劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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 年末、HDDビデオの空きを増やすため録画したまま放っていた「ゴーイング マイ ホーム」を観てから消そうとしたら、ハマってしまいました。

 「ゴーイング マイ ホーム」は2012年10月から放送されたTVドラマ。
詳細はウキペディア番組HPに譲るとして、簡単にあらすじを説明しますと、

 坪井 良多(阿部寛)はCMディレクターとして日々顧客の御機嫌を取りながら忙しく過ごすサラリーマン。 妻沙江(山口智子)は有名な人気フードスタイリストで、小学生の一人娘萌江(蒔田彩珠)がいる。
 ある日萌江がうちには小人のフロドがいると作文に書き、沙江が学校に呼び出しを受ける。 一方、良多は東京で暮らしているはずの父栄輔(夏八木勲)が長野で意識不明となったと知らせを受け、長野の病院に駆けつける。病院で良多は父を見舞う下島 菜穂(宮﨑あおい)に出会い、父は故郷の長野で"クーナ"という伝説の小人を探していたことを知る。 森に住むクーナは死者と生者を繋ぐ能力があるという。 最初は笑っていた良多も森でクーナの帽子を見つけ、萌江とともに菜穂のクーナ探しに惹かれていく。。。

 このドラマは「誰も知らない」「歩いても歩いても」の是枝裕和監督が初めてTVドラマを手掛けたこと、
長い間引退同然だった山口智子さんが連ドラに復帰したことで話題になりましたが、
視聴率的には振るいませんでした。
 私も是枝監督ということで放送時1,2話観たのですが、TVドラマとしてはテンポがゆっくりで、何が本筋かよく分からない展開に観なくなり放ったらかしになっていました。 視聴率が悪かったのも、その辺りに原因があったようです。
いつまで経ってもドラマチックなことが起こらないのんびりした雰囲気、
重要な事をあえて強調せず視聴者に集中力を要する構成が、
2時間の映画ならともかく週1回放送される連続ドラマでは視聴者の関心を繋ぎとめられなかったのでしょう。
 でも全編を通して観ると、その点こそがこのドラマの面白いところでした。

 このドラマでキーとなるテーマは登場人物たちが何度も口にする
「この世界は目に見える物だけできているわけではない」
ということ。
 その言葉のようにドラマでは疑問が出てきても最初から真実は提示されず、観ているうちに次第に事実関係が分かってきます。
 なぜ萌江は学校でいろいろ問題を起こすのか、
 なぜ栄輔や萌江はクーナを探すのか、
 菜穂、治(西田敏行)親子はなぜ不仲なのか、
 幼なじみの栄輔、久実、治の間に昔何があったのか、、、
随所に伏線があって、何話か後にそれが分かったりします。
しかし全てが最後に明らかになるわけでもありません。
大切なものは表に現れず、真実は隠れてしまうもの、なんです。

 目に見えない大切なものというと"愛"とか"夢"とか"希望"を連想しますが、
劇中のある登場人物が目に見えないものとして"悪意"とか"失望"とかを上げて、はっとさせられます。
確かに世界は”敵意"とか"憎悪"とか目に見えない悲しいものにも動かされている。。。

 映画にはない連続ドラマの強みを活かし、登場人物それぞれのキャラクターが細かく描写され日常生活を丹念に追っているのも面白いところ。
 またドラマの根底に家族の繋がりがあるのが、以降の是枝監督作品「そして父になる」「海街diary」にも通じています。(「そして父になる」の撮影はこのドラマの前だったとか。 番組HPの第7話あらすじには家族について触れている部分があるのですが、本放送には出てきません。 おそらく何らかの理由でカットされたようです。 「そして父になる」にも出演している夏八木勲さんはゴーイング~撮影中にも体調がすぐれず、連ドラとしてはこれが遺作となりました。)
 一点残念なのは萌江が「ホビットの冒険」を読んで小人をフロドと呼ぶようになってますが、ホビットの冒険に出てくるのはビルボ。 是枝監督、「ホビットの冒険」読んでないな(笑)。

 ともあれ、ゴンチチの音楽をバックに、良多と家族が交わすゆるい会話にクスクス笑うのも良し、
ドラマの裏にある世界に想像を巡らすも良し、
沙江の作る美味しそうな料理を楽しむも良し、
「ゴーイング マイ ホーム」は幾重にも楽しめる良質なドラマ、もう少し評価されてもいい悲運のドラマなのでした。
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# by am-bivalence | 2016-01-10 00:05 | 人間ドラマ | Comments(0)
「ゴジラ」に垣間見る戦争の影 公式サイト

 ハリウッド版「ゴジラ」公開に先立ち、オリジナルの「ゴジラ」デジタルリマスター版が公開されました。
リメイク版「ゴジラ」にこんな副産物が付いてくるなんて、
私としては新作公開よりもこちらの方がかなり嬉しい(笑)。
10代の頃にTVでしか観たことがなかった伝説的作品が映画館の大画面で観られるのですから。
しかもゴジラと因縁深い有楽町でもやっている。
なので観に行ってきました、近場でなくシャンテまで。

 映画が始まるとオープニングにあのテーマ曲が。
「ゴジラ」が甦っている!とワクワク感が高まります。
デジタルリマスターされているだけあって傷が無いのはもちろん、音声も明瞭な気がします。
 でもねえ。。。1954年公開の古典的作品、やはり時代を感じてしまいます。
子供の頃喜んで観ていた「大怪獣ガメラ」も今見直すとチープな作りにツッコミ所満載だったりするように、「ゴジラ」も今見るとオイオイと突っ込みたくなります。当時としては大人の観客も意識した怪獣映画としては高い年齢層を狙ったものだったのですが。
伝説は伝説のまま、そっとしておいたほうが良かったかも(笑)。

 面白いのは志村喬演じる山根博士。いち早くゴジラを調査しその脅威を警告して、
一見良識的科学者のように見える山根博士ですが、
ゴジラの殺害には反対し、捕獲して研究することに固執します。
あの狂暴で放射能まみれのゴジラをですよ。
 この辺り、ゴジラを倒すオキシジェンデストロイヤーを造った芹沢博士よりも
山根博士のほうにマッド・サイエンティストぶりを感じてしまいます。
逆に、意図せずして自分の生み出したオキシジェンデストロイヤーを畏怖し苦悩する芹沢に、とてもヒューマニズムを感じます。

 今「ゴジラ」を観直してみて気付かされるのは、映画の背景に見える戦争の影です。
「ゴジラ」公開は1954年、第二次大戦終結から9年しか経っていません。
 ゴジラが首都圏を襲う経路は、実はB-29の空襲経路だそうです。
ゴジラの背後で東京の街が火の海と化し、病院が野戦病院のように怪我人で溢れる様は、当時の人にはとてもリアリティを持って恐怖と不安を呼び覚ましたのではないでしょうか。ちょうど3.11以降、我々が地震や津波に対して持つように。
いや実際に戦争を経験し命を危険に曝した世代には、それ以上だったでしょう。
 芹沢博士も戦争で片目を失い顔に傷を残した設定になっています。
戦争の傷を忘れるため研究に没頭した成果がオキシジェンデストロイヤーという大量破壊兵器となってしまう悪夢。水爆という大量破壊兵器の申し子であるゴジラに対抗するには大量破壊兵器しかないという矛盾。
 芹沢が苦しみ最後にあのような行動を取るのを、子供の頃私は理解できなかったのですが、今は理解できる気がするのでした。     (☆☆)
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# by am-bivalence | 2014-06-22 01:12 | SF | Comments(0)