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劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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screen6 ダーウィンの悪夢

 資本主義経済の歪みを提示しようとするが、
          イエロージャーナリズムでは?
  公式ホームページ

 西洋資本主義は、途上国をまず自分達の
経済機構の最下層に組み入れ、搾取していきます。
それが端的に表れているのが為替相場だと思います。
途上国の通貨レートは先進諸国の通貨に比べ極端に低く、
先進諸国の平均月収が、為替で換算すると途上国の年収になったりします。
豊かになりたければ這い上がって来いというわけです。

 この構図は今に始まったことではなく、
大航海時代、西洋人が南北アメリカ大陸に進出し、
ネイティブアメリカンなどから搾取した頃からずっと続いています。
これを不条理と思う人間がテロに向かったりするのではないでしょうか。

 ビクトリア湖のカワスズメがナイルパーチによって
壊滅的打撃を受けているのはよく知られています。
 本作はナイルパーチをキーワードにしていますが、
環境問題を取り上げているわけではありません。
むしろ、魚の生態系などはどうでもいいようで、
追っているのは、主にアフリカ社会下層で虐げられている人々です。
そしてそれら惨状とナイルパーチの輸出産業を何とか結び付けようとします。
また、魚の輸出と武器輸入の関連性にもこだわり続けます。
アフリカの貧困の根っこに、日本も含めた先進諸国との経済的力関係を垣間見て、
その責任を問おうとしているのです。

 ただ、これらを追求したい姿勢は分かりますが、明確な関連を示しきれないため、
それが成功しているとは言い難いのが、この映画の悲しいところです。
ナイルパーチのボイコット運動というおかしなリアクションが起こったのも、
そういった点がうまく伝わらなかったからではないでしょうか。
                                   (☆)


 参照書籍:「カナダ先住民デネーの世界―インディアン社会の変動」 新保 満 明石書店
    著者が、カナダ北西準州の先住民を実地に調査・聞き取りした、
   先住民の社会・習慣の変遷をまとめたもの。
   国家など必要なかった西欧人進入前の先住民の暮らしぶりと、
   毛皮商人の侵入により、未知の病気が流行ったり、
   経済格差が生まれていく様などが具体的に語られています。
    グローバリゼーションの原型がここにもあります。

 参照映画:「ナイロビの蜂」 フェルナンド・メイレレス監督 2005年
        「ロード・オブ・ウォー」 アンドリュー・ニコル監督 2005年
    先進諸国にアフリカが搾取される構図は「ナイロビの蜂」、
   武器輸出入と先進国の関連は「ロード・オブ・ウォー」がよく描けています。
   問題を知らしめるのに、フィクションのほうが秀逸なのが残念です。
    がんばれドキュメンタリー!

*補足(以下ネタバレ)
# by am-bivalence | 2007-01-21 15:46 | ドキュメンタリー | Comments(0)
  しゃれたセリフと、プロットをパズル感覚で追うのは楽しいが、
 それって必要?
  公式ホームページ

 まずこの映画、映画を見る前にパンフレットを読んではいけません。
ストーリーが結末まで全部書いてあります。
懇切丁寧にも、人物相関図がネタバレ含めて載っています。
上映前にパンフレットに目を通す人もいるでしょうに、
ツイスト(どんでん返し)映画でここまでする必要があったのでしょうか。

 それはさておき、最近の映画としては珍しく、
やたらセリフや会話に凝っている映画です。
ジョシュとルーシーの会話だけでも楽しませてくれます。
ただ、スタイリッシュなのは"映像"というより、"セット"じゃないでしょうか。
基本はギャングのお話なので、バイオレンスシーンも目につきます。

 冒頭から複線だらけで、パズルとしては凝った造りです。
しかし後からストーリーをよくよく追ってみると
ここまで手の込んだ計略をする必要が見当たらないのです。
あえて言ってしまえば、どんでん返しのため、でしょうか。
計画に20年掛かった理由もはっきりしません。
ラストもハッピーエンドにして見せる取って付けたやり方に思えました。

 結局、パンフレットからプロットまで、
ここまでやる必要があったのか疑問の残った映画なのでした。
                                   (☆☆)

参照映画:「オールドボーイ」 パク・チャヌク監督 2004年
   裏社会を舞台にしている、タランティーノ好みのバイオレンス描写、
  長期に渡る陰謀計画、ラストのどんでん返しなど、共通項が幾つかあります。
  おしゃれさは「ラッキーナンバー7」が上ですが、
  こちらは計画に時間が掛かるのに必然性がありました。
# by am-bivalence | 2007-01-20 10:45 | サスペンス・スリラー | Comments(0)