劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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SCREEN118 風と共に去りぬ

不朽の大河メロドラマ、前半のラストがすごい 参照サイト

 もう何度もTVやDVDで観ていながら、大スクリーンではなかなか観る機会がなかった「風と共に去りぬ」、午前10時の映画祭でやっと劇場で観ることができました。
劇場だと序曲や終曲も上演されるのがうれしい限りです。
 この一大大河メロドラマ、制作年が1939年と映画祭中最も古い作品なのにカラーであるのもすごいのですが、今でも使われる恋愛ドラマのパターンが既に出来上がっているのにも驚かされます。
勝気で自分に率直なヒロインや、不良っぽくて包容力がある男性に反発しながら惹かれるさま、
お互い気になりながら すれ違いを繰り返すじれったさ。
不朽の名作として今なお観られているわけです。
(旧作なので以下ネタバレ気にせず書きます。 気になる方は飛ばして下さい。)

 今回じっくり見直して、今更ながら気付いたのは、
自分の意志でやりたいように生きた印象だったスカーレット・オハラが、
実は、ままならない人生に翻弄されていて、いつも決して満たされず幸福でなかったこと。
 そして、初めて観た時は気の強いスカーレットがそれなりにチャーミングに見えたのに、
今改めて観ると、単にわがままで幼稚な女性にしか思えず、魅力が無くなってしまったこと。
逆にあまりにも優等生的でリアリティがなかったメラニーのほうが、その純真さと聡明さに人間的にも惹かれたこと。 レッド・バトラーもメラニーには一目置いていたのが今になって理解できました。
 この変化は自分が年とったせい(笑)もあるかもしれませんが、現代の人々の変化、
今の世の中、スカーレットのようなキャラはありふれてしまって、メラニーのような人間こそ少なくなってきたからのような気がしてなりません。

 「風と共に去りぬ」と言えば名セリフ、
  「明日は明日の風が吹く(After all, tomorrow is anather day.)」
と共に、絶望的状況でも明日へ希望を託すラストシーンが有名ですが、
私はそれよりも前半の最後が強烈に印象に残っていて、何度観ても感動してしまいます。
スカーレットが空に向かって独白するシーンです。

 陥落するアトランタから必死の思いで脱出し、
故郷タラに戻ったスカーレットが直面したのはタラの惨状でした。
財産はおろか食糧さえ無く、ひもじさのあまり、畑に残った大根を掘り出し齧りつくスカーレットは
惨めさに思わず嗚咽してしまいます。
でも次の瞬間スカーレットは立ちあがり、天を仰いでこう宣言するのです。
 「神様に誓います、こんなことで私は負けません。
 私は生き抜いてみせます、これを乗り越えて、二度と飢えたりしません…
 たとえ嘘をつき、盗み、騙し、人殺ししなくてはならなくてもです。
 神様に誓います、私はもう二度と飢えません!」

これはすごいと思いません?
神に向かって「生きるために人殺しもいとわない」
と言ってしまうんですよ。
人間としての誇りを取り戻すために、全てを奪った神への宣戦布告とも受け取れる
言葉を口にするスカーレットの強烈な意志と生命力、そして覚悟。
 実際このあと、スカーレットはその言葉を図らずも実行していく強靭さを示しますが、
反面、後になって悪夢にうなされる人間的な面も描かれているのがこの映画の深いところ。

 生き抜くために犯罪をも肯定することの是非はともかく、
(これ、非常時の略奪や暴動を肯定する論理なんです)
このスカーレットの強さこそ、今の日本に必要ではないでしょうか。
                      (☆☆☆☆☆)
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by am-bivalence | 2011-05-03 17:21 | ラブストーリー | Comments(0)
 「藪の中」にこんな解釈があったのか  公式サイト

月に一度の映画の日、何か面白い映画はないかと探していたら、
新宿で「羅生門 デジタル完全版」を限定公開しているのが目に止まりました。

 「羅生門」は言わずと知れた黒澤明の古典的名作です。
大映の資産を買い取った角川映画が、原版の劣化がひどかった「羅生門」を
各種機関と提携して 複数の上映プリント等から完全デジタル修復したので、
それを限定公開した、というわけです。
 どんな修復だったのかは、2月に発売されるブルーレイの宣伝サイト
一端を見てもらうとして、
「羅生門」のオリジナルネガは諸般の事情で廃棄され現存せず、
上映プリントも残っているものが意外に少なかったそうで、
修復はかなり苦労したようです。

