劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

タグ:ほのぼの ( 17 ) タグの人気記事

 年末、HDDビデオの空きを増やすため録画したまま放っていた「ゴーイング マイ ホーム」を観てから消そうとしたら、ハマってしまいました。

 「ゴーイング マイ ホーム」は2012年10月から放送されたTVドラマ。
詳細はウキペディア番組HPに譲るとして、簡単にあらすじを説明しますと、

 坪井 良多(阿部寛)はCMディレクターとして日々顧客の御機嫌を取りながら忙しく過ごすサラリーマン。 妻沙江(山口智子)は有名な人気フードスタイリストで、小学生の一人娘萌江(蒔田彩珠)がいる。
 ある日萌江がうちには小人のフロドがいると作文に書き、沙江が学校に呼び出しを受ける。 一方、良多は東京で暮らしているはずの父栄輔(夏八木勲)が長野で意識不明となったと知らせを受け、長野の病院に駆けつける。病院で良多は父を見舞う下島 菜穂(宮﨑あおい)に出会い、父は故郷の長野で"クーナ"という伝説の小人を探していたことを知る。 森に住むクーナは死者と生者を繋ぐ能力があるという。 最初は笑っていた良多も森でクーナの帽子を見つけ、萌江とともに菜穂のクーナ探しに惹かれていく。。。

 このドラマは「誰も知らない」「歩いても歩いても」の是枝裕和監督が初めてTVドラマを手掛けたこと、
長い間引退同然だった山口智子さんが連ドラに復帰したことで話題になりましたが、
視聴率的には振るいませんでした。
 私も是枝監督ということで放送時1,2話観たのですが、TVドラマとしてはテンポがゆっくりで、何が本筋かよく分からない展開に観なくなり放ったらかしになっていました。 視聴率が悪かったのも、その辺りに原因があったようです。
いつまで経ってもドラマチックなことが起こらないのんびりした雰囲気、
重要な事をあえて強調せず視聴者に集中力を要する構成が、
2時間の映画ならともかく週1回放送される連続ドラマでは視聴者の関心を繋ぎとめられなかったのでしょう。
 でも全編を通して観ると、その点こそがこのドラマの面白いところでした。

 このドラマでキーとなるテーマは登場人物たちが何度も口にする
「この世界は目に見える物だけできているわけではない」
ということ。
 その言葉のようにドラマでは疑問が出てきても最初から真実は提示されず、観ているうちに次第に事実関係が分かってきます。
 なぜ萌江は学校でいろいろ問題を起こすのか、
 なぜ栄輔や萌江はクーナを探すのか、
 菜穂、治(西田敏行)親子はなぜ不仲なのか、
 幼なじみの栄輔、久実、治の間に昔何があったのか、、、
随所に伏線があって、何話か後にそれが分かったりします。
しかし全てが最後に明らかになるわけでもありません。
大切なものは表に現れず、真実は隠れてしまうもの、なんです。

 目に見えない大切なものというと"愛"とか"夢"とか"希望"を連想しますが、
劇中のある登場人物が目に見えないものとして"悪意"とか"失望"とかを上げて、はっとさせられます。
確かに世界は”敵意"とか"憎悪"とか目に見えない悲しいものにも動かされている。。。

 映画にはない連続ドラマの強みを活かし、登場人物それぞれのキャラクターが細かく描写され日常生活を丹念に追っているのも面白いところ。
 またドラマの根底に家族の繋がりがあるのが、以降の是枝監督作品「そして父になる」「海街diary」にも通じています。(「そして父になる」の撮影はこのドラマの前だったとか。 番組HPの第7話あらすじには家族について触れている部分があるのですが、本放送には出てきません。 おそらく何らかの理由でカットされたようです。 「そして父になる」にも出演している夏八木勲さんはゴーイング~撮影中にも体調がすぐれず、連ドラとしてはこれが遺作となりました。)
 一点残念なのは萌江が「ホビットの冒険」を読んで小人をフロドと呼ぶようになってますが、ホビットの冒険に出てくるのはビルボ。 是枝監督、「ホビットの冒険」読んでないな(笑)。

