劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
 二本立てだったので、2つ並べて感想を書きます。

王と鳥 ~宮崎アニメの原型いっぱいの古典 公式サイト

 物語は天高くそびえる城が舞台。
城主である横暴な王様が唯一愛するのが、絵の中の羊飼いの娘。
しかし娘は、隣の絵の煙突掃除の青年と絵から抜け出し、
逃げてしまいます。
 それを追うのが同じく肖像画から抜け出した王様。
羊飼いの娘と煙突掃除の青年は
追っ手を逃れて城の下へ下へと進んでいき。。。

 この映画、いろいろな暗喩が読み取れるそうですが、
それよりも宮崎アニメの元ネタが随所に発見できて、驚かされます。

 お城のてっぺんにある王様の部屋は、
「ルパン三世 カリオストロの城」でクラリスの幽閉された塔そっくりですし、
城のそこら中に落とし穴があるのも、カリオストロ城そのものです。
羊飼いの娘がクライマックスに着せられるウェディング・ドレスは
クラリスの着たウェディング・ドレスに良く似ています。

 城全体の姿は「天空の城ラピュタ」のラピュタを思い起こさせ、
娘と青年を追う秘密警察の服装は「天空の城ラピュタ」で
シータとパズーを追う警察?にそっくりです。

 また娘と青年が城の中を逃走する場面は、
城内放送がスピーカーで流れたりして、
「未来少年コナン」でコナンとラナが
インダストリアを逃亡するイメージと重なります。
地下に住民が抑圧されているのも、インダストリアと同じです。
 さらにクライマックスには「風の谷のナウシカ」の
巨神兵のようなロボットが大暴れするのです。

 ただ、宮崎アニメの原典を知りたいマニアには興味深いでしょうが、
いかんせん、原型となった「やぶにらみの暴君」公開が
1955年といいますから、かなりの年代物です。
映画としては「古典」で、時代を感じてしまうのは仕方ないところでしょう。
                            (☆☆)


春のめざめ ~色彩・画力が圧巻、動く印象派絵画 公式サイト

 最初この映画の予告編を観た時、てっきり絵か実写をコンピューター処理して
油絵調に見せているんじゃないかと思っていました。
 でも実際は、ガラス板上に油絵を描いていき、
動かすところだけ絵具を拭っては描き直すという、
本当に油絵でアニメーションを作る、気の遠くなるような手法を使っているそうです。
 これはすごいです。
油絵画家としての技術と、アニメーターとしての技術、
両方の高度な技を必要とする手法で、実際にそれをやってみせているのですから。
色彩の美しさも素晴らしく、まさに動く印象派絵画です。
ドラマなど、どうでもいいくらい、画面に釘付けになっていました。

 物語は、16歳の少年が年上の女性と
手伝いの少女、二人の女性に同時に引かれるというもので、
アニメとはいえ、性のめざめも扱った大人のストーリーになっています。
 最後は「ことの終わり」を連想させる結末で、
肉欲だけでなく愛の持つ高潔な面もさらりと語っているのが、
独特の情感を残していました。

30分という中篇ですが、幻想的な雰囲気も併せ持つ絵の美しさは、
久々にDVDを買って何度も見直したくなったアニメーションでした。
                         (☆☆☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2007-11-06 01:14 | アニメ | Comments(2)

screen42 ミス・ポター

 子供でも楽しめるミス・ポターの恋愛秘話 公式サイト

 実は私、ピーターラビットの絵本は一冊もちゃんと読んだことがありません。
ただ、以前TVのドキュメンタリー番組で見た、
作者ポター女史のナチュラリストとしての面が印象に残っていて、
この映画に興味を持っていました。
 彼女の描く動物達は写実的です。背景に描かれる植物も、
実在のものを正確に描いているそうです。
ナショナル・トラスト運動の創成期に大きく貢献したことなども
ポター女史に興味を引かれた点でした。

 実在のポター女史が、どんな人だったかは知りませんが、
絵本を出す時にコストのかかる色刷りはやめようと考えていたり、
ピーターラビットのぬいぐるみの製造を初めてライセンス供与したり、
意外に、現実的なビジネス感覚を持った"かしこい"人だったように思えます。

 でも映画でのポターは、上流階級の箱入り娘で、
自分の描いたキャラクターを友達と呼び、話し掛ける、
夢見がちの人物のように描かれています。
 ポターのキャラクター達をアニメで動かして見せるなど、
ピーターラビットファンの子供達が観ることを配慮したんでしょうか。

 自分の空想世界に入り込むという点では、
「パンズ・ラビリンス」のオフェイリアに重なる部分がありますが、
この物語が「パンズ・ラビリンス」と違って明るいのは、
ポターがあくまでポジティブだからというのもあるのでしょう。
 「パンズ・ラビリンス」がファンタジーと言いながら、
ダーク過ぎて低年齢層に観せるには問題があるのと対照的に、
「ミス・ポター」は実話でありながら子供でも楽しめる内容です。
この安心感は小学生向けの伝記物語のようです。

(以下、ネタバレ)

 映画は、編集者との恋が中心となっていくのですが、
この恋愛は唐突に意外な結末を迎えます。
 この突然な恋愛の終焉が会話だけで示され、決定的映像が出てこないので、
ミステリ映画を観過ぎてひねくれていた私は、
てっきり結婚に反対されていた二人を別れさせるための策略かと
疑って観ていました。
 おかげでポターの悲しみにシンクロするタイミングを外され、
悲しみを共有できぬまま後半に移ってしまったのが残念でした。
 それに、後半ポターが立ち直る部分が時間の経過としか描かれておらず、
もっと丹念に過程を描写してくれたら、より感動できたような気がします。

 それにしても、後半ポターが移り住み、土地を買い上げても開発から守ろうとした、
イギリス湖水地方の風景は美しいものでした。
 ポターの半生を描いたドラマよりも、
この光景が今も観れるのは、ピーターラビットあってこそであることに、
感慨を憶えてしまうのでした。
                    (☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2007-10-30 22:26 | 伝記 | Comments(6)