劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

タグ:社会派 ( 18 ) タグの人気記事

 前半「夕凪の街」は佳作だが、後半「桜の国」は消化不良  公式サイト

 映画は前半「夕凪の街」と、後半「桜の国」の2部構成。
「夕凪の街」は原爆投下後、13年経った広島を舞台に
"原爆スラム"と呼ばれるバラック街で慎ましく生きる女性、
皆実が主人公です。
 夕方の土手を、靴を脱いで裸足で歩く姿が心地良さそうですが、
それも実は靴をすり減らさないためだったりします。
映画はクラシックとも見えるオーソドックスな演出で、
淡々と皆実の日々を追っていきます。

 この物語は彼女が受けた原爆症よりも、
被爆体験によるトラウマに焦点をあてています。
今でこそPTSDは知られていますが、当時はそんな
メンタルな問題は認識されていなかったでしょう。
原爆症以上に理解され難い苦しみを、皆実はずっと内に秘めています。

 皆実が苦しまされるのは、自分が生き残っている事への負い目で、
"誰かに死んで欲しいと思われたのに生きてる"
という言葉が胸につまります。
 皆実親子の銭湯での場面、銭湯にいる人たちの多くが
ケロイドを持っているのをまのあたりにして、
"不自然に、誰もあのことを触れない"
というのが、被爆者の心の傷の深さを思わせます。

 後半の「桜の国」は現在を舞台に、皆実の姪である七波が主人公。
いつも元気な七波ですが、彼女も人に言えない心の傷を持っていたことが、
物語が進むにつれ明らかになってきます。
その傷は結局、母やお祖母さんの被爆による傷が遠因になっているのですが、
そのことが、原爆という大罪が現在にも影を落とし続けていることを教えてくれます。

 ただ、「桜の国」の部分は物語が消化不良ぎみのような気がします。
被爆2世の問題を扱うことがデリケートだったのか、
物語は七波が父親を尾行して広島に行き、
図らずも自分のルーツを見つめ直すことがメインで、
七波のもつ傷や、被爆2世の問題は軽く触れているだけのように見えます。
 最後の父親の回想シーンで、七波が若い頃の両親を見つめる演出も、
なぜ聞いてもいない親達の物語を七波が知るのか説明がなく、
中途半端です。
 前半、こころを揺さぶられただけに、現代部分の物足りなさが残念です。
                                   (☆☆
[PR]
by am-bivalence | 2007-08-22 00:36 | 人間ドラマ | Comments(2)
この記事はブログのファンのみ閲覧できます

[PR]
by am-bivalence | 2007-08-02 22:22 | 人間ドラマ
 社会派っぽいアイテムを散りばめた、四つ巴ダイヤ争奪アクション  公式サイト

 前回観た「ブラックブック」では物語の始めに、
資産家の娘だったヒロインが国外脱出のため、
預けていた資産を受け取りに行くシーンがあります。
 そこでドル紙幣と供に受け取るのが、
一袋のダイヤの原石でした。

 ユダヤ人とダイヤには大きな関連があります。
各地で迫害を受けていたユダヤ民族は
組合のある産業に就くことができず、
働き口は組合の無い職業に限られていました。
その一つがダイヤ加工業だったそうです。
(以上、「ブラックブック」パンフレット受け売り)

 やがてダイヤ流通は20世紀初頭、
ユダヤ系資本を後ろ盾にしたデビアス(De Beers)社に独占されていきます。
 といっても、その体制は磐石ではなく、
1980年頃には、イスラエルのダイヤ産業との競合で価格が暴落したりしています。
(ユダヤ系資本も、決して一枚岩ではなかったわけです。)
 それでも、今もデビアス社の独占体制は続いていて、
それがダイヤの高値安定を維持させる状況を作っています。
 デビアス社が生産調整しなければ、世界のダイヤ生産量は今の何倍もあるそうです。
ダイヤは日本で思われているほど、宝石として希少価値はないらしいのです。
(以上、ネットでちょっと検索した結果。
今の時代はネットで簡単に調べられていいですね。)

 「婚約指輪は給料の三か月分」って、
世界共通のキャッチ・コピーだったんですね。
(もちろん、これもデビアス社製)
 映画の中で、ディカプリオがこのコピーを口にします。

 本作でディカプリオは、過酷なアフリカ社会をサバイバルしてきた、
元傭兵のダイヤ密売人を好演しています。
前半のやり手ぶりと、後半に見せる人間味が
結構、ディカプリオの雰囲気にマッチしていて、
これまでで一番魅力的ではないでしょうか。

