劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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一人称の主観映像が主人公の孤独を追体験させる 公式サイト

 映画にしろドキュメンタリーにしろ、
「闘病もの」ってあまり好きじゃないんです。
 あからさまに、お涙頂戴パターンが多いですし、
障害や難病に苦しむ人に対して、同情というエセ共感をするのは、
そういう境遇でない自分に安堵する裏返しのようで、
無礼で傲慢のように感じてしまうのです。
 うがち過ぎでしょうか。

 ただこの作品に興味を持ったのは、映画として評判が高かったこと、
北村浩子さんのポッドキャスト番組「books A to Z」
原作の紹介を聞いてでした。
原作が粋でユーモアのセンスに富んだものだったからです。

 原作者ジャン・ドミニク・ボビーはファッション誌の編集長だっただけあって、
ダンディで、女性関係も華やかな人だったようです。
 原作のエッセーは、絶望、苦悩、悲しみといったことを
ほとんど直接表現することはせず、ユーモアとウィットで包んで
変わり果てた自分を笑い飛ばそうとさえします。

 例えばある日、ジャンはガラスに映った自分の姿に気付きます。
麻痺して醜くゆがんでしまった自分の顔を見て、
愕然とした彼の反応はこうです。
”僕の中に引きつるような大笑いがこみ上げてきた。
災難に次ぐ災難の、最後の一撃をくらって、
もう何もかもが冗談だと考えるしかなかった。”
そして、彼はこう結びます。
”笑いに笑った。涙があふれ出すまで。”

 また、彼がまばたきによるコミュニケーション法で、
文章を綴る動機となったのは、友人達が自分を
”植物人間”と言っていると知ったからでした。
”僕という存在はもう、人間社会よりも青物市場のほうに
属しているのだ”と思ったとき彼は、
”自分の知能はまだゴボウより高いのだと証明”するために、
以前の知人達に宛てて手紙を出すのです。

 前回に引き続き、映画の感想なのか、
原作の紹介なのか分からなくなってきましたが、
映画はジャンが病院で目覚めるところから始まります。
カメラがジャンの目線になっていて、
最初ピントがなかなか合わず、視野も限られています。
そんな”一人称映像”が映画冒頭から15分間続くのです。
観客は否が応でも彼の置かれた状況を体験していきます。
独白で語られる主人公の気持ちが、周囲とちぐはぐなところが
彼の陥った状況を良く表していて、彼の孤独を浮き出せています。

 可笑しいのが、そんな状況の中でも彼が、
二人の美人療法士と面会すると、彼女の胸ばかり見ていること。
さすが、プレイボーイのフランス人です。
 ただこの”一人称映像”、どこか既視感があると思っていたら、
後で思い出しました。「ロボコップ」です。
マーフィがロボコップとして蘇生するシーンも
同じような一人称視点でした。

 原作よりも映画は、自分の肉体に閉じ込められてしまった者の
悲哀と孤独に、より焦点をあてています。
 また、この映画にはジャン以外にも閉じ込められてしまった人間が
二人登場します。
足が悪くてアパートから出られなくなったジャンの父親と、
ベイルートで拘束され何年も投獄されたという友人です。
監督はジャンの陥ったような悲劇を、病気とだけに限定していないようです。

 ジャンは自分を喩えるのに「目」か「潜水服」かと考えて、
「潜水服」としました。
潜水服なら、いつの日か脱いで、
自由を取り戻せるかもしれないという思いがあったのでしょうか。
                          (☆☆☆)
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by am-bivalence | 2008-04-17 00:38 | 人間ドラマ | Comments(0)
 原作の持ち味を保った総集編  公式サイト


 私がいつも聞いているポッドキャスト番組の一つが「シネマpeople」
GAGAの映画情報番組なんですが、ゆるい雰囲気が好きで
映画番組というよりも、バラエティとして楽しんでます(^^)。
 その「シネP」で一押ししていた「ライラの冒険 黄金の羅針盤」。
(まあ、GAGAさん配給なんで)
三部作にするみたいだし、これは押さえておかなければいけないでしょう、
ということで観に行ってきました。

 ハリー・ポッター以降、ファンタジー文学や児童文学の映画化が
めっきり多くなりました。
(その分、「スター・ウォーズ」以降隆盛を誇っていたSF映画が、
全くと言っていいほど無くなってしまったのが寂しい限りですが。。。)
この「黄金の羅針盤」もそんなファンタジー文学の映画化。
 この原作、川嵜さんの御推薦もあって読んでみたんですが、
なかなか面白いんです。
普通の児童文学とはちょっと違う、
と言うより、児童文学の範疇を外れたような内容になっています。

