劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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SCREEN120 木を植えた男

 ”木を植えること”が意味するもの  参照サイト

 7/2~10/2の間、東京都現代美術館でカナダ在住のイラストレーターでアニメーション作家のフレデリック・バック氏の作品を展示するフレデリック・バック展が開かれています。
 これに合わせ都心でフレデリック・バック氏のアニメが上映されているのを知り、観に行ってきました。
上映作品は「木を植えた男」「トゥ・リアン」「大いなる河の流れ」「クラック!」の4本。
日によっては特別にフレデリック・バック氏の全9作品を観ることができます。

 「木を植えた男」は1987年制作のアニメーション映画。
一人の羊飼いが人知れず黙々と荒野に木を植え続け、
蘇った森に生き物が戻り、世界が再生していくという感動作です。

 バック氏のアニメは、つや消しフィルムに色鉛筆で直接描くという独特の技法で、
その画面は、まさに動くパステル画といった雰囲気。
「木を植えた男」は後半森が蘇生していくにつれ、色彩が豊かになっていきます。
手書きで動く絵の揺らぎが、そのまま木々の葉がそよぐ煌めきとなって美しく表現されていたりします。
 フレデリック・バック展ではその原画が展示されていますが、
私が驚いたのは、その原画の画面サイズがはがきほどの大きさしかなく、
そこに色鉛筆で非常に緻密に絵が描かれていることでした。
バック氏は作品によってタッチを変えていますが、
「大いなる河の流れ」では写実的な生物をはがきサイズの画面に精緻に描いています。
これがアニメーションのたった1コマだと思うと、バック氏の画力、
作業の膨大さ、早さに感嘆させられます。
(しかも「大いなる~」が制作されたのはバック氏が65~69歳の時です)

 バック氏のアニメは何かしら文明批評や環境保護の精神を含んでいます。
「木を植えた男」はジャン・ジオノの原作を映画化したものですが、
これにもバック氏のその精神は反映しています。
バック氏がこの原作に強く惹かれたのも、木を植えるという行為が
環境問題と大きく結び付いていたからでしょう。
 ただジャン・ジオノの原作は環境問題だけでなく、
いろいろなテーマを含んでいるようです。
私にはこの木を植えるという行為は単に自然保護を示すだけでなく、
理想の政治というものを暗喩しているように思えます。
社会環境を整備することで人の住みやすい社会が生まれ、
人々が集い幸福になっていく。。。
それが私利私欲でなく、代償を求めずに行われるのです。
 主人公が羊飼いであるのも、暗示的です。
キリスト教社会では羊飼いは迷える羊を導く救世主のシンボル、
転じて優れた指導者の象徴でもあるからです。
                     (☆☆☆☆☆)
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by am-bivalence | 2011-08-05 23:04 | アニメ | Comments(0)