劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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<   2008年 08月 ( 3 )   > この月の画像一覧

screen80 ダークナイト

 これはもう正義と悪の戦いではない、理性と狂気の死闘  公式サイト
  
 「メメント」で、若手注目株とされたクリストファー・ノーラン監督、
やっと「メメント」に並ぶ代表作ができたようです。
シリーズ作の続編というものは、たいてい前作よりボルテージが落ちてしまうものですが、
「ダークナイト」は数少ない例外でした。
 バットマンをぎりぎりまで追いつめるジョーカーの狂気に、
最後まで目が離せません。

 前作以上にこだわったリアリティ描写は、
これまでのアメコミ映画の中では一番ではないでしょうか。
タイトルも、アメコミ映画のパターンであるヒーロー名を使うのではなく、
バットマンの二つ名というべき、「ダークナイト」だけにしたのも、
従来のアメコミ物とは一線を隔した現れのようです。

 ノーラン監督は毎回、心理的な要素をテーマにしてきますが、
今回出色なのは、ジョーカーの悪徳を通り越した狂気。
ヒース・レジャーが猫背と壊れたメイクで演じるジョーカーの病的なこと!
何をしでかすか分からないキャラクターは、
登場した途端、映画に異様な緊張感を生みます。
それは「レオン」でゲイリー・オールドマンが演じた悪徳刑事や、
「ノー・カントリー」ハビエル・バルデムの殺し屋を髣髴とさせる凄みがありました。
(以下ネタバレ)

 この狂気を伝染させようと、ジョーカーの仕掛けた罠は
精神を揺さぶる罠、"ジレンマ"でした。
バットマンが怒りと憎しみで理性を失いそうになる一歩手前で止まったのと対照的に、
"ホワイトナイト"デントは狂気に囚われてしまいます。
この辺り、フォースの暗黒面に落ちていくような(笑)。。。

 ただ最後の結末には、私はちょっと違和感を感じます。
影の戦士としての孤独感を表したかったのかもしれませんが、
大衆を愚とみなして事実を隠蔽し、英雄を仕立て上げるのは、
独裁者のような権力者のやる政治的手段。
影の存在とはいえ、ヒーローにはふさわしくないように感じてしまうのです。
 そういった面も含めて「ダークナイト」なのかもしれませんが。
                               (☆☆☆)
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by am-bivalence | 2008-08-28 23:44 | アクション | Comments(4)
screen76 西の魔女が死んだ  公式サイト

 盲導犬の育成にパピーウォーカーという制度があります。
生後2ヶ月の子犬を里親に預け、1才になるまで育ててもらう制度です。
この間は基本的な生活ルールを躾けるだけで、特殊な訓練をすることはありません。
可愛がられることが大切なのだそうです。
愛情を一杯受けて育つことが、人間に対する根本的信頼感を生み、
優秀な盲導犬になるといいます。

 人間も同じではないでしょうか。
厳しく躾けられることも時には必要ですが、
幼い頃に自分をそのまま肯定してくれ、愛情を与えてもらった体験があれば、
人に対する信頼感を奥底のところに持ち続けているように思うのです。
でも親には 社会に適応できるよう躾をする義務があるので、
無制限に愛情を与えることは出来ません。
それが出来る存在が、おじいさん、おばあさんではないでしょうか。

 「西の魔女が死んだ」の西の魔女:おばあちゃんは、
登校拒否になったまいを全面的に受け入れてくれます。
おばあちゃんは
 「まいのような子供が生まれてきてくれて、私は本当に嬉しい」
と、まいをあるがままに肯定してくれ、だめな子扱いすることは一度もありません。
母親がまいを「扱いづらい子」と、ネガティブに接してしまうのと対照的です。

 おばあちゃんが"魔女修行"として教えてくれたこと、
  *日常の雑事を面倒と思わずにこなす、
  *規則正しい生活をする、
  *よく体を動かす
といったことは、「脳が冴える15の習慣」によると、
脳科学的にも頭の働きを保つのに良いらしいです。
  *何でも自分で決める
というのも、ボケ防止などには大切らしいです。
まいの弱った心にもいい効果を与えたんでしょう。

 正直に言ってしまうとこの作品、映画としては凡庸です。
"予算をかけたTVドラマ"といった印象を拭えません。
 それでも映画を観たあと、自身を振り返って、
日々の雑用を億劫がらずに、怠惰な生活を改めねばと、
反省させられたのでした。
                   (☆☆☆)

