やはり劇場の大スクリーンで観るのはいいもので、
特に手直しされただろう音響効果が、劇場で体感すると迫力が全く違います。
ファンでしたら、劇場で観ることをお薦めします。
 
 「ブレードランナー」は「スターウォーズ」以降多数作られたSF映画の一本で、
公開当時は「スターウォーズ」のハン・ソロ役でブレイクした
ハリソン・フォード主演ということが話題になりました。
ただ、単純な娯楽作でなく難解な結末や、
未来都市のダークで閉塞的雰囲気もあいまって、
一般受けせず、興行的にはうまく行かなかったと思います。
 そんな「ブレードランナー」がこんなに長く名作として生き続けているのは
ちょっと意外というか、奇跡のようにも思えます。

 今回観直してみて、前半の未来都市のビジュアルのみならず、
クライマックスの生命について考えさせる哲学的な面も古びておらず、
同じ感慨を起こさせるのに驚きました。
 レプリカントの短命さは比喩であって、
限りある命をもって生きているのはあらゆる生命に共通、
人間もまた同じです。
死が迫ることで生への執着を実感し、限りある命を精一杯生きることに気付く。。。
レイチェルと逃避しようとしているラストのデッカードはそんな風に思えるのです。

 それにしても、こうして何度も手直しを受け、
注目される「ブレードランナー」は幸福な作品です。
                      (☆☆☆☆)
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by am-bivalence | 2007-11-25 02:16 | SF | Comments(2)
 こじんまりとまとまってしまう、サスペンス映画 公式サイト

 私はボーン・シリーズを今まで劇場で観たことがありませんでした。
マット・デイモンという俳優が、あまり好みでないからです。
名作「太陽がいっぱい」のリメイク「リプリー」でのマット・デイモンが、
私にはどうしてもジミー大西に見えてしまうのでした。
マット・デイモン自身はハーバード大に入学した秀才だそうですが。
 今回、前2作がテレビで放送されていたこともあり、
予習してから観てきました。

 ジェイソン・ボーンって名前、どう見てもジェームズ・ボンドのもじりですよね?
イアン・フレミングはジェームズ・ボンドを
スパイらしく目立たない平凡な名前として名付けたらしいですが、
今や世界中に知れ渡ってしまいました。
 平凡で目立たないという意味では、
マット・デイモンの容姿はスパイ、暗殺者向きなんでしょう。
(決して今回、マット・デイモンファンに喧嘩を売ろうとしている訳ではありません)
ボーンシリーズが007と大きく違うのは、リアルでシリアスな点です。

 ジェイソン・ボーン、今回もCIAの元上司に追われる羽目になります。
抹殺されそうになるたび、上司を倒してきたのに、
いったい何人上司がいたんだ?といった展開です。
ストーリーのパターンが3作とも同じというのも芸がない。。。

 ボーンの頭脳的な行動、アクションは確かに良く出来ていて、
観ていて引き込まれます。
しかしパリの駅や、モロッコでのクライマックスを盛り上げているのは、
アクションというより、暗殺者に追われるサスペンスであって、
この面白さはサスペンス映画そのものです。

 ボーン・シリーズはどれもそんな感じがするのですが、
結末の収束させ方が想定内で大きなひねりもなく、無難にまとまってしまうので、
観終わった後、大きな印象が残らないのでした。
                               (☆☆)
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by am-bivalence | 2007-11-23 09:31 | サスペンス・スリラー | Comments(0)
 沖縄マニア必見! 
 ディープにも普通にも楽しめる、ゆるい雰囲気のオムニバス・コメディ
公式サイト

 今月初め、友人の企画したシーカヤックツアーに参加させてもらい、
沖縄に行っていました。
ツアー前夜、連れて行ってもらったコザのライブハウスで観たのが、
伝説の沖縄ロックンローラー、カッチャンのライブ。
その破天荒でちゃめっ気たっぷりのパフォーマンスには
爆笑、圧倒されました。
 この時、話題になったのが、カッチャンが映画で主演をしているということ。
その話題の映画がテアトル新宿で公開されたので、
観に行ってきました。
 人を食ったマニアックそうなタイトルですが、
意外?にも、普通に楽しめる映画でした。

