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劇場で観た映画の覚え書き


by am-bivalence
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screen8 手紙

 重いテーマだが、物語が。。。  公式ホームページ

 償いきれない罪を犯したらどうすればいいのか。
身内に犯罪者がいるばかりに、理不尽な偏見や、
差別を受け続けたらどうしたらいいのか。
重いテーマです。
最後に兄の出した贖罪のための結論は胸を打ちますし、
勤務先である電気量販店会長の諭す言葉も重みがあります。

 ただ、私はこの原作を読んでいませんので、
どこまでが原作のもので、どこまでが映画の脚色か分かりません。
ですから、映画として見て感じたことを書きます。
 私が映画の世界にシンクロできたのは前半まででした。
途中、由美子と直貴を結びつけたエピソードが物語のリアリティを失わせ、
ドラマの作為的な部分が目につきだしてしまったからです。
 ちょっとしたアラがどうしてこんなにも印象を変えてしまうのかと、
考えてしまった映画でした。



 物語途中、兄の手紙を疎ましくなり、返事を出さなくなった直貴の代わりに、
黙って由美子が返信し続けます。
感動的なエピソードに見えるかもしれませんが、
かなり無理があると思うのです。

 直貴は兄への手紙など由美子には見せたことがないはずで、
由美子は直貴の文体、兄宛へ手紙を書く時の書式など知らないはずです。
 今まで手書きしていた手紙を、突然全てワープロ書きにし、
文面も変わってきた手紙を見て、兄は不審に思わなかったのでしょうか。
 細かいことかもしれませんが、根本的な疑問にフォローが無いと、
それまでの物語が空々しく思えてきます。

 一度リアリティを失った物語を思い返すと、
また他にもアラが見えてきてしまうのです。
 兄の犯した犯罪は、殺意があったと言えず
情状酌量の余地があるのに終身刑と重いのはドラマの作為的とか、
身内が罪を犯した事実からは逃れられないことを
いつまでも受け入れられずに、
兄が罪を犯したのは弟を思ってのことなのに、それを捨てようとする直貴が
どうしようもなく愚かに思えてしまうとか。。。
ツッコミどころを見せなかった「武士の一分」とは対照的です。

 最後まで自分の犯した償いきれない罪に苦しみ続けている兄が
とても痛々しく、不憫に見えたのでした。
                    (☆☆)
by am-bivalence | 2007-02-05 22:11 | 人間ドラマ | Comments(0)