 実際に観てみると、像、音声とも鮮明で、古さを全く感じさせませんでした。
随分前ですが、「七人の侍」のリバイバル上映を観た時は
音声が一部かなり不鮮明だったことを思うと、格段の差です。
 ただ完全版といっても、カットされたシーンが追加されているわけではないそうです。

 「羅生門」は恥ずかしながら、私はちゃんと観たことがありませんでした。
何十年も前に、テレビ放送していたのを断片的に観た覚えがあるのですが、
当時は芥川龍之介の原作も読んでいなかったので、
不条理な映画としか印象にありませんでした。

 芥川の原作「藪の中」自体、食い違う証言に、
人間行動の真相とは不可知なものだというのがテーマと言われていたので、
そんな映画だったと決め付けていたのですが、
今回改めて観て、ぜんぜん違う映画だったことを知りました。
 映画「羅生門」で黒澤監督らは、芥川の原作の裏に隠された真相を推理し、
それを映画化していました。

 原作では、強盗、暴行を働いた多襄丸の証言、
暴行された女の証言、暴行された女の夫で死んだ侍の霊の証言があり、
どれも人殺しをしたのは自分であると主張して、
誰が犯人か分からぬまま終わっています。
 「羅生門」では、ここまでは原作をほぼ忠実に描き、
この後、第四の証言者として、きこりを登場させます。
第三者の目撃として、実際はこんなことが起こったのだというのを
提示して見せるのです。

 これはおそらく、当事者3人の証言が、
盗人は盗人らしくすごんで見せ、女は貞淑さを装い、
侍は自身の不甲斐なさを嘆いてみせるといった、
それぞれ自分を演出していることに気付いたからではないでしょうか。
 黒澤監督らは「藪の中」に、事実の不可知ではなく、
自分を正当化するためには、意識するしないに関係なく、
都合よく事実を湾曲してしまう人間の業を見たのでしょう。

 ただ、きこりも最後で暴露されるように、
完全に第三者というわけではありません。
彼の証言も何らかのバイアスが掛かっている、ということで
真相はやはり分からないという含みを残したのでしょうか。

 ラストはきこりが捨て子を引き取っていくことで、一抹の救いを見せて終わります。
しかし、ここで私が引っかかったのが、タイトルの「羅生門」。
同名の芥川の名作短編「羅生門」は、
羅生門の上での男と老婆のやり取りから、
ころころ変る人間心理を描いたものなのです。
 罪を悔いて子供を引き取ったきこりの決心が
いつまでも変らないのだろうかと疑問を呈しているようにも。。。
と考えるのは、うがち過ぎですかね。
               (☆☆☆☆☆)
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by am-bivalence | 2008-12-03 21:37 | 時代劇 | Comments(0)
 黒澤監督、期待を裏切り御免! 公式サイト

 「映画生活」などのクチコミを見ていると、
この映画は賛否両論で、どちらかと言うと否が多いようです(^^;。
 面白いのは、評判より良かったと思う人は
オリジナルの黒澤作品を観ていない人が多く、
ひどいと言っている人は、オリジナルを観ていて、
黒澤版を評価している人が多いことです。
 私はオリジナルの黒澤作品を観て傑作娯楽映画と思っている一人ですが、
なぜこんなに評価が分かれるのか、実際に観てみて、なんとなく分かりました。
 オリジナルを知らないで、このリメイク版をそこそこ楽しめると思った人、
あなたが面白いと思ったところはたぶんオリジナルの残った部分です。

 「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」は、
中途半端に雪姫が悩み、シリアスにしようとした分、
オリジナルの黒澤版が持っていた、娯楽時代劇の爽快さを失いました。
戦国時代に現代の民主主義的価値観を持ち込まれても。。。ねえ。
 「ローレライ」といい、樋口監督は時代考証をあまり重視しないようです。

 換骨奪胎で、オリジナルを改悪している部分は、
関所を突破する部分にも現れています。
六郎太の機転で切り抜けるところを、リメイク版は
男色趣味を絡めた、後味の悪いエピソードを追加しています。
 キャラクターの変更にも疑問が残ります。
ジョージ・ルーカスがレイア姫のモデルにした気の強い姫、雪姫は、
リメイク版では後半以降、信念と気丈さを失って、
つい彼氏に頼ってしまう、アニメおたく好みのような女の子に変わってしまいます。