(「おばあちゃんの家」のロケセットが09年年明けまで、ロケ地清里で公開されています。
劇中ラストで大きな意味を持つガラスに残されたメッセージも展示されています。
 映画を気に入った人、原作ファンは訪ねて見てはいかがでしょうか。)


screen78 百万円と苦虫女  公式サイト

 この映画、タイトルや予告編で「転々」や「めがね」のような
ゆるいコメディかほのぼのした癒し系映画と思って観ると、
肩透かしを喰らいます。
映画前半、コメディタッチの描写もありますが、
たなだゆき監督の描く世界観は、結構スパイシーで、
醒めた視点だからです。

 例えば、主人公鈴子がひょんなことから前科者になってしまう経緯は、
いい加減な友人のせいで面識もない男とルームメイトになってしまい、
つまらぬイザコザから突然、男に訴えられるというものです。
理不尽な仕打ちです。
 鈴子の弟も学校でいじめにあっていて、
ただじっと耐え続けるのですが、ついに反撃すると、
暴力沙汰を起こしたと大問題にされます。
これまた理不尽な仕打ちです。

 そんな不条理な世界に対する鈴子と弟の姿勢は対照的です。
弟はいじめに耐えながら共存しようとし、
主人公は人間関係が込み入ってくると、ひたすら逃避しようとします。
それでも二人とも世界から受ける仕打ちは理不尽なのです。

 劇中の
「自分探しじゃない、自分はここにいるから」
「親しい人には本当のことを話しちゃいけないと思ってた」
というような台詞も、醒めた視点の中にハッとさせられるものがあります。
 最後は、鈴子が生き方を少し変えていこうと希望を持たせるような展開ですが、
ラストの決着の付け方は、"現実はドラマのようにはいかないんだよ"と言っているようで、
やはり監督の浮かれていない醒めた見方を感じてしまうのでした。
                    (☆☆)
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by am-bivalence | 2008-08-20 00:00 | 人間ドラマ | Comments(0)
 仕事をするとはどういうことかを見せてくれる力作  公式サイト

 突然、目の前に大きな仕事が現れたら、人はどうなるか。
犠牲者数で史上最悪の航空機事故となった、
日航ジャンボ機墜落事故を追う地方新聞社の人間模様を描いた本作は、
普段、身を粉にして働いているビジネス・パーソンには
身につまされる映画ではないでしょうか。
 なにしろ、墜落事故報道の全権を任された主人公が遭遇する軋轢は
組織で働く者にとってリアルすぎるのです。

 販売局と編集局に象徴される組織間の対立、
過去の栄光で今の地位を維持している上司、
同期や上司から受ける妬み、上層部の派閥争いといった、人間関係、
上層部の都合で部下の功労をつぶされ、報いてやれない口惜しさ、
一人で重大な決定をしなければならない孤独、
おまけにありがちですが家庭内までギクシャクして、
親子関係もうまくいっていません。
キレイ事の「課長○耕作」とは違い、とても泥臭いです。
そして、それら一つ一つを"リアル”と感じてしまう自分の、
サラリーマンの業(笑)。
まあ、これほど露骨な職場はそうないと思いますけれど。

 ネガティブな面ばかりではありません。
スクープを追う仕事仲間との連帯感、
いい仕事には無言の賞賛をしてくれます。
対立していた上司と飲んで腹を割って話すことで
いつの間にか関係が改善していたり。。
そして、誰もが自分の仕事に対して責任感や自信と誇りを持っている。
ダーティな仕事のように描かれている販売局長までもが、です。
熱いです。
 これを観て目頭が熱くならないオヤジはいないでしょう(笑)

 また、「クライマーズ・ハイ」は
インテリやくざな新聞業界の実態も見せてくれます。
独裁的で秘書にセクハラしている社長、
新聞を売っているのは自分達で、
記事の内容など、どうでもよいと思っている販売局長など。。。
文化的なイメージのある新聞社のダークな面が興味深いです。

 クライマーズ・ハイとは、岩登りに集中するあまり、
異様な高揚状態になることで、
この時は恐怖を忘れ、自身の危険な状況も気にならなくなるそうです。
 原作を読んでいなかったので、
最初は、記者が墜落現場を探して、
がむしゃらに山中を彷徨する話なのかと思っていました。
 しかし、この物語の主人公悠木は日航事件全権ディスクなので、
彼自身は一度も現場に行かず、編集室で取材班にを指示し紙面を作っていくのみです。
そして部下がスクープネタを掴んだとき、
悠木は密かに部下に裏を取らせ、スクープを打とうと画策するのですが。。。
ここがなかなかスリリングで、
スクープの裏を取るとはこうするのかと、感心させられました。
 映画パンフにはクライマーズ・ハイについて、こんなセリフが載っています。
  「解けた時が怖いんです。
  溜め込んだ恐怖心が一気に噴出して、一歩も動けなくなる。」
このセリフと映画クライマックスで、タイトルの意味を納得できた気がします。
                        (☆☆☆)
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by am-bivalence | 2008-08-03 20:13 | 人間ドラマ | Comments(2)