 ジェニファー・コネリーは、危険地帯を渡り歩くジャーナリストにしては
綺麗すぎるように思いますが、やっぱり魅力的です。

 ジャイモン・フンスーは、家族を取り戻そうと奔走しますが、
自分の命さえ危ういのに、そこまで家族を探そうとするか?
と、ちょっと引いてしまいます。
 アメリカ映画では、それほど命懸けで家族を守るキャラクターが好まれるんでしょうか。

 紛争ダイヤが生まれる状況を広く知らしめたこの映画、
まずは知ることが大切なのでしょう。

 ダイヤ業界は紛争ダイヤをめぐる非難を恐れたのか、
03年からダイヤの出所を明確にするキンバリー・プロセスを導入します。
ただそれもまだ完全に機能しているとは言えないようです。
アムネスティHP参照)
キンバリー・プロセスが形骸化した免罪符にならないことを。
単純な不買運動では問題は解決しないのです。


(以下、ネタバレ)
 ジャーナリストのジェニファーと密売人のディカプリオが
互いに惹かれあいながらも、結局ラブシーン無しなのがよかったです。
そうしたことで、より精神的結びつきが強調されたように思います。

 最後で使う脱出手段、往路でも使えば
簡単にダイヤを取りに行けたのでは?と思うのは私だけでしょうか。
                                  (☆☆
[PR]
by am-bivalence | 2007-04-15 00:07 | サスペンス・スリラー | Comments(8)
 敵味方混濁する娯楽サスペンス佳作  公式サイト

 オランダ出身のポール・バーホーベン監督を有名にしたのは、「ロボコップ」でした。
得意のバイオレンス描写が、B級SFアクションにマッチしていただけでなく、
娯楽映画にアイデンティティ探しを盛り込んで、作品に深みを持たせました。
超人的能力を持った(持たされた)ヒーローの孤独を描いた点では、
後の「スパイダーマン」シリーズに通じるものもあります。

 その後も「トータル・リコール」、「氷の微笑」といったヒット作を造りますが、
「ショーガール」ではラジー賞を貰ってしまったりもしています。
ラジー賞では実際に授賞式で賞を受け取ってみせるという、
独特のユーモアと気骨のあるところを見せました。
(ハリウッドでは、ラジー賞を取ると本当にギャラが下がるそうです。)

 そんなポール・バーホーベン監督が、
ハリウッドから引き揚げていたのをこの映画で知り、驚きました。
監督は、ハリウッド映画の制約を疎ましく思っていたようです。
ハリウッドではSFばかり撮っていましたが、
実は、もともとSF映画は好きでなかったらしいのも一因なのでしょうか。

 さておき、バーホーベン監督オランダ復帰作は、初心に戻り、
オランダ・レジスタンスの暗部を扱ったサスペンスでした。
 得意のバイオレンス、エロティックシーンは少ないものの、
生理的嫌悪感を刺激するような描写は健在で、めりはりある効果を上げています。
ヒロインは創作ですが、出てくるエピソードは史実に基づいているそうです。
ユダヤ人迫害を扱っていても、人種問題には深入りせず、
あくまで、サスペンス娯楽作品として仕上げているのが、
バーホーベンらしいところでしょうか。

 レジスタンスの中にいる裏切り者は誰か、というのがプロットの軸になるんですが、
味方の中に敵がいるだけではありません。
ナチ側にもレジスタンスに理解を示す人物がいたり、
終戦後もナチ残党やナチ協力者が解放軍に取り入っていたり、
戦犯収容所で虐待行為が行われたりなど、
二元論的に善悪を分けていないところにリアリティを感じさせます。
 ただ、正体が明らかになった裏切り者が、
結局、悪人ぶりをみせているのは、ちょっと残念ですが。

 大戦では被害者だったユダヤ人が、中東では紛争を起こし加害者となっているのを
ラストカットが暗示しているようで、善悪混沌とした、この映画らしい終わりかたでした。
                                      (☆☆
[PR]
by am-bivalence | 2007-04-09 22:42 | サスペンス・スリラー | Comments(2)
 暴君を造ったのは誰か  公式サイト

 かつて、フィリピンのマルコスを後ろ盾していたのはアメリカでした。
オサマ・ビンラディンをアメリカが援助していたのは、
アフガニスタンに侵攻したソ連に対抗するためでした。
 イディ・アミンはイギリス、イスラエルに支援されて
クーデターによりウガンダ政権に就きます。
国民に広く支持されて始まったアミン政権も
影で行われていた敵の粛清がエスカレートしていき。。。