 「See Me?」、「Happy☆Pizza」、「マサーおじいの傘」の
3話からなるこのオムニバス映画、
スタッフ、キャスト、ロケ地ともオール沖縄で固められており、
沖縄の人なら良く知っている著名人が多数出演しているそうです。
 映画冒頭の沖縄県産品の認定マークが誇らしげです。

 沖縄と言うと、青い海、白い砂浜にサンゴ礁といった
観光パンフレットに必ず出てくるような風景を連想しますが、
この映画には、そんなシーンはいっさい出てきません。
そこに出てくる風景は、見ればすぐ沖縄と判る、
沖縄独特の町並みや日常風景なのです。


 「See Me?」
 沖縄の清明祭(しーみー)という年中行事を題材に、
軽貨物、キノボリトカゲ、元気なおばあといった沖縄風物?を織り交ぜて
ゆるい雰囲気のコメディが進みます。
 ただのダジャレと思っていたタイトルが、一応ストーリーとも関連していたことが分かる
(というより、ダジャレで付けたタイトルからストーリーを思いついた?)
ファンタジックなエンディングは、沖縄のスピリチュアルな一面にも触れています。

 「Happy☆Pizza」
「See Me?」が現代のウチナーグチ全開で、
ヤマトンチュには所々解りにくいセリフがあったのに対し、
こちらは冒頭以外、セリフがありません。
このひねった演出が、全編に流れるオリジナルのラブソングを引き立てて、
いい雰囲気のラブコメディになっていたのですが、
最後のオチで、ただのコメディにしてしまったのがちょっと残念です。

 「マサーおじいの傘」
 70年代の糸満を舞台に、空手の達人といわれるマサーおじいと
いじめられっ子の少年の交流を描いた作品。
監督の少年時代の思い出と重なっているようで、
母のいない少年が近所のお姉さんに抱く淡い憧憬を描いたりしていて、
随所に他の2編にはない情緒が感じられます。
 沖縄に伝わるという
「意地ぬ出らぁ手引き 手ぬ出らぁ意地引き」
の格言と、決して闘おうとしないマサーおじいの姿は
争いを好まない琉球精神、反戦思想をも盛り込んでいるんですが。。。
まじめに映画に入り込もうとすると、
カッチャン演じるマサーおじいが現れ、
いかがわしげな仕草で、笑わせていきます。
監督がどこまで真剣なのか、測りかねるところが面白いです。
 瞳の温かさが妙に印象に残ったカッチャンのマサーおじいですが、
実在の空手家マサー文徳の逸話が盛り込まれているそうです。
実際のマサー文徳がどんな人だったのか、知りたくなりました。


 テレビの2時間ドラマみたいな邦画が多い中、
実験精神もある琉球カウボーイフィルムズは個性的で、
今後も映画を作り続けて欲しいと思います。
                 (☆☆(☆))
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by am-bivalence | 2007-11-20 23:20 | コメディ | Comments(0)
 昭和のイコンを総動員、幸せな絆で魅せる佳作 公式サイト

 私はいつもipod nanoを持ち歩いているんですが、
それは音楽を聴くというより、ほとんどポッドキャスト番組を聴くためになっています。
映画関連で愛聴している番組が、「シネマpepole」「ZIP-FM PREMIRE SEAT」
「ZIP-FM PREMIRE SEAT」では邦画を紹介すると、
必ず関係者のインタビューがあります。
中でも一番印象に残っているのが、第5回での「ALWAYS 三丁目の夕日」
小雪さんのインタビューでした。

 彼女は「ALWAYS 三丁目の夕日」について、
 「見えるものより、見えないものの方が価値がある」
と語っています。
 この言葉こそ「ALWAYS 三丁目の夕日」の世界観をよく表していると思います。
小雪さん演じるヒロミが、かざした左手を見つめて微笑むシーンは
胸に響きました。(映画を観た人なら解るでしょう。)

 「ALWAYS 続・三丁目の夕日」は、まるで最初から前後編として
企画されていたかのような、前作との違和感が全くないストーリー展開です。
後から作られた続編とは思えない出来には、感心させられました。

 ローラー付洗濯機、銭湯の後のビン牛乳、特急こだま、各種看板等々、
あらゆる昭和のアイテムを過剰なまでに出して、時代を表現していく演出は、
前作以上に凝っています。
色彩まで、コダクロームのような昔の映画の色調を再現しているのも前作同様です。