 まず登場人物が児童文学とは思えない一癖ある者ばかり。
おてんばな主人公ライラ自身、嘘をつくのが得意というキャラですし、
その出生も複雑です。
ライラの両親は既成の道徳観などを超えた行動をする人たちで、
いわゆる"いい人”ではないのです。
なにしろ三部作のクライマックスで彼らが戦うのは"神”なのですから。
まあ、神学論に素粒子理論を混ぜたような世界観は、
キリスト教文化圏にない人間には興味が湧かないかも知れませんが。。。

 原作はともかく、肝心の映画はというと、
内容的には、原作にほぼ忠実です。
ただ、長いストーリーを映画の中に押し込んでいるので、
TVシリーズのダイジェスト版を観ているような印象でした。
細かい世界観の説明、
 ダイモンを掴まれると人は動けなくなるとか、
 極寒の地でも魔女は薄着で平気とか、
も省かれています。
原作を読んでいなくても映画としては分かりますが、
原作を読んでいれば、もう少し話の展開についていきやすいでしょう。

 一番意外だったのは、原作の第一部を最後までやらなかったこと。
第二部につながるラストに至る前に終わってしまったのは、
なぜでしょう。
 第二部以降の話の展開を原作からちょっとアレンジするのか、
第一部がコケたら、第二部以降が製作できなくなるので、
とりあえず完結させたのか、
単に上映時間が足りなかっただけなのか。。。
 気になるところです。

 それにしても、小説で想像していた世界が
映像で見られるのは楽しいものです。
よろいをまとったクマ達とか、人間について歩くダイモンたち、
飛行船の飛び交うロンドン、
アレシオ・メーターの針が動いて真実を示す様子、
実際に眼にするとわくわくします。
 美しいが冷酷でドSなコールター夫人にニコール・キッドマンなど、
キャスティングも悪くありません。
 第二部以降、出てくるミュレファ族もどんな姿に描かれるのか、
今から楽しみです。
      (☆☆)
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by am-bivalence | 2008-04-11 23:17 | ファンタジー | Comments(2)
「美しい友情物語」とは言えない、後味の悪さ 公式サイト

 この映画の原題は「The Kite Runner」。
主人公アミールの誠実な「友人」だったハッサンが、
アフガニスタンでの伝統的遊び、凧合戦で、
糸を切られて飛んでいく凧を追いかける名人だったことから付けられています。
 邦題の「君のためなら千回でも」はハッサンのセリフから引用しており、
原作の邦題も当初「カイト・ランナー」だったのが、映画公開にあわせ改題されたそうです。
 この邦題、映画を「美しい友情物語」と思わせるために付けられたようですが、
私には美しい物語のようには見えませんでした。

 確かに「友人」のハッサンは主人公に対し、
あくまで忠実であり、立派な少年です。
それに対して主人公アミールは自分勝手で、
彼の行動が理解できず、感情移入できなかったのです。

 アミールとハッサンは主人の息子と使用人の息子という関係。
ハッサン自身は否定しているものの、
ハッサンはアミールに召使のように従っていて、
大前提として、二人の間には主従関係が見え隠れします。
純粋な友人というより、主人と従者の信頼関係のように思えてしまうのです。

(以下、ネタバレ)

 ひどいのはアミールのハッサンに対する仕打ちで、
新年のお祝いで街を挙げての凧合戦の日、
ハッサンがアミールの命令を忠実に守ろうとして、
街角でいじめっ子にひどい暴力を受けてしまいます。
それをアミールは見て見ぬ振りをしてしまうのですが、
それだけなら勇気が無かったというだけで、
まだ同情の余地があります。
 しかし、アミールはその後ハッサンを、
あろうことか、いじめっ子に無抵抗だった弱いやつと軽蔑し、
嘘をついて親子共々家から追い出してしまうのです。
このアミールの心理は、私には理解できません。

 その後、内戦下のアフガンでハッサンが死んだことを知り、
生き残ったハッサンの息子を救出しようとするアミールの行動も、
ハッサンに対する"つぐない"から出た行動のようには思えないのです。
 なぜならアミールは父の友人から、ハッサンが自分と腹違いの兄弟で、
ハッサンの息子は主人公の甥に当たることを聞かされ、
やっと救出に行く決心をするからです。
 血縁でなければ、助けに行かなかったのか?
とつっこみたくなるところです。
それは命懸けで行くのですから、
「友情」だけではそこまで出来ないでしょうけど。。。

 ハッサンの息子はタリバンの虐待でひどいPTSDを負ってアメリカに来ます。
アミールがつぐないをするとしたら、これからでしょう。
                          (☆☆)
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by am-bivalence | 2008-04-04 00:30 | 人間ドラマ | Comments(0)