 ともあれ、ゴンチチの音楽をバックに、良多と家族が交わすゆるい会話にクスクス笑うのも良し、
ドラマの裏にある世界に想像を巡らすも良し、
沙江の作る美味しそうな料理を楽しむも良し、
「ゴーイング マイ ホーム」は幾重にも楽しめる良質なドラマ、もう少し評価されてもいい悲運のドラマなのでした。
[PR]
by am-bivalence | 2016-01-10 00:05 | 人間ドラマ | Comments(0)

SCREEN123 ステキな金縛り

 三谷幸喜の最高傑作!?  公式サイト

 ここのところ私がよく利用するシネコン・TOHOシネマズは
シネマイレージ会員というものがあります。
会員になると映画6本観賞で1本無料で観られるほか、
映画の上映時間1分につき、シネマイレージなるものが1マイルつきます。
このマイル、6000マイル貯めると、1ヶ月間無料で好きなだけ映画が観られるという
(幾つか制約あり、写真参照)
映画ファンには夢のようなフリーパスポートが貰えるのですが、
これだけ貯めるには2時間の映画なら50本以上観る必要があります。
そんな物好き、そうはいないだろうと思っていましたが、
いました、ここに。
映画祭に通い続けたおかげで、1年足らずで6000マイル達成してしまいました。
 と言うわけで、発行してもらったパスポートがこれ。

f0126707_21311671.jpg

パスポートの有効な1ヶ月間、休日になると映画を梯子する日々が続きました。
あ~、忙しかった。

 「ステキな金縛り」もフリーパスポートで観てました。
しかも2回。2度も観たのは1回目が隣の客のマナーが悪くて、
印象が悪くなってしまったのと、やっぱり面白かったから。
 
 「ステキな金縛り」、封切前はタイトルからして面白くなさそう(失礼!)で
期待してなかったのですが、
実際観てみると、これがどうして、予想以上の出来でした。
これまでの三谷作品の中で一番面白いのではないのでしょうか。
何より笑いだけでなく、最後に泣かせるところがあってしっかり感動させてくれる。
今までの三谷作品と一線を画しているように思います。
(近いのは「笑の大学」かな?)

 井上ひさし氏の作品にも通じるのですが、
三谷幸喜氏のコメディは、どこかロジカルなところがあります。
論理的に議論を進める法廷ものは、三谷氏にはうってつけだったのでしょう。
今回も幽霊が見える人には、"3つの共通点"があるとか、
幽霊は現世では"ある事"ぐらいしかできないとか、制約があって
それが笑いを生んだり、泣かせる伏線になっていたりしてます。

ただ2回も観ると、展開が強引なところが4ヵ所ほどあるのに気付いて、
脚本は意外と苦労したんだなあと思ったりします。

 笑いは免疫力を高め、健康に良いそうです。
明るく、ハッピーエンドでスカッとできる映画を観るのも、
きっと体にも良いんじゃないでしょうか。
                 (☆☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2011-12-23 21:35 | コメディ | Comments(2)
 前半、親子の愛情あふれる触れ合いが微笑ましく、痛ましい 公式サイト

 2005年に自殺したフランスの映画プロデューサー、アンベール・バルザンをモデルに、
父親と娘たちとの交流、残された家族の立ち直る姿を描いた作品。
 映画の前半はプロデューサーの仕事に忙殺されながらも、
家族との時間を大切にしている父親グレゴワールを中心に展開します。
下の娘2人が「劇」として見せるニュースキャスターごっこを家族みんなで楽しんだり、
旅行先で訪れた教会の天井画を娘達にやさしく説明したり、
何気ない親子の触れ合いが愛情込めて描かれていて微笑ましく、
後半の展開を知っているだけにちょっと痛ましい気持ちになります。
 こういった描写があるから後半が生きてくるんですが。

