劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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 ミュージカル「コーラスライン」を楽しむための最良のサブテキスト  公式サイト

'06年「コーラスライン」再演のために行われた
8ヶ月に及ぶ公募オーディションの模様を追ったドキュメンタリー。
オーディションの様子と平行して、「コーラスライン」がどうやって創られたかや、
公開時の模様や出演者インタビュー、反響などが挿入されます。

 「コーラスライン」はダンサー達に一晩かけて行った12時間に及ぶインタビュー
(というより、ディスカッション?)を元に作られたそうで、
劇中のダンサーはそれぞれモデルがいるということを、この映画で知りました。
初演時にはモデルとなったダンサーをほぼそのままキャスティングしていたそうです。
映画では12時間のインタビューテープの一部音声が聞けます。

 「コーラスライン」自体、ダンサーのオーディションを舞台にした群像ドラマなので、
これはいわば”現実の「コーラスライン」”。
劇中劇との奇妙な入れ子構造が面白い構成になっています。
 観ていると、予選の間は受験者に合格したいというギラギラした雰囲気はなく、
”「コーラスライン」のオーディションというイベント”に
参加できることを楽しんでいるようです。
受かればラッキー、ダメならすぐ次、
やれるだけのことをやってテストを楽しもうというスタンス。
そうでなければ、成功するのはほんの一握りの人だけという
ショービジネスの世界ではやって行けないんでしょう。
 受験者中、沖縄出身の日本人でコニー役を射止めた高良結香にも注目です。
英語の発音を問題にされ、物怖じせず何度も"Ten"を繰り返す彼女に、
単身アメリカで奮闘するために必要なタフさを見せられたようでした。

 候補者が絞り込まれるにつれ、次第に受験者は真剣味を帯びてきます。
キャスティング側も最終選考では悪かった点を指摘してもう一度トライさせています。
そんな姿勢はショービジネスの厳しさというよりも、
最高のものを創りたいという制作側の思いを感じさせてくれました。

 これを観ると「コーラスライン」を観直したくなること、間違い無しです。
というより、私は帰ってから映画「コーラスライン」をレンタルちゃいました。
このストーリーにはあんな背景があったんだとか、
このダンサーのモデルがあの人だったのかとか、
以前観た時よりも何倍も楽しめました。
                   (☆☆☆☆)
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by am-bivalence | 2009-02-25 00:07 | ドキュメンタリー | Comments(0)
偉大な姉、アニー・リーボヴィッツを讃える映画 公式サイト

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 アニー・リーボヴィッツはローリング・ストーンズの表紙で注目され、
暗殺される直前のジョン・レノンの写真などで知られているそうです。
 私はカバー、グラビアのような商業写真にはあまり興味がなくて、
彼女を知らなかったのですが、
話題になったデミー・ムーアの妊婦ヌードは見憶えがあります。

 最近のアニー・リーボヴィッツの作品は
古典絵画のような画造りのものがあり、
映画では、その実際の撮影現場を垣間見せてくれます。
 彼女が撮ったセレブ達へのインタビューも、
その写真の撮られた経緯の一端が分かって興味深いです。
 ただアニー自身は、自分の作品や自分自身について多くを語っておらず、
映画は、彼女の発想がどこから来るのか、
どういう意図からそのような写真になったかといった、
作品の本質を解明してくれるわけではなさそうです。
 そういえば、彼女の撮ったセレブ達の写真も、
私には、対象の本質に迫るというより、
彼らのイメージをちょっと違った視点で演出する、といったもののように思えます。
だからセレブ達にも受けが良いのではないでしょうか。

 また映画では、彼女の経歴の中でスキャンダラスな面、
「恋人」スーザン・ソンタグとの関係や、
ローリング・ストーンズ誌時代、ロックスターに密着取材することで、
ドラッグにはまっていってしまったことなど、
隠しはしないものの、深く掘り下げることもなく、
人間、アニー・リーボヴィッツ像が理解できるわけでもありません。

 この映画を撮ったのはアニーの実妹、バーバラ・リーボヴィッツ。
アニー・リーボヴィッツのグラビア写真のように、
”敬愛する偉大な姉、アニー・リーボヴィッツ”のイメージのプロモーションとも取れる、
賛辞映画に止まってしまっているのが、物足りないところです。
                             (☆☆)


 *今回、公式サイトにブログ用写真が掲載されていましたので
 使わせていただきました。
 著作権にうるさい昨今、こういう配慮はありがたいです。
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by am-bivalence | 2008-03-14 21:51 | ドキュメンタリー | Comments(2)
 ラストのピアノ演奏がこの映画のアイデンティティー 公式サイト