 黒澤作品のリメイクというと「椿三十郎」が記憶に新しいですが、
リメイクに対する両者のアプローチは全く逆で、好対照です。
「椿三十郎」がオリジナルを忠実にトレースしたのに対し、
「隠し砦…」は大幅に改編し、現代的なアレンジに挑戦しています。
チャレンジングなのは買いますが、
どちらが良かったかは、映画が示していると思います。
「隠し砦…」は図らずも、森田監督のやり方が保守的ながら
正しかったことを証明してしまいました。
 黒澤明、橋本忍といった、かつての名匠達が作り上げた傑作を、
凡百の人間が寄ってたかって作り直しても、
良いものには成り得ないということでしょうか。

 樋口監督、最高に面白い映画を創ろうという気概がおありなら、
リメイクや原作に頼らずに、オリジナルに挑戦したらいかがでしょうか。
                               (☆)
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by am-bivalence | 2008-05-31 10:07 | 時代劇 | Comments(0)

screen50 椿三十郎

黒澤映画の面白さを再認識 公式サイト

 まず、黒澤明の傑作の一つを、
比較されることも承知でリメイクした勇気に拍手。
しかも脚本をそのまま使うということは、映像で勝負するということですか。
 。。。と思っていたら、予告編を観ると
おいおい、黒澤版まんまじゃないですか。
製作総指揮:角川春樹?
椿三十郎:織田裕二?
 う~ん、観に行こうか迷っていましたが、意外に評判良さそうなので
思い切って観てみると、なかなかに楽しめました。

 やっぱり、いいシナリオは時代を超えて面白いんですね、
って言われてしまうのも、名作をリメイクをする側に不利なところ。
それでもそつなくまとめてみせたのは、さすが手練れの森田芳光監督です。
黒澤版そのままのカットも言ってみれば
森田流"本家取り"なんでしょうか。

 こうして改めて新版「椿三十郎」を観てみると、
"キャラがたっている"のに驚きます。
三十郎はじめ、室戸半兵衛や奥方のキャラクターは個性的で判りやすく、
娯楽映画のお手本といってもいいんじゃないでしょうか。
良く練られたプロットといい、キャラの効果的な使い方といい、
脚本をそのまま使ったのも頷けます。
 ただその分、状況説明的会話が多いとか、
黒沢映画らしいちょっと臭いセリフとかいった、
オリジナルの欠陥も引き継ぐことになるのですが。。。

 室戸役の豊川悦司はじめ、キャスティングがなかなか良かったんじゃないでしょうか。
中村玉緒、藤田まこと、などは、はまり役のように思います。
三十郎はもともと三船敏郎に合わせたキャラクターなので、
オリジナルと比べると見劣りしてしまうのは致し方ないでしょう。
 ただ、三船の三十郎にはシニカルな面があって、
三船三十郎の言う軽口には皮肉な響きがあったのに、
織田三十郎にはそれが足りないのが残念です。
三十郎は諸国を流浪している素浪人なので、世間の裏を見尽くしているはずなのに、
織田三十郎はそんな雰囲気が足りないのです。
織田三十郎がニヤリと笑っても 不敵と言うより、
脳天気に見えてしまうのは私だけでしょうか。
しゃべり方もまるで三船のモノマネをしているようなのも気になります。

 なんだかんだ言っても、黒澤作品の時代劇は面白いです。
「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」が時代劇だと思っている世代に
是非観てもらいたいものです。
 これを機会に「用心棒」や「隠し砦の三悪人」なんかもリメイクするとか、
黒澤作品のリバイバル上映するとか、ならないものでしょうかね。
                         (☆☆☆)