 苦しい財政事情をなんとかやりくりして自転車操業していた映画プロダクションが、
金銭感覚に疎い映画監督が小切手を現金化してしまったことをきっかけに、
資金繰りが急速に悪化します。
スタッフとも険悪な雰囲気になったりし孤立していったグレゴワールは、
ついに自ら命を絶ちます。
 このあたり、ちょっと唐突で違和感を感じました。
自ら死を選ぶ人というのは、もっと前から「死」という選択肢のカードを胸の奥に隠し持っていて、いつ切ろうか逡巡しているような気がするからです。人には決して明かさずに。
もっとも、資金繰りが悪化するずっと前に冗談めかして
「資金難になったら自殺でもするか」というシーンはありましたけど。
 モデルになったアンベール・バルザン氏は普段は話し好きで社交的でしたが、
亡くなる5カ月ほど前から鬱を患っていたそうです。

 残された妻シルヴィアと3人の娘は嘆き悲しみますが、
プロダクションには何百万ユーロの負債と未完成の映画が残されていました。
悲しむ間もなくシルヴィアは借金を何とかして着手中の映画を完成させようと奔走します。
それがグレゴワールの遺志だと信じての行動です。
 気丈にもシルヴィアは残された遺族が一度は口にするであろう疑問を言いません。
それを率直に問うのが子供たちです。
「なぜ?」「どうして私達を残して?」

 お父さんは私達のこと思ってくれてなかったの?と言う幼い子に、
グレゴワールの友人はこう答えます。
「いつも君たちのことを考えていたよ。でも一瞬忘れてしまったんだ。」
ごまかさない率直な物言いは、彼女たちが事実をゆっくり受け入れていくしかないと思ってのことでしょうか。

 年長の長女は事情が分かるだけにもっと複雑で、
ふとしたことから父に隠し子がいた事を知りショックを受けます。
その事で父をなじる長女に対し、母は
「お父さんとの楽しかった日々を思い出して。父親の愛の深さを忘れないで。」
と毅然と言います。
 う~ん、確かにいい父親ではありましたが、
済んだ事とは言え浮気していた夫をそう擁護できるなんて、
父よりも母の愛の深さ、度量の大きさを感じてしまいます。
続けて母は
「死は人生の否定ではない。死は人生の数ある出来事のひとつ。」
とも言うのです。
 考えさせられる言葉ですが、この強さはどこから来るんでしょう。
気が強いと噂に聞くパリジェンヌの持つ強さなのか、
まだ20代の女性監督の理想像なのか。。。
                    (☆☆
[PR]
by am-bivalence | 2010-07-07 00:07 | 人間ドラマ | Comments(0)

screen77 崖の上のポニョ

アニメーター宮崎駿のこだわりが伝わる力作  公式サイト

 以前一度だけ三鷹の森ジブリ美術館に行ったことがあるんですが、
ここではジブリ・オリジナルの短編アニメを1回観せてくれます。
その時観たのが 中村季枝子「いやいやえん」を原作にした「くじらとり」。
 保育園児達が遊具の積み木で海に出て、鯨を捕るという
ごっこ遊びの空想をアニメにしているんですが、
これがほのぼのしていて、面白かったんです。
 ここのオリジナル・アニメは定期的に入れ替えしていて、他にもあるので、
ジブリ美術館に行けない人のためにも、まとめてDVDにして欲しいなあ、
と思うのですが。。。
おとなの事情で、しないだろうなあ。
 この「くじらとり」のエンドタイトルでは、スタッフ名をあいうえお順で並べています。
「崖の上のポニョ」のエンドタイトルでも全く同じスタイルを取っているのを観た時、
ははぁ、と納得しました。
 宮崎監督は、あの短編のような映画を劇場でやりたかったんだなと。