 様々な人情話が交錯していく中で、
今回の物語の軸は、茶川、ヒロミ、淳之介の三人の生活の行方と、
鈴木家に預けられた裕福な環境で育った娘の美加の変化です。
 茶川、ヒロミ、淳之介の関係、鈴木家と美加の関係で共通しているのは
いずれも血縁関係が無い(あるいは薄い)のに、強い家族的絆を作っていくことです。
 そういえば、夕日町の住人は人間関係が濃く、
郵便配達人とも顔見知りだったりして、会うときちんと挨拶します。
 そんな"絆"は、お金では得られないもの、お金でも得られないもので、
今の我々が懐かしく思い、密かに憧れ、求めている
「見えなくても価値があるもの」なんでしょう。
                   (☆☆☆)
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by am-bivalence | 2007-11-10 17:30 | ハートウォーミング | Comments(4)
 二本立てだったので、2つ並べて感想を書きます。

王と鳥 ~宮崎アニメの原型いっぱいの古典 公式サイト

 物語は天高くそびえる城が舞台。
城主である横暴な王様が唯一愛するのが、絵の中の羊飼いの娘。
しかし娘は、隣の絵の煙突掃除の青年と絵から抜け出し、
逃げてしまいます。
 それを追うのが同じく肖像画から抜け出した王様。
羊飼いの娘と煙突掃除の青年は
追っ手を逃れて城の下へ下へと進んでいき。。。

 この映画、いろいろな暗喩が読み取れるそうですが、
それよりも宮崎アニメの元ネタが随所に発見できて、驚かされます。

 お城のてっぺんにある王様の部屋は、
「ルパン三世 カリオストロの城」でクラリスの幽閉された塔そっくりですし、
城のそこら中に落とし穴があるのも、カリオストロ城そのものです。
羊飼いの娘がクライマックスに着せられるウェディング・ドレスは
クラリスの着たウェディング・ドレスに良く似ています。

 城全体の姿は「天空の城ラピュタ」のラピュタを思い起こさせ、
娘と青年を追う秘密警察の服装は「天空の城ラピュタ」で
シータとパズーを追う警察?にそっくりです。

 また娘と青年が城の中を逃走する場面は、
城内放送がスピーカーで流れたりして、
「未来少年コナン」でコナンとラナが
インダストリアを逃亡するイメージと重なります。
地下に住民が抑圧されているのも、インダストリアと同じです。
 さらにクライマックスには「風の谷のナウシカ」の
巨神兵のようなロボットが大暴れするのです。

 ただ、宮崎アニメの原典を知りたいマニアには興味深いでしょうが、
いかんせん、原型となった「やぶにらみの暴君」公開が
1955年といいますから、かなりの年代物です。
映画としては「古典」で、時代を感じてしまうのは仕方ないところでしょう。
                            (☆☆)


春のめざめ ~色彩・画力が圧巻、動く印象派絵画 公式サイト

 最初この映画の予告編を観た時、てっきり絵か実写をコンピューター処理して
油絵調に見せているんじゃないかと思っていました。
 でも実際は、ガラス板上に油絵を描いていき、
動かすところだけ絵具を拭っては描き直すという、
本当に油絵でアニメーションを作る、気の遠くなるような手法を使っているそうです。
 これはすごいです。
油絵画家としての技術と、アニメーターとしての技術、
両方の高度な技を必要とする手法で、実際にそれをやってみせているのですから。
色彩の美しさも素晴らしく、まさに動く印象派絵画です。
ドラマなど、どうでもいいくらい、画面に釘付けになっていました。

 物語は、16歳の少年が年上の女性と
手伝いの少女、二人の女性に同時に引かれるというもので、
アニメとはいえ、性のめざめも扱った大人のストーリーになっています。
 最後は「ことの終わり」を連想させる結末で、
肉欲だけでなく愛の持つ高潔な面もさらりと語っているのが、
独特の情感を残していました。

30分という中篇ですが、幻想的な雰囲気も併せ持つ絵の美しさは、
久々にDVDを買って何度も見直したくなったアニメーションでした。
                         (☆☆☆☆)
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by am-bivalence | 2007-11-06 01:14 | アニメ | Comments(2)