 本作品が注目されたのは、なんといってもアカデミー主演男優賞をとった
フォレスト・ウィテガーの演技でした。
 「人食い大統領」アミン(本当はアミンは菜食主義で、
鶏肉ぐらいしか食べなかったと言います)を、
人間的魅力も持った人物として、存在感たっぷりに演じています。
ただ、好人物に見えたアミンが、権力を得て暴君になっていく過程が
もう一歩踏み込んで描けなかったように思います。
(これは俳優のせいではないのですが)
 全編、粒子の粗いフィルム(16mm?)で撮影されていて、
低予算映画であるのが分かるのですが、
こんなマイナーな映画でも主要アカデミー賞を得られたのが
ちょっと新鮮ではあります。

 この映画、本当の主演はアミンの主治医となる
スコットランド出身の青年医師なんですが、
この男がどうしようもない愚かな若者にしか見えず、
私には感情移入できませんでした。
 彼は最初、農村での医療活動に来て、この国の貧しさは知っているはずですが、
アミンの演説に心酔して、プールサイドでパーティを繰り返すアミン一派に
違和感を抱きません。
裏切り者とみなされた人物が次々と粛清されていくのに恐怖しても、
下半身のだらしなさで背信行為に及びます。
そして、そのことで自分が抜き差しならぬ事態になっているという自覚が無い。
 最後に残酷な報いを受けても、私が同情できたのは、
彼を助けるために巻き込まれた同僚の医師の方でした。

 最後の空港売店の場面で、アミンと青年医師の交わす会話は
互いを的確に批判しています。
稚拙な能力しかないまま権力を握った人間の愚行、
それをパワーゲームとして安直に利用し、うまく行かないと切り捨てようとする先進国。
この構図は今も変わらないように見えます。
 「スコットランド最後の王」が、本当に最後であることを祈ります。
                                  (☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2007-03-21 21:49 | 伝記 | Comments(6)
 身近な例で、司法の機能不全を告発する力作  公式サイト

 気になる映画が面白いのか、判断つきかねる時に、
私はネットで満足度ランキングを参考にすることがあります。
多くの人が満足していれば、それほどハズレではないだろう、という訳です。
 私が参考にするサイトは二つ、
ムービーウォーカーの「見てよかったTOP10」と、
映画生活の「満足度ランキング」、「クチコミ」情報です。
(ただ、映画生活のランキングは、ちょっと怪しげな部分があります。
単館上映作品が、数人の最高評価で上位に来たりします。
クチコミも、誰でも何でも書き込めるため、玉石混淆です。)

 ランクを見ていて、前から気になっていたのが、
「それでもボクはやってない」でした。
ここのところ、どちらのサイトでも上位にランクされ続けているんです。
これは放って置けません。
 上映期間が終わる今頃になって観に行ったんですが、
これが評判に違わず、いい作品でした。

  この映画を観ると、痴漢に間違われる事が、いかに深刻な事態を招くか判ります。
取調べで痴漢行為を否認し続けると、何ヶ月も拘留されることもあります。
留置所の処遇、人権は、刑務所と大して変わらないのが実情なので、
その間は実質、刑を受けているようなものです。
 保釈金を払って出ようとしても、その金額は百万単位です。
それでも無実を訴えて、裁判に持ち込んでも
裁判官は最初から検察側寄りで、99%が有罪になる。。。
 映画はそんなちょっと怖い、痴漢冤罪事件の実態を
丁寧に追っていきます。

 映画では、主人公の電車内での事件場面を見せません。
本当は何が起こったのか、観客にも分かりません。
それが担当女性弁護士の被告に対する当初の疑惑も
観客に違和感を持たせません。
裁判での証言の食い違いも、予断を許さない緊張あるものにさせています。

 実際に痴漢被害で苦しんでいる女性も多いでしょう。
物証のほとんどない痴漢事件に対して、推定無罪を厳格に当てはめてると
多くの事件が無罪で終わってしまいます。
勇気を持って告発した女性の行動が無駄になります。
どうも最近の痴漢裁判は、そういった事件に対する社会的批判の高まりから、
被害者の証言だけでも罰する傾向になってきたようなのです。
それが冤罪を増やすという歪を生んでいます。
 この問題、根が深いです。

 官僚的な裁判官が実質的権限を握る現状の裁判制度、
誰もが自分の職務を忠実に行ってるのに、冤罪を生み続けるシステム、
観終っても、明るい気持ちになれない映画ですが、
この実態を知っただけでも意義がありました。
                        (☆☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2007-03-17 09:04 | 人間ドラマ | Comments(4)
 癒せない心の闇を抱える人に。。。  公式サイト