 「崖の上のポニョ」、某口コミサイトでは評判悪いですが、
私はこういうアニメ、「あり」だと思います。
アニメはもともと子供が観るものですよ。
いいおとなが、子供向けのアニメを観て文句を言っちゃいけません。
 そりゃあ、
よくわからないご都合主義的にも見えるハッピーエンドだとか、
前半の嵐の場面のアップテンポに比べ、
後半は水に沈んだ街の場面が静かすぎて退屈だとか、
自然描写を大切にしているのに、
海水魚をいきなり真水に入れるとは何事だとか、
(海水は塩水であると言う感覚が、全体に欠如しているんですよねえ。。。)
半魚人のポニョがかわいくないとか、
いろいろ欠点は挙げられますよ。
 でもアニメーションはいい仕事してるじゃあないですか。

 モブシーンが得意という宮崎監督、
わんさと出てくるクラゲや魚の大群、ポニョの妹達、
よく動いてるじゃないですか。
古典的なメタモルフォーゼもアニメーションらしくて、かえって新鮮です。
ポニョが波の上を疾走するシーンは圧巻で、観ていて思わず、
「名場面だ。。。」とつぶやいてしまいました。

 今の時代に子供に安心して見せられる映画がどれ位あるでしょう。
宮崎アニメをこれまでのジブリブランドとして見ていた人には
違和感を覚えるかもしれませんが、これぞアニメーション。
絵本のようなこの映画を商業ベースで成功させたのは並大抵ではないと思うのです。
                                   (☆☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2008-12-06 00:24 | アニメ | Comments(2)

screen95 かもめ食堂

 ギスギスした心をほぐして、ほんのり幸せにしてくれる映画  公式サイト

 以前DVDを観てintermisson5で紹介したんですが、
近所のシネコンでアンコール上映していたのを幸い(しかも500円!)、
大スクリーンで観てきました。

 たまに、2度観ると、最初に観た印象と違ってしまう映画があるんですが、
この映画の印象は2度目でも以前書いた通り。
見直しても、その良さは変わることがありませんでした。
ストーリーが分かっているぶん、安心してゆったりと観ていられました。
最初から最後まで、ずっと微笑みながら観られる映画はなかなか無いです。

料理も相変わらずおいしそう。
あ、この雰囲気は「超熟」のCMでもおなじみになりました。

 今回再見して、もたいまさこさんが映画の雰囲気作りに
かなり貢献していることに気付きました。
見た目は普通のおばさんなのに、どことなくエキセントリック。
ゆっくり丁寧だけど、明瞭な台詞。
この映画の、のほほんとしたカラーに良く合っています。

 でも マサコさんが空港失くしてしまった荷物って、
何の象徴なんですかね。
 重要なものがあったんでしょうと聞かれても、
重要だったのかどうか、思い出せない。
最後に失くしたトランクが出てきて、開けてみると、
中にあったのは、いっぱいの森で採ったキノコ!
 どういう意味?
       (☆☆☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2008-12-03 21:26 | ハートウォーミング | Comments(0)
 素朴な映画作りへの愛情が感じられるコメディ 公式サイト

 中学、高校の文化祭って、どこかしらのグループが
自主制作映画を上映してませんでしたか?
素人の学生が作る映画は、お金の無い分 知恵を絞って作ってあって、
予想外に面白いことがあります。
 私が中学の時、隣のクラスが「桃太郎」を8mmで"映画化"して上映したんですが、
鬼の住む宮殿と称して小田急・片瀬江ノ島駅を登場させ、
大ウケしていました。(ローカル・ネタですみません)
 「僕らのミライへ逆回転」を観ていたら、そんなことを思い出しました。