 *補足
  冬休み、帰省した実家で黒澤版「椿三十郎」のビデオを発見しました。
 黒澤版を見直してみて、森田版が黒澤版の全くの焼き直しという訳ではなく、
 随所にオリジナルの演出を加えていることに気付きました。
 自分を踏み台にさせながら、奥方に塀を乗り越えさせるところなど、
 オリジナルのイメージを大切にしながら、独自の改善を加えているのです。
  織田裕二の演技も三船のモノマネというより、
 三船ならこう演じていたのだろういうイメージを出していたようにも見えます。
 森田監督、したたかです。
 森田版の評価が上がりました。
  「隠し砦の三悪人」は「ローレライ」の樋口真嗣監督がリメイクするんでした。
 これもちょっと期待しましょう。
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by am-bivalence | 2007-12-27 00:41 | 時代劇 | Comments(2)

screen21 蟲師

 やっぱり、餅は餅屋になのか  公式サイト

 私が学生の頃、漫画家志望の友人が、
 「すごい漫画家がいる」
と言って一冊の単行本を見せてくれました。
大友克洋「ショート・ピース」でした。

 大友克洋は、その正確無比なデッサン力とシャープなタッチで、
リアルに人物、風景を描き、デビュー以来、漫画界に多大な影響を与えています。
 その画力が当時も今も、圧倒的であるだけでなく、
氏の描く世界も、現実を細かく描写することで、
超現実的な世界をリアルに感じさせる、個性的なものでした。

 やがて氏の活躍の場は漫画から
「AKIRA」、「MEMORIES」などのアニメへと移っていきます。
そこでもリアルな絵と、リアルに超現実的世界を見せる手腕は衰えず、
ファンを楽しませてくれました。

 その大友克洋が実写を撮る、しかも人の漫画を原作にして。
これは注目しないわけにはいきません。
 ですが。。。

 蒼井優演じる淡幽の活躍シーンはよかったです。
文字を新体操のリボンのように操るイメージは、さすがです。
音響効果も悪く無かったです。
 でも。。。

 出てくる日本の自然は、リアルといえばリアルですが、
美しくないのです。
もっと美しい風景が、日本には幾らでもあるし、美しく撮れるんですが。

テンポも緩めで、「AKIRA」や「スチームボーイ」で見せた勢いは無いです。

江角マキコの役柄が難しいのは判りますが、演技が浮いてます。

ラストは私の理解力が足りないのか、どう決着がついたのかよく解りませんでした。

 。。。残念です、大友先生。

 今まで何人か、メジャーなアニメ・クリエーターが実写映画を手がけていますが、
成功しているとは言い難いものばかりのような気がします。
 絵を描くのと、カメラで撮影するのとは、別物なんでしょうか。
                            (☆☆)
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by am-bivalence | 2007-04-02 22:02 | ファンタジー | Comments(2)

screen10 墨攻

 過度に期待しなければ楽しめる  公式ホームページ

 墨家のことを私は映画が公開されるまで知りませんでした。
原作の漫画は知っていましたが、まだ読んでいません。

 墨家の思想って、原始キリスト教に似ています。
質素を宗とする共同体、敵をも愛する隣人愛、非攻。
一つ決定的に違ったのは、墨者は皆、戦闘のプロだったことだそうです。
墨家の思想の全ては、戦争を無くしたいという想いから出ているようです。
端緒がピュアである分 先鋭化し、一般には受け入れ難くなってしまったのでしょうか。
 しかし、博愛、専守防衛の思想は非常に現代的で、
戦国時代に発達しただけに、示唆に富んでいます。
こういった映画が中国、香港、日本、韓国合作で造られるのは
意義深いと思います。

 その映画の出来は、知略を尽くして城を守るプロットは面白いのですが、
娯楽映画の定石として恋愛ドラマを入れるのは
ちょっと無理があったのではないでしょうか。
戦術を駆使してきたのに、最後の決着がこれ?とも思ってしまいます。

 守るだけでも、流血の悲劇は避けられず、
守り切ったとしても、暴政が行われればやはり悲劇が続くことは、
墨家思想の限界を示しているのでしょうか。
                       (☆☆)


参照映画:「キングダム・オブ・ヘブン」 リドリー・スコット監督 2005年
   歴史物の籠城戦ならばこれ。十字軍時代のイスラエルで、
  キリスト教とイスラム教の共存する国を守ろうとした若者の物語です。
  これも宗教を超えて平和な世界を造ることがテーマとなっています。
  オーランド・ブルームがシリアスな役を好演してます。
  投石器を使った攻城戦は迫力あり、私は劇場で見なかったのを後悔しました。

参照文献:「墨攻」 酒見賢一 新潮文庫
   映画の原典となったコミックはこれが原典。映画とは革離のキャラクターが大きく異なり、
  防衛のためなら手段を選ばない策士といった印象になっています。
  三国志や史記が好きならこちらが面白いです。
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by am-bivalence | 2007-02-13 23:45 | 時代劇 | Comments(0)