 「硫黄島からの手紙」のヒットで関連書籍がいろいろ出て、
ちょっとしたブームになっています。
私も一冊、硫黄島の激戦体験者の手記を読んでみましたが、
一つ心を動かされたのは、生き残ったことを恥じる感覚でした。
あの激戦を生き残ったことを幸運に思うのではなく、
玉砕していった仲間を思って、死ななかった自分を恥じ入りながら生きていく感情は、
そんな辛い体験をしていない人間に、安易な共感を許さない壮絶なものがあります。

 「あなたになら言える秘密のこと」、
邦題はちょっと軽く、おしゃれな感じがしますが、気軽な気持ちでこの映画を観ると、
後半語られる内容の重さにめげてしまうかもしれません。
主人公ハンナの抱える人に言えない過去は、とても深刻で凄惨な体験でした。
私はそれなりに身構えて観たつもりでしたが、
やはりその体験談には 打ちのめされる気がしました。

 イザベル・コイシェ監督は、この作品が出来たのは
あるドキュメンタリーに携わったことがきっかけだったと言います。
ハンナの語る体験は信じ難いほど非人間的仕打ちですが、
実際にあったことを元にしているのでしょう。
 この作品中で、カウンセラーのインゲ女史は、ハンナのような人を
「生きていることを恥ずかしいと感じる人たち」と言います。
幸福なことに後ろめたさを感じる人たち。
硫黄島同様、悲惨な体験をしていない人間が
安易に理解したように語るのは はばかられるようにも思えます。
 ただ、ハンナは特殊な存在ではなく、
児童虐待、拉致監禁などといったことで、
現代日本でも起こりうることではないでしょうか。
そして、誰でも多少は持つであろう心の闇で共感することはできる様な気がします。

 映画は一見ハッピーエンドで終わりますが、
ハンナの問題が解決された訳ではありません。
ハンナの心の闇は消えたわけではなく、
それを生涯引き連れながら生きていくことになるのでしょう。
 この作品には冒頭、途中、最後に、少女のモノローグが入りますが、
少女が誰であるか最後まで説明されません。
しかし少女がハンナの中のトラウマの声であるのは明らかで、
最後にモノローグが入るのも、ハンナがずっと
彼女を抱え続けていることを示しているのです。
                            (☆☆(☆))

P.S.
 カナダ出身の主演女優、サラ・ポーリーは、ちょっと面白い経歴で、
芯の強い人であることを今回、公式サイトの関連リンクで知りました。
興味があればこちらを。


参照映画:「死ぬまでにしたい10のこと」 イザベル・コイシェ監督 2003年
    イザベル・コイシェ監督(前はコヘットと表記されてましたが…)の前作。
  英題は「My life without me」。 
  死期を知ったことで、やりたいことをリストにし、一つずつ実行していく女性の話です。
   気になったのは、彼女の作ったリストに自分のしたいことや、
  子供への思いはありますが、
  見事なまでに、夫に対する気遣いが無いことでした。
  気遣うどころか、浮気してみたいなんてリストアップしているのです。
   。。。あな、怖ろしい。
  本音のところ、女性にとって旦那の存在ってそんなものなんでしょうか。
[PR]
by am-bivalence | 2007-03-03 22:49 | 人間ドラマ | Comments(8)
 海外へ拉致の事実を広めたことに意義  公式ホームページ

 一般家庭の女子中学生が突然失踪する。
警察は誘拐と見て捜索するが手掛かりは無く、家出も疑う。
両親は独自に娘の消息を求めて奔走し続け、
2年後に北朝鮮による拉致の可能性に行き当たる。。。

 家族が拉致されなければ、普通に市民生活を過ごしていたはずなのに、
拉致被害者家族は事件に巻き込まれたばかりに、
日常係わることのない国際紛争、政治に翻弄されることになります。

 映画で見せる横田夫妻の素顔は、ごく平凡なおじさん、おばさんでした。
その普通さが、巻き込まれた事件の大きさと比べ、小さく非力に見えてしまいます。
そんな夫妻が決してあきらめずに娘を取り戻そうと活動し続ける、
その力はどこから来るのでしょうか。

 この作品は、アメリカのジャーナリストが二人で監督していますが、
ここに出てくる拉致事件の内容は日本で既に報道されているもので、
目新しいものはほとんどありません。
むしろ、小泉訪朝までアメリカのジャーナリストが
拉致の事実を知らなかったことが、私には驚きでした。
 出てくる映像とインタビューは、ほとんど日本と日本語なのですが、
東洋趣味のBGM、時々挿入されるエキゾティックな日本の風景が
洋画であることを思い出させます。
 世界に拉致事件を知らしめたことに、この作品の意義があったようです。
                                      (☆☆)
[PR]
by am-bivalence | 2007-02-17 00:36 | ドキュメンタリー | Comments(0)