 「エターナル・サンシャイン」で斬新な映像表現を見せてくれたゴンドリー監督、
今回は映画作りの原点に返ったように、
アナクロな手法の映像表現を楽しもうというコンセプトです。
 磁気を帯びた男がレンタル・ビデオ屋のテープを消してしまい、
自分達で撮り直すってムリクリな設定も、
つまりは、手作り映画をやってみたかったから。
 宮崎駿監督は「崖の上のポニョ」で、
CG映像は面白くないと、手描きにこだわりましたが、
ゴンドリー監督も映像に個性が感じられなくなるCGに
飽きてしまったんでしょうかね。

 だから見どころは、手軽に映画のシーンを再現する工夫。
「ゴーストバスターズ」のすべり棒を滑り降り出動するシーンを
階段の手すりを使って代用したり、
古いフィルムのキズやちらつきを
換気扇と針金をカメラの前に置いて再現したり、
とてもアナログで手作り感いっぱいです。
できた映像はチープでも、映画作りを面白がっている雰囲気が伝わります。

 勝手リメイクを聞きつけて、著作権協会が法外な罰金を請求したり、
最新のDVDレンタル店には映画ジャンルが
「アクション」と「コメディ」の二つだけだったり、
著作権にやたらうるさく、出てくる新作はアクションかコメディばかりという
今のアメリカ映画への皮肉もちょっと効いています。

 ラストは下町人情も絡め、
「ニューシネマパラダイス」を彷彿とさせるようなシーンで、
監督の映画製作に対する愛情が溢れた一本でした。
                       (☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2008-11-28 19:33 | コメディ | Comments(0)

screen89 おくりびと

 抑え目の演出が好感持てる良品  公式サイト

 今は自動車道ができて無くなってしまいましたが、
昔、母の実家には、裏の畑に先祖代々の墓地があって、
盆の法事などは、裏の畑まで親族一同が歩いていって焼香していました。
居間には仏壇がって、鴨居には亡くなった祖父、祖母の遺影が飾ってありました。
昔の日本には「死」は日常生活と裏腹にあって、溶け込んでいたように思います。

 でも現代の都市はどうでしょうか。
近所に葬斎場の計画が持ち上がると、周辺住民が猛反対したりします。
今の街は 快楽原則で出来ていて、
「死」のように不安・不快を感じさせるものは、慎重に拭い去られ、
極力排除しているように思うのです。

 「おくりびと」では納棺師という職業に就いた主人公が
その職業が原因で蔑まれたり、妻に出て行かれる描写があります。
 "人の不幸を商売にしている"、と思われるからかもしれませんが、
職業への偏見が生まれる一因には、現代の日常が快適優先で出来ていて、
「死」は忌むべきものであり、無意識に避けていることにもあるような気がしてなりません。
「メメント・モリ」って言葉が古代からあるように、誰でもいつかは死んじゃうんですけど。

 納棺師という職業があるとは知りませんでしたが、
映画パンフレットによると、どんな葬儀にでも存在するわけではなく、
地域、宗派によって遺体の扱いはいろいろなようです。
葬儀社によっては納棺の儀式がないような場合もあるとか。

 この映画を観ると 納棺師とは、
死者へ敬意を払い、遺体を辱めずに尊厳を守って、
厳かに親しい人との別れを演出する職業のように思えてきます。
まさに「安らかな旅立ちのお手伝い」。
 実際は主人公の最初の仕事のように、いろいろな遺体を扱うのでしょうから、
かなり泥臭い、大変な仕事なんでしょうけれども。

 映画としての「おくりびと」は、観ていると、
「お葬式」、「マルサの女」といった、かつての伊丹映画や、
「それでも僕はやってない」の周防監督の映画を連想させます。
知られざる仕事にスポットを当て、ハウツー的なものを盛り込んだ点です。
食事のシーンなどは、「ひまわり」での描写を思い出します。