 ピアニストを扱った映画はこれまでも幾つか観てるんですが、
実話を元にした「シャイン」や「戦場のピアニスト」が秀作だったのに対し、
完全なフィクションの「海の上のピアニスト」は
映像・イメージ先行で、リアリティーを度外視した分"作り物"感があって、
私としてはもう一つ入っていけない映画でした。
 ピアノを弾けない者にとってピアニストというのは
神がかり的な、何か崇高なものを内に秘めているように
イメージさせてしまうのでしょうか。
 監督のイメージから生まれたこの「4分間のピアニスト」にも、
そんな"作り物"感を感じてしまいます。

 リアリティーがないというのではありません。
ピアノ教師と囚人となっているピアニストの抱えているトラウマは
彼女らの人生、姿勢に大きく影響していますが、
お互いにそれを知ったからといって和解しあうわけでもありません。
彼女らのの関係はあくまで平行線です。
人間、そう簡単には変わらないのです。それが現実。
ハリウッド映画にはない、ヨーロッパ映画らしい描き方です。

 それでも、彼女らのトラウマが深刻過ぎて現実味がないのか、
どこか描写が表層的なのか、
”作り物のドラマを観ている”感を持ってしまうのです。

 ただ、映画のタイトルにもなっているラスト4分間のピアノ演奏、
このシーンは人によって賛否が分かれるようですが、
ここにこの映画のアイデンティティーが凝縮されていて、
私は良かったと思います。

(以下、ネタバレ)

 クライマックスの演奏はピアノ演奏という概念を超えた、自由奔放なものでした。
それはジェニーの自由の表現だったように思います。
ピアニストとして再起させようと裏で画策する養父への反発、
クラシック以外は低俗な音楽と決め付けて、
自分の型にはめようとするクリューガーへの反抗、
そういった想いを込めて、自分を解放するための演奏でした。

自由な精神を囚人が表現するというアイロニーも、
面白いんじゃないでしょうか。
           (☆☆)
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by am-bivalence | 2007-12-05 22:36 | 人間ドラマ | Comments(4)

screen42 ミス・ポター

 子供でも楽しめるミス・ポターの恋愛秘話 公式サイト

 実は私、ピーターラビットの絵本は一冊もちゃんと読んだことがありません。
ただ、以前TVのドキュメンタリー番組で見た、
作者ポター女史のナチュラリストとしての面が印象に残っていて、
この映画に興味を持っていました。
 彼女の描く動物達は写実的です。背景に描かれる植物も、
実在のものを正確に描いているそうです。
ナショナル・トラスト運動の創成期に大きく貢献したことなども
ポター女史に興味を引かれた点でした。

 実在のポター女史が、どんな人だったかは知りませんが、
絵本を出す時にコストのかかる色刷りはやめようと考えていたり、
ピーターラビットのぬいぐるみの製造を初めてライセンス供与したり、
意外に、現実的なビジネス感覚を持った"かしこい"人だったように思えます。

 でも映画でのポターは、上流階級の箱入り娘で、
自分の描いたキャラクターを友達と呼び、話し掛ける、
夢見がちの人物のように描かれています。
 ポターのキャラクター達をアニメで動かして見せるなど、
ピーターラビットファンの子供達が観ることを配慮したんでしょうか。

 自分の空想世界に入り込むという点では、
「パンズ・ラビリンス」のオフェイリアに重なる部分がありますが、
この物語が「パンズ・ラビリンス」と違って明るいのは、
ポターがあくまでポジティブだからというのもあるのでしょう。
 「パンズ・ラビリンス」がファンタジーと言いながら、
ダーク過ぎて低年齢層に観せるには問題があるのと対照的に、
「ミス・ポター」は実話でありながら子供でも楽しめる内容です。
この安心感は小学生向けの伝記物語のようです。

(以下、ネタバレ)

 映画は、編集者との恋が中心となっていくのですが、
この恋愛は唐突に意外な結末を迎えます。
 この突然な恋愛の終焉が会話だけで示され、決定的映像が出てこないので、
ミステリ映画を観過ぎてひねくれていた私は、
てっきり結婚に反対されていた二人を別れさせるための策略かと
疑って観ていました。
 おかげでポターの悲しみにシンクロするタイミングを外され、
悲しみを共有できぬまま後半に移ってしまったのが残念でした。
 それに、後半ポターが立ち直る部分が時間の経過としか描かれておらず、
もっと丹念に過程を描写してくれたら、より感動できたような気がします。

 それにしても、後半ポターが移り住み、土地を買い上げても開発から守ろうとした、
イギリス湖水地方の風景は美しいものでした。
 ポターの半生を描いたドラマよりも、
この光景が今も観れるのは、ピーターラビットあってこそであることに、
感慨を憶えてしまうのでした。
                    (☆☆)
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by am-bivalence | 2007-10-30 22:26 | 伝記 | Comments(6)