劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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 青年の行動に、今の若者はどこまで共感できるだろうか  公式サイト

 今回は、映画の感想というより原作の話が主になっています。
私的なことも混じり、かなり長文になってしまっているので、
映画情報を期待している方は、飛ばされたほうが賢明です。
 いきなりネタバレしていますし。。。

(以下ネタバレ)
 昨年の5月連休、私は一人、上高地でキャンプして過ごしながら、
一冊の本を読んでいました。
 アラスカの原野で腐乱死体で発見された青年が、どうしてそこにやって来たのか、
そこに来るまで何をしてきたのかを追ったノンフィクションです。

 最初この本を手にしたのは、放浪の果てに荒野でたった一人で野垂れ死ぬという、
異様な状況に興味を引かれてでした。
 私自身、その時一人でキャンプしていたように、
単独で山に登ったり旅行したりといったことをよくするので、
単独行での遭難や、事故には無関心でいられなかったのです。
 本を読んでいくと、青年がアラスカにたどり着くまでの経緯もさることながら、
明かされていく青年=クリスの人物像に
こんな人が実在したのかと驚かされ、惹かれていきました。

 クリスは比較的裕福な家庭で育ち、学業も優秀でした。
彼は誰にも好かれる好青年だったようです。
高校の頃はホームレス支援のボランティアをしたりする、
純粋で正義感の強いところがありました。
自分でこうと決めたら人のいうことを聞かない、頑固な面もあったようです。

 そんなクリスが大学を卒業すると失踪し、放浪の旅を始めたのは、
父親の不義を知ったことが大きく影響していました。
父親には別に妻がいて、彼には異母弟がいたのです。 
それが自分という存在そのものも揺るがしたのでしょうか。

 彼は労働を嫌っていたわけではなく、
人の嫌がる農場の重労働も進んでやっていたそうです。
ただ規則に縛られず、自由に行動するのを好みました。
 放浪の間、社会からはみ出した生き方をしている人々と知り合い、
より自由を求めて自然の中に入り、独学でサバイバル術を身に付けていきます。
そして、"その土地の与えてくれるものだけで生きよう"と
アラスカの荒野へ踏み込んで行くことになるのです。

 冒険、社会の中での生き方、いろいろ考えさせられるノンフィクションでしたが、
巻末の解説にショーン・ペンが映画化を企画しているとあったのを見て、
映画が日本で公開されたら観にいこうと決めていました。
 本のタイトルは「荒野へ」。映画「イントゥ・ザ・ワイルド」の原作です。

 映画に出てくるエピソードは原作にほぼ忠実です。
原作者は単独行をする登山家で、
原作では単独行の冒険でのリスクということの考察もあったのですが、
映画では放浪中に出会う人々との関わりや、
彼を放浪に駆り立てるものに重点が置かれています。

 映画では青年が流浪する理由を、
"真理"の探求とか、物質文明への反発のようにも描いていますが、
実際は家族を欺いていた両親への反発、
誰にも頼りたくないという独立心が根本にあって、
先鋭化していったのだと思います。
 紙幣やカードを燃やして自ら無一文になり、本名を捨てるのも、
物質文明への反発というより、親の資産に頼りたくないという独立心であり、
アラスカの無人の荒野を目指すのも、誰もいない場所で
誰にも頼らず一人で生き抜いてみたいことの現れでしょう。
 クリスの行動に、私は「火垂るの墓」の少年を思い出しました。
「火垂るの墓」の主人公は戦争という非常事態の中、親を亡くしますが、
親戚に頼りたくなくて無謀にも自分たちだけで生きようとし、悲劇の道を辿ります。
クリスの行動がある面青臭く、無謀に見えるのも
似たような稚拙な行動にも思えてしまうからでしょう。

 一方で、自然の中に帰って自然から得られるもので生きるというのは、
「ブラザー・サン シスター・ムーン」の聖フランチェスコも連想させます。
フランチェスコが野の小鳥を見て、彼らのように着飾らず、
自然の恵みだけで生きられたらと願い、出家する姿とも重なるのです。
クリスが一途な冒険者であるとともに、求道的に見えるのも、
そこに思想家のような姿勢があるからなんでしょう。

 ともあれ、クリスが彷徨し、見た風景、場所を
実際にスクリーンで見れたのは嬉しいことでした。
 主演のエミール・ハーシュは、「スピードレーサー」ではパッとしなかったのですが、
この映画では主人公のクリスを魅力的に演じています。

 最後に出会う老人とのエピソードは、原作では後日談があって、
クリスの死を知った老人の想いが胸を締め付けました。
ここは原作でも、最も印象的なエピソードなので、
是非、原作を読んで確かめて欲しいと思います。
                       (☆☆)
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by am-bivalence | 2008-09-19 23:40 | 人間ドラマ | Comments(2)

screen56 転々

 監督の嗜好がこじんまりとまとまった、妙に心地良い映画 公式サイト

 この映画の公式サイトURLは「tenten」でなく
「tokyosanpo」になっています。
東京散歩、ここがミソ。

 借金の取立人と、取り立てられる大学8年生の東京散歩。
彼らが巡る東京は、猥雑でサブカルチャーっぽい新宿だったり、
昭和の頃のような甘味処だったり。
 監督の趣味が表れています。
後半、ジェットコースターを乗りに行く遊園地は
豊島園でも後楽園でもなくて、花やしきです。
 出発地がちょっとおしゃれな感じがする吉祥寺よりも、
荻窪か高円寺辺りだったら更に完璧だったでしょう。
 
 そんな、のほほんとした東京散歩とともに語られるのが、
日常の些細なことをネタにした、ゆるい雰囲気の脱力系コメディです。
街で岸部一徳を見かけるといいことがあるとか、
島根に旅行した時、寒さのあまりラーメンが食べたくなって
町に一軒しかないラーメン屋に行った話とか、
カレーは一晩置いたものがおいしいとか、
日曜の最終バスの寂しさとか。。。
ゆるい。。。
ゆるいけど、つい、くすっと笑ってしまいます。

 これだけだったら中だるみしてしまうのですが、
映画に一本、緊張感を与えているのが
借金の取立人、福原が妻を殺してしまったという事実です。
 妻の浮気を知って思わず殺してしまった事を
自首しに行くのが散歩の最終目的なんですが、
自首する前に発覚してしまいそうになるハラハラ感が
飽きずに映画に常に注意を向けさせていて、うまいです。

 そして出色なのが後半、小泉今日子演じる
麻紀子の所に転がり込み、計らずも擬似家族を演じる様子です。
擬似のはずのに、アットホームなこの雰囲気が
不思議とほんわりと心地良いのです。

劇的などんでん返しがある訳でもなく、あっさり終わってしまうエンディングも、
落ちのないような小ネタを集めた、この映画らしいのではないでしょうか。
                       (☆☆)
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by am-bivalence | 2008-03-08 00:25 | コメディ | Comments(2)