 分かりやすいストーリーで、
伏線からこうなるんじゃないかという期待通りに展開するドラマは、
登場人物たちの感情の変化もほぼ自然な感じで、
すんなり受け入れられました。
 葬式という愁嘆場が舞台になるので、深刻になりがちな部分を
ユーモアで和らげています。
そして、この映画は基本的にハッピーエンドで、完全な悪人が出てきません。
 分りやすいプロットとユーモア、見終わってほっとしたような気持ちになれる、
そんな点が海外でも受け入れられたんじゃないでしょうか。

映画の中で
「生き物は生き物を食って生きている」
という台詞がありました。
 これって、もっと言ってしまえば、
”全ての生き物はいつか食べられるために生きている”
じゃないでしょうか。
 食物連鎖の頂点に立つとされる肉食獣も、
死ねばウジや微生物の餌になって分解され、次の命になります。
人が火葬されても、できた二酸化炭素はいつか植物に取り込まれ、
生命のサイクルに戻ります。
 我々が自分自身と思っている肉体さえも、
いつかは分解され、別のものになっていくのです。
 この世界にいつまでも自分のものというものは一つもなく、
全ては借り物なんです。

そう考えると、いろいろな物を所有しようとするって、
ばかばかしく思えないでしょうか?
                (☆☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2008-11-10 21:33 | 人間ドラマ | Comments(0)
 三谷監督、最高傑作?  公式サイト

 コメディ映画を劇場で観るのは楽しいです。
どっと笑いが起こる雰囲気は、
野球を観に行ってヒットが出た時に湧き上がる歓声に似ていて、
みんなで楽しんでいる一体感を味わえます。

 三谷幸喜脚本のコメディは嫌いじゃないです。
監督作品の「ラヂオの時間」、「みんなの家」、「有頂天ホテル」
みんな観てますし(主にTVですが)、脚本の「笑いの大学」も、観に行きました。
シュチュエーション・コメディにこだわった脚本は、日本では稀有の存在です。
 でも、この「ザ・マジックアワー」を最高傑作と宣伝しちゃっていいんですかねえ。
あまり大見得切って失望させると、次回作で困ると思うんですけど。。。
 まあ、コメディですから。しゃれで受け流しておきましょう。

 ラジオドラマ、建築、ホテルとそれぞれの裏側を題材にしてきた三谷監督。
今回は映画なんですが、映画制作の裏側というより、
監督の好きな洋画のオマージュを作ってしまった感じです。
舞台の雰囲気は60~70年代の洋画そのもの、
「お熱いのがお好き」の名セリフがさりげなく言われたりします。
前作「有頂天ホテル」のキャラが出てくるのもご愛嬌。
出演者が豪華なのも特筆です。
 でも、ギャングのボスから逃れるためなら、映画撮影なんて大嘘つくより、
夜逃げしたほうがずっと簡単なような気がしますが。。。
映画撮影と偽ることを映画一本のストーリーとして引っ張るのは、
ちょっと苦しかったんじゃないでしょうか。
いつ嘘がばれるか、のハラハラ感より、
これだけ怪しげなのに、なんでこいつら気が付かないんだ、
のイライラ感の方がつのってしまうのです。
 まあ、コメディですから。。細かいツッコミは野暮でしょう。

 三谷監督得意のコメディは、さすが、相変わらず手馴れたものです。
冒頭で情事を弁明させられるシーンや、
ボスの前で偽デラ富樫がすごむシーンは笑わせてくれました。
 でも、最後まで観ると、前作よりちょっと笑いが少ないような。。。
やっぱり、イライラ感が笑いを邪魔しているような気がします。
最後の大仕掛けを使ったオチも、あまり意外性がなくて冴えません。
 まあ、コメディですから。。。って、そこはまずいでしょう。
                            (☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2008-06-14 01:01 | コメディ | Comments(2)

screen68 ペネロピ

 現代的「お姫様」像に好感のファンタジー  公式サイト

 「みにくいアヒルの子」って童話、好きじゃないんです。
他と違ったアヒルの子が、どこでも醜いと言われていじめられてしまうだけれど、
成長すると美しい白鳥になった。。。っていうお話。
 醜いアヒルの子は結局美しくなることでしか、救われないのでしょうか。
醜いままだったら、アヒルの子には価値がなかったのでしょうか。

 「美醜」を問題にしているのではないのです。
容姿に限らず、誰でも何かしら欠陥があるしょう。
才能や能力にも人それぞれ長短があって、
人によって出来ること、出来ないことがあるはずです。
それでも、そんな自分と折り合いをつけて、
何とか生きているのが普通の人だと思うのです。

 アヒルの子は醜いなら醜いなりに生きる方法はなかったのでしょうか。
アヒルの子は醜いままですが、他より遠くまで飛べるとか、
仲間に献身的だとかで、認められて生きていくなら、いい話だと思うのですが、
”醜い”という自分ではどうしようもないことで悩んで、
結局 ”美しく”なったことが救いなら、
多くの人は救われないんじゃないでしょうか。

 長々と「みにくいアヒルの子」批判をしてしまいましたが、
「ペネロピ」を観た人ならば、なぜこんな話を書くのか解ってもらえると思います。
「ペネロピ」は、「みにくいアヒルの子」への疑問にひとつの答えを示していました。
 呪いで豚の鼻と耳を持って生まれてきたペネロピは、
結局、呪いを解いてくれる王子様を求める生き方をしませんでした。
ペネロピが両親の保護からも離れて自立しようとするのも、現代的で共感できます。
ビアジョッキからビールをストローで飲む姿もキュートでした。
 大人が、特に若い女性が、楽しめるファンタジー映画だと思います。
                                   (☆☆☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2008-06-08 00:44 | ファンタジー | Comments(0)

screen56 転々

 監督の嗜好がこじんまりとまとまった、妙に心地良い映画 公式サイト

 この映画の公式サイトURLは「tenten」でなく
「tokyosanpo」になっています。
東京散歩、ここがミソ。

 借金の取立人と、取り立てられる大学8年生の東京散歩。
彼らが巡る東京は、猥雑でサブカルチャーっぽい新宿だったり、
昭和の頃のような甘味処だったり。
 監督の趣味が表れています。
後半、ジェットコースターを乗りに行く遊園地は
豊島園でも後楽園でもなくて、花やしきです。
 出発地がちょっとおしゃれな感じがする吉祥寺よりも、
荻窪か高円寺辺りだったら更に完璧だったでしょう。
 
 そんな、のほほんとした東京散歩とともに語られるのが、
日常の些細なことをネタにした、ゆるい雰囲気の脱力系コメディです。
街で岸部一徳を見かけるといいことがあるとか、
島根に旅行した時、寒さのあまりラーメンが食べたくなって
町に一軒しかないラーメン屋に行った話とか、
カレーは一晩置いたものがおいしいとか、
日曜の最終バスの寂しさとか。。。
ゆるい。。。
ゆるいけど、つい、くすっと笑ってしまいます。

 これだけだったら中だるみしてしまうのですが、
映画に一本、緊張感を与えているのが
借金の取立人、福原が妻を殺してしまったという事実です。
 妻の浮気を知って思わず殺してしまった事を
自首しに行くのが散歩の最終目的なんですが、
自首する前に発覚してしまいそうになるハラハラ感が
飽きずに映画に常に注意を向けさせていて、うまいです。

 そして出色なのが後半、小泉今日子演じる
麻紀子の所に転がり込み、計らずも擬似家族を演じる様子です。
擬似のはずのに、アットホームなこの雰囲気が
不思議とほんわりと心地良いのです。

劇的などんでん返しがある訳でもなく、あっさり終わってしまうエンディングも、
落ちのないような小ネタを集めた、この映画らしいのではないでしょうか。
                       (☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2008-03-08 00:25 | コメディ